先週土曜に、静岡県三島市で開催されていた「新海誠展」に行ってきた。最新作『クロスロード』をはじめとする新海誠監督作品の上映があり、制作資料が展示されていた。
最近はこういったかたちで、アニメの制作資料が展示される機会が多く、嬉しい限りだ。今回展示されていたのは、キャラクター設定、絵コンテ、原画、背景など。大量の素材の中から選びに選んだものだろう。展示の仕方にも工夫があり、見応えがあった。
中でもよかったのが『クロスロード』の原画だった。例えば、原画マンが描いたレイアウト、そのレイアウトをどう修正するかについて指示した新海監督のラフ、それをふまえて田中将賀作画監督が描いた修正、原画マンが描いた原画が並べられていた。つまり、どのように監督が演出意図を伝えているのか、それを作画監督どのように膨らませていったのかが分かる構成だ。
あるいは、田中さんが修正段階でキャラクターの感情を表現するため、影の入れ方についてアイデアを出しているカットがあった。それだけでも興味深いのだが、その後で作業したと思しきカットで、新海監督が、田中さんのその影つけのセンスを取り入れて修正指示を出していた。原画を見ることで、そういったクリエイター同士のセッションを読み取ることができた(さらに細かく言うと、新海監督は、後者の修正指示で、田中さんが影つけについての提案で使った印象的なフレーズを、そのまま使用していた。新海監督には、田中さんのやり方や語彙が新鮮なものに映ったのだろう。そこが僕的には萌えポイントだった)。
前回のコラムで、絵コンテの読み方について解説したが、メイキングに注目して原画を楽しむのは、マニアックな目線で絵コンテを読み込むのと同様、一般のアニメファンにとっては難しい。今回の展示は、原画を眺めているだけでも楽しめるが、細かく見ていくといろいろな発見ができるようなかたちになっていた。アニメ雑誌の編集で言えば「アニメの資料を使って、上手に記事をつくっている」感じだ。
『クロスロード』のメイキング映像、コンテビデオの上映もあった。あのカットはコンテビデオでは実写だったのか、やはり新海作品の光の描写は素晴らしいなあ、などと感心しつつ観た。Blu-rayで商品化してほしいと思ったくらいだ。
この美術展のために描かれた『クロスロード』ポスター用イラストのメイキング映像も上映されていた。新海監督がレイアウトと最終的な仕上げを、田中さんがキャラクター作画と着色を、美術監督の渡邉丞さんが背景美術を担当している(新海監督は文字などの配置を含めたポスターのデザイン案も担当)。メイキング映像は、3人がどんなやりとりをしているのか、どれだけの段階を経てイラストを完成させているのかが分かる内容だった。アニメ雑誌の仕事をしている僕でも、あそこまで細かく途中の過程を見たことはなかった。あまりにも面白いので、メイキング映像、コンテビデオと共に同じ映像を3回も観てしまった。
「新海誠展」は一昨日で終了。僕が反省してるのは、もっと早く足を運んで、読者の皆さんに展示の内容を伝えるべきだったということだ。
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