このコラムは毎週月曜日更新なのだが、今はその月曜の明け方前だ。先ほど原稿を書き終わって、ちょっと短いけどとりあえず書けたのでこれでよしとするか、と思ったところで目が覚めたところだ。
それはまた学生時代の試験の夢を見るのと似たようなお話なのだけれど、毎週毎週締め切りがあるということがそれなりに心理的な圧迫になっちゃってる、ということなのかもしれない。
このコラム程度の字数のものでそうなのだから、TVシリーズをやっていた頃、毎週毎週突破しなければならない締め切りが連続していた頃のことは思い出すのもちょっとしんどい。各話演出としての立場だったら、いや、仕事の密度はそちらの方がはるかに濃いのだけれど、それでもなんてことないことだと思ってしまう。シリーズを統括する監督として「編集・リテーク出し・アフレコ・再編集・ダビング・初号」(もっと色々あったかな? でもこれで週のうち6日が埋まっちゃうでしょ)を毎週毎週こなしてゆくのはかなりこたえる。
まあ人それぞれだからそうしたことが全然苦にもならない人たちも当然いるわけで、これは自分個人の場合ではあるのだけれど。
『この世界の片隅に』は、TVシリーズみたいな連続ものにする構成もありうるのかもしれない、とも思う。その方が、物語の本質を投影しやすいのかもしれない、とも思う。のどかな時間がのどかに並び、それが気がつくといつの間にか全然別の様相に変わってしまっている。
長編にする意味があるとしたら、そうした構図を一度に観とおしてもらえるところなのだろうと思う。吸引力ということではその方があるかもしれない。
短いものの連続形式と、長編で一本というのと、どちらの方法がよいとか悪いとかいう前に、どちらかを選んでしまったらスタイルが変わってしまうだろうな、と思うところはある。長いものとして構成したものから冒頭の部分だけ切り出して、はい、これが短いものの第1話です、というふうには単純にはできないような気がしてしまう。その場合、さらにまた導入の方法を考えなければならなくなるような気がしてくる。
そういうことが頭の片隅にちょっとあってしまうと、TVドラマを観たり、連載マンガを読んだりするにも、いちいち、ああ、ここではこうしてるのかあ、という引っかかりになってしまう。
思えば、TVシリーズである『BLACK LAGOON』を手がけてる間は、合間にTVのドラマだとかばかり観ていたような気がするし、『アリーテ姫』だとか『マイマイ新子と千年の魔法』を何とかしなくちゃならない状況下では、劇場長編だとか長い小説を観たり読んだりしてたような気がする。必ずしもそうすることで何か方法論を得るみたいなことではなく、「雰囲気作り」という単純な意味合いなのかもしれない。
別に行きつく先がある話でもないのだが、先週、ちょっとだけ思いついて、『この世界の片隅に』の冒頭だけ切り出して、一種連続ものの第1話として観てもらうとしたら、今のコンテとどう変わるだろうか、というシミュレーションをしてみた。実は某所で某大型連続ドラマの参考上映があって、それを松原さんと眺めてきて、2人で、
「あのイントロってあれでいいの?」
と、話したりしたその流れの上のことなのだが。
ああ、なるほど、『この世界の片隅に』の冒頭だけ切り出して、一種連続ものの第1話として観てもらうとしたらこういう要素を持ち込めばいいのかも、というものがちょっとだけ頭の中で見えてきた。
ある種のごっこ遊びみたいなものだが、いろいろ思いを巡らしてみるのはそれはそれで楽しい。
6月1日(日)「第85回アニメスタイルイベント 1300日の記録特別編 ここまで調べた『この世界の片隅に』3」を新宿ロフトプラスワンで行います。前売り券発売中です。
今回は、すずさんが住んでいた「呉」にテーマを絞って、すずさんたちの目の前の軍港で、頭の上の空で何が起こっていたのかを喋ってみたいと思っています。大和、日向、利根、青葉以外の軍艦の話も出てくるかもしれません。
なお、会場へはできるだけ原作をご持参いただけるとよいかと思います。トークでは原作の具体的な内容に触れますので、未読の方は原作を読んでからご参加ください。
われわれも忙しくなってきますので、今後あと何回このつづきのイベントを開けるかわかりません。ひょっとしたらこれが最終回になってしまうかもしれません。よろしくお願いいたします。
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