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アニメ音楽丸かじり(166)
『のんのんびより りぴーと』サントラでたっぷりと癒されちゃってください

 9月から映像配信のNetflixがサービスを開始した。huluに続いて映像配信の海外大手が日本上陸を果たしたことになり、注目度も高いことだろう。日本ではまだまだDVDレンタルの存在感も大きいが、やはり利便性やコストの点では映像配信に分があり、長期的には定額制の映像配信が主流になっていくのではないかと思う。僕もさっそく1ヶ月間のお試し登録をしてみたが、プレーヤーの使い勝手もよく、作品リストも大きめのサムネイルで表示されるために見やすい。クリックするとすぐに作品が始まるスピーディなところも好みだ。最初はお試しだけのつもりだったが、本登録に向けて心が動きつつある。
 気になる作品リストだが、アニメジャンルでは『ソードアート・オンライン』『PSYCHO-PASS』『化物語』『弱虫ペダル』『キルラキル』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『魔法少女まどか☆マギカ』『Fate/Zero』『咲』シリーズなど、比較的新しめの作品の中から人気作を中心に揃えている印象だ。『INNOCENCE』『言の葉の庭』『Paprika』など、劇場作品も取り扱っているのが特徴的。言うまでもないが、月額課金のため登録作品は全話いつでも視聴可能だ。「第1話と最新話のみ無料」といったスタイルではないので、ご安心のほどを。
 作品数で言うと新旧幅広く取り揃えたdアニメストアやhuluよりもずっと少ないのだが、厳選した人気作のセレクションというのがNetflixの妙味だろう。海外ではこのセレクションがしばしば変わることが知られており、日本でもそうなるのではないか。画質はベーシックプラン(SD)、スタンダードプラン(HD)、プレミアムプラン(UHD 4K)と違いがあり、月額料金も650円、950円、1450円と差がつけられている。個人的にはTVシリーズの視聴や、スマートフォンでの視聴ならスタンダードプランで十分だと感じた。一方で新海誠作品をじっくりと視聴したい、といったニーズがあるのならプレミアムプランが望ましいだろう。

 さて今回は、9月23日にリリースされたTVアニメ『のんのんびより りぴーと』のオリジナルサウンドトラック盤を紹介したい。僕は第1期のエピソードを何度も見返すほどのファンであり、作品世界によくマッチしたBGMも大好きだ。第1期のときにもサントラを取り上げたかったのだが、残念ながら時期を逸してしまった。満を持しての紹介ということで、とても嬉しい。
 CDは全32曲で62分でCD1枚。ボリューム感たっぷりの2枚組が多い今時のサントラにしては、珍しく思えるほどオーソドックスな構成だ。オープニング主題歌「こだまことだま」とエンディング主題歌「おかえり」はTVサイズ、挿入歌「旭丘分校 校歌」はフルサイズで収録している。
 各楽曲の傾向として、アコースティック楽器を基調とした牧歌的なサウンドと音数の少ない作風が挙げられる。岩崎琢、菅野祐悟、澤野弘之といった近年の売れっ子作曲家たちがどんどん重厚かつ壮大な楽曲を指向していくのに比して、なんとも素朴でシンプルな音作りが特徴的だ。
 それでは各楽曲について触れてみよう。1曲目「のんのんバイオリン」は第1話アバンタイトルで、れんげが初めて自分のランドセルを与えられて感激するシーンに使用。完全にバイオリン1本の独奏で、音数も少なく「間」を感じさせるものだが、そのスタイルこそが『のんのんびより』らしさと言える。セリフの口数も少なめであり、意図的に時間と空間にゆとりを持たせているから、視聴者も気張らずにリラックスして見ることができるのだろう。
 4曲目「返事は?」は第1話でれんげと夏海が敬礼しあうシーンにて使用。リコーダーやハーモニカがなんともとぼけた味わいを出しており、その場面のユーモラスなムードにぴったりだ。12曲目「めぐり道」も同じく第1話アバンタイトルで、れんげたち一行がバスで登校するシーンにて使用。ピアノとバイオリンの響きが耳に優しい、ノスタルジックなサウンドとなっている。本作はユーモラスな楽曲ばかりではなく、要所にこういった美しい楽曲を配してホロリとさせてくれる。そのバランスが心地いい。
 13曲目「夏海ちゃんは出来る」は『のんのんびより』では珍しいアップテンポの楽曲で、第5話のプール掃除のシーンなどに使用された。トラブルメーカーの夏海を象徴する音楽らしく、せわしなくハイテンションな曲調が本盤の中でも異彩を放っている。22曲目「プール掃除」も同じくプール掃除のシーンにて使用。アコースティックギターのリズムにストリングスの和音とリコーダーの旋律が心地よく、爽やかでエバーグリーンな曲調だ。
 23曲目「のんのんリコーダー」は文字どおりリコーダーの独奏で、本編中でも頻用された曲のひとつ。リコーダーはシリーズにおけるシグネチャーサウンドと言ってもよく、第1期から数多くの楽曲に使用されている。素朴で澄んだ音色と、教育楽器としての位置づけが『のんのんびより』の作品性と相性がいいのだろう。
 『のんのんびより』の音楽と言えば、童謡からの引用も注目すべきポイントだ。第1期でもアメリカの童謡「Row Row Row Your Boat」が第2話に使用され、小鞠の幼さをとことん強調するように演出されていたので爆笑してしまった。第2期ではサントラ14曲目に収録の「ずいずいデコポン」が童謡「ずいずいずっころばし」からの引用であり、第11話で小鞠が携帯メールを打つ場面など、本編中のコミカルなシーンで何度か使われている。それにしても、小鞠の登場シーンには童謡がよく似合う(笑)。
 最終話を飾ったのが31曲目「陽だまり道は続く」で、第1期サントラに収録されていた「陽だまり道」のアレンジ曲となっている。しかもその「陽だまり道」は第1期の第1話冒頭に流れた曲なので、同じメロディによってふたつのシーズンを繋げて循環させているわけだ。第2期『のんのんびより りぴーと』の一部話数は第1期の前日譚という側面もあるため、このような構成がより味わい深いものとなっている。
 こうやって第2期の終了を冷静に見つめているように書いているが、多くのファンと同じく僕もペットロスならぬ『のんのん』ロスの喪失感に悩まされており、早くも第3期への期待を抑えることができない。原作のストックから言っても実現にはしばらく時間がかかるだろうが、何年でも待つのがファンというものだ。そして勿論、第3期もまた水谷広実の音楽で作品世界を彩ってほしい。そう願っているは、僕だけではないはずだ。(和田穣)

TVアニメ『のんのんびより りぴーと』オリジナル・サウンドトラック(音楽:水谷広実)

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