年度末の繁忙期だというのに、ついうっかりＰＳ４を購入してしまった。「Fallout 4」をプレイしたい意欲を抑えきれなくなったのだ。ご存知の方もいると思うが、ＲＰＧといわゆる箱庭系ゲームのいいところを融合したようなシリーズ。「北斗の拳」を思わせるような、レザーアーマーのモヒカン男たちが闊歩する、核戦争後の荒廃した世界観も魅力だ。僕は前作「Fallout: New Vegas」や前々作「Fallout 3」も散々遊びつくしたが、今回は通常の冒険に加えて拠点に好きな建物を建築する「Minecraft」的な楽しみもあり、過去作以上の時間泥棒になっている。すでに100時間はプレイしたが、それでもまだ100以上あるクエストの半分もクリアしていない。

　さて、2009年１月から始まったこの連載だが、３月の年度末いっぱいをもって更新終了ということになった。７年以上の長きにわたって支えていただいたアニメスタイル編集部の皆様、レコード会社などの関係各位、そして読者の皆様には感謝の一言しかない。長いあいだ、本当にありがとうございました。なお連載終了は僕の一身上の都合によるもので、編集部にはわがままを言ってやめさせてもらったことを申し添えておく。 　残すところ３回の更新となるが、最後まで楽しんでいただけたら幸いだ。通常の新譜レビューではなく、過去の連載を振り返る企画をお届けする予定だ。まず今回は、各年のサントラベストを振り返ってみたい。この連載ではこれまで2010年、2011年、2013年、2015年の４回、僕が選んだその年のベストサントラを発表している。選ばれたラインアップを改めて振り返ることで、当時のアニメ事情やサントラ事情が見えてくることもあるだろうし、興味はあったが買いそびれていた商品を再発見することもあるだろう。それではまずは2010年のベストから発表していく。

2010年

　2010年は、劇場作品がとても充実していた年だと言えるだろう。『涼宮ハルヒの消失』『劇場版銀魂　新訳紅桜篇』『TRIGUN　-Badlands Rumble-』『ブレイクブレイド』『宇宙ショーへようこそ』『機動戦士ガンダムOO　-A wakening of the Trailblazer-』『Colorful』『REDLINE』『マルドゥック・スクランブル　圧縮』がこの年一挙に公開されている。その中でも個人的に印象に残っているのが『REDLINE』で、ダイナミックなレースシーンの作画に大音響のロック音楽がぶつかり、まるでライブ会場にいるかのような痛快さがあった。緻密なストーリーでアピールするアニメもいいが、『REDLINE』のように徹底して目と耳の快楽に訴えかけるアニメもあっていいのではないか。
　ＴＶアニメでは福岡ユタカのボーカリーズが強烈な『刀語』があり、ケルト風のメタル音楽で人気サントラシリーズとなった『FAIRYTAIL』があり、ヒップホップやＲ＆Ｂを多用した『Panty ＆ Stocking with Garterbelt』があった。いずれもまったく異なる路線ながら強いインパクトがあり、アニメサントラという分野の懐の深さを感じさせてくれるラインナップだ。

2011年

　この年も前年に引き続き高梨康治が大活躍。『スイートプリキュア♪』 サントラのサウンドは「キュアメタル」と呼ばれ、女児向けアニメにも関わらず、華やかなコーラスを導入することで違和感なくメタルサウンドを導入して見せた。いまも根強いファンがいる『蒼穹のファフナー　HEAVEN AND EARTH』のサントラが出たのもこの年。斉藤恒芳による本格的クラシックの色濃いＢＧＭは、繰り返しのリスニングにも耐えられる奥深いものだ。
　それまでＴＶドラマの劇伴作家というイメージが強かった澤野弘之が、アニメファンの間で注目され始めたのもこの時期あたりだろう。出世作 『機動戦士ガンダムＵＣ』のサントラ第２弾をこの年にリリースしている。

2013年

　2013年は、ＴＶアニメサントラ大豊作の年として記憶されるべきかもしれない。ヒット作『進撃の巨人』サントラを筆頭に、『たまこまーけっと』『PSYCHO-PASS』『THE UNLIMITED　兵部京介』『GATCHAMAN CROWDS』と、音楽面にこだわりのある作品がズラリと並ぶ。
　サントラファンならば、人気作品に人気作曲家が音楽をつけた『進撃の巨人』（澤野弘之）、『PSYCHO-PASS』（菅野祐悟）、『GATCHAMAN CROWDS』（岩崎琢）あたりは購入済みの方が多いと思う。万が一まだ聞いていないのであれば、すぐにでもチェックしてみてほしい。
　そして、忘れてもらいたくないのは『THE UNLIMITED　兵部京介』のサントラだ。このサントラの１曲目「THE UNLIMITED」のオーケストレーションはマーラーやレスピーギを思わせる華麗なもので、合唱隊とオーケストラが生み出す響きの密度は圧巻の一言。音によって「超常の力」というものを見事に表現している。

2015年

　2015年は一言でいうと「成熟の年」と言えるのではないか。目を見張るような新機軸のサウンドや、飛び抜けた大ヒットサントラというものはなかったが、充実した佳作が数多く揃った１年だった。岩崎琢による『アカメが斬る！』や、林ゆうきの『Classroom☆Crisis』はその典型だろう。
　その中で光ったのは、『血界戦線』によってアニメデビューを飾った岩崎大整の音楽だ。様々なジャンルの音楽を自由自在に使いこなし、作品の豊饒さを下支えする能力は、菅野よう子のような雑食性と器用さを感じさせてくれる。特にジャズ分野の充実は岩崎大整の強みであり、今後ＢＧＭにジャズを使いたいと思う監督さんから、頻繁にオファーがあるのではないか。
　エレクトロニカを大胆に導入した『Charlotte』も、音楽の印象が強い作品だ。脚本とＢＧＭの有機的な絡み方は独特であり、両方に関与できる麻枝准ならではの作風といえる。現代は文章も映像も音楽もパソコンで制作する時代なので、アニメ作りの幅広い工程に関与するクリエイターがもっと増えてもいいはずだ。

　今回、紹介できなかった2009年、2012年、2014年は、通常の新譜レビューを優先したためにベストサントラ発表ができなかった年だ。僕としても心残りがあるので、これから過去のレビュー記事を掘り起こし、改めて各年のベストサントラを発表してもいいな、と思っている。残り２回、どうぞよろしくお願いします。（和田穣）