今年の劇場作品情報もこれが最後。簡単に今年の劇場アニメの状況を振り返っておこう。数え方にもよるが、国産のアニメ作品だけで、90本が上映される事態となった。まさに劇場アニメビジネスは百花繚乱時代へと突入している。
　特筆すべきは、なんといっても『名探偵コナン　から紅の恋歌』の大ヒット。興収60億以上を挙げ、今年の邦画ナンバー１へと躍り出た。この結果は一般の興行関係者も驚かせたようで、いくつかの媒体で論評を目にした。特徴は中高生の若い観客層がついていること、さらに、かつての観客層が「卒業」しないことだろう。来年の新作がどうなるのか、目が離せない。
　一方で、『宇宙戦艦ヤマト2202　愛の戦士たち』や『ガールズ＆パンツァー　最終章』などは、50代以上のかつてのアニメファン世代を多く動員している。アニメを見ることに抵抗の薄い層だけに、うまくリーチすればヒット作となる可能性があるわけだ。
　アニメ視聴においてネット配信の比重が高まるなか、大勢で同じ時間空間を共有するという劇場の「ライブ」性への評価が高まったのも注目点だ。応援上映はもちろん、総集編の増加も、ファンイベントの一環として捉えられるだろう。こうした状況から『ハイキュー！！　“コンセプトの戦い”』のような佳品も生みだされている。
　加えてＯＶＡから深夜ＴＶアニメへと場を移してきた作品が、劇場イベント上映へとウィンドウを切り替えているという側面も大きい。

　来年以降に目を向けてみると、すでに今年以上に増える勢い。去る13日には来夏の細田守監督の最新作も発表になった。タイトルは『未来のミライ』。詳細はまだ明らかでないが、４歳の男の子が主人公。彼のもとに未来から来たという妹・ミライが現れて……というのが概略のようだ。ヒロインの名前がミライであることに、細田作品のファンならば、感慨を抱かずにはいられないだろう。すでに公開日も７月20日と決定。期待して待ちたい。
　さて、ファン向けのイベント化について上で述べたが、29日には『劇場版カードキャプターさくら　封印されたカード』のリバイバル上映がスタート。全国９館での公開となる。１月からＴＶの新シリーズが予定されているとはいえ、20年近く前の作品の上映とは大胆な試み。気になるところだ。
　同じ29日には『龍の歯医者　特別版』もスタート。スタジオカラーが制作、鶴巻和哉の監督作品だ。今年２月にＮＨＫ　ＢＳで放映された前後編を編集、音響を調整した上での上映という。

　年が明けて2018年１月６日からは『映画　中二病でも恋がしたい！　-Take On Me-』が公開。小鳥遊六花と富樫勇太は高校３年生となる春を迎えていた。六花にイタリアへの移住話が持ち上がったことから、２人は「駆け落ち」を決行するのだが。京都アニメーションの人気ＴＶシリーズの劇場用新作で、監督は石原立也が務める。

≪劇場アニメリスト≫
2017年12月26日現在、編集部調べ