1996年は、『エヴァンゲリオン』人気が社会現象化し、さまざまな記録を塗り替えた年である。
『エヴァンゲリオン』は当初から、怪獣映画的な戦闘の醍醐味を緻密に描く“外”的な物語と、パイロットである少年少女たちの孤独やコミュニケーションへの怯えをモノローグ的に掘り下げていく“内”的な物語の両方が並行する点が特色だった。だが、第16話を境にその均衡は崩れ、内的なドラマの領分が拡大し始める。最終2話では、ついにキャラクターの精神世界を抽象的、隠喩的な映像を駆使しながら語ることに終始し、“外”的な物語の伏線や謎は放り出されままシリーズは完結。この予想外の展開は視聴者に賛否両論を巻き起こしたが、消化不良がかえって飢餓感を煽るがごとく、本作の人気は激化の一途を辿るのだった。徳間書店「アニメージュ」5月号における「第19回アニメグランプリ」では、作品、サブタイトル(第24話)、女性キャラ(綾波レイ)、男性キャラ(碇シンジ)、アニソンの5部門で首位を獲得。レーザーディスクは国内売上のトップである150万枚を記録。CDアルバムは、アニメサントラとしては『銀河鉄道999』以来17年ぶりとなるオリコン1位を達成し、各メディアで大きく報道されるまでになった。このブームは97年、物語の真の完結を目指した劇場版公開まで続くこととなる。
『エヴァ』の余韻が鳴り響くなか、この年は佐藤竜雄の単独監督デビュー作『機動戦艦ナデシコ Martian Successor NADESICO』も登場している。本作は、少女を初めて宇宙戦艦の艦長に設定したハードSFであるとともに、劇中に登場する70年代風ロボットアニメ『ゲキ・ガンガー3』が話題となった。そこにはTVアニメの歴史とともに歳を重ねてきたファン(作り手と受け手)が認識する、自己批判と肯定両面のメッセージが込められていた。
『名探偵コナン』のスタートも同年である。その良質なトリックと明解な推理の魅力は、翌年始まる『金田一少年の事件簿』とともに、ミステリーアニメというジャンルをTVに定着させていった。そのほか、大地丙太郎監督のマシンガントーク演出が冴える少女アニメの冒険作『こどものおもちゃ』、ソニー・ピクチャーズエンタテインメントのTV初参入作品『るろうに剣心 —明治剣客浪漫譚—』、深夜アニメ時代の本格的な幕開けを告げる『エルフを狩る モノたち』など画期的な作品が続出、アニメブームの再来を感じさせる1年となった。
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