前回の記事で紹介した、ハイレゾ版の『宇宙戦艦ヤマト』関連作はなかなか好評のようで、特に「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」は8月19日付のe-onkyo music weekly rankingで第3位、8月26日付で第2位とコンスタントに上位をキープしている。e-onkyoではクラシック音楽の名盤がランキング上位を占めることが多い。根強い固定ファンがいることに加えて、ハイレゾ化による音質面の向上が期待できるジャンルというのもあるだろう。この傾向は「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」についても同じことが言え、そのあたりが人気の秘訣と見ている。
交響組曲 宇宙戦艦ヤマト【24bit/96kHz】(音楽:宮川泰)
COKM-32741/3200円/日本コロムビア
発売中
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[VICTOR STUDIO HD-Music.]
さて、今回は8月27日に同時発売となった『ラブライブ!』『アイカツ!』のサントラについて書いてみたいと思う。男性向け、女児向けというターゲットの違いはあるものの、それぞれアイドルを作品のテーマに据えており、「学園から生まれたアイドル活動」という大枠もよく似ている。劇中で頻繁に挿入歌が流れる点も共通だ。番組名に「!」がつくところまで一緒。しかもレーベルが双方ともランティスということで、非常に興味深いマッチアップとなっている。_
まずは『ラブライブ』のサントラについて。今年春期に放映されたTVアニメ第2期のサントラ盤で、2枚組に64曲122分の収録というボリューム。主題歌はもちろんのこと、たっぷりと使用された挿入歌も、TVサイズながらしっかりと網羅されているのが嬉しいところ。本編未使用曲や挿入歌のインスト版など、ボーナストラックも7曲が含まれている。
具体的には、まずOP主題歌「それは僕たちの奇跡」、ED主題歌「どんなときもずっと」の2曲、加えて挿入歌が「これまでのラブライブ! ~ミュージカルver.~」(第1話)、「ユメノトビラ」(第3話)、「Shocking Party」(第3話)、「Love wing bell」(第5話)、「Dancing stars on me!」(第6話)、「Snow halation」(第9・11話)、「KiRa-KiRa Sensation!」(第12話)、「Happy maker!」(第13話)、「愛してるばんざーい!(Piano Mix)」(第13話)、「Oh,Love&Peace!」(第13話)という10曲。しかもED主題歌「どんなときもずっと」は第1期同様に各話で歌い手が異なるのだが、すべてのバージョンが収録されている。ただし、「ススメ→トゥモロウ」(第1話)、「Private Wars」(第1話)、「僕らは今のなかで」(第12話)といった第1期から転用した楽曲については、当然ながら入っていない。こちらは第1期サントラに収録されており、昨年4月の当記事でも当該CDを紹介しているので、そちらを参考にしてほしい。
また挿入歌のフルサイズについては、いずれもμ’sのシングル盤やベスト盤のいずれかに収録されている。中には「Snow halation」のようにオリジナルのシングル盤リリースが2010年という古めの楽曲も存在する。この曲はμ’sシングル曲の中でも人気が高く、8月31日に行われたAnimelo Summer Live 2014 -ONENESS-3日目でも披露されていた。
BGMについても触れておこう。ディスク1の1曲目「新生徒会長登場」は第1話アバンタイトルで、新生徒会長となった主人公・高坂穂乃果の挨拶シーンで流れた音楽。荘重なムードで、第2期のスタートを飾るのにふさわしいスケール感のある楽曲。続く2曲目「これまでのラブライブ! ~ミュージカルver.~」は、穂乃果がミュージカル風に第1期の内容を振り返るという、チャーミングなシーンの挿入歌だ。4曲目「…寄り道していかない?」は下校途中の穂乃果たちが寄り道をするシーンにて使用。5曲目「残された時間」も同じく第1話で、3年生の卒業について話し合う場面のやや悲しげな音楽だ。第1期サントラと同様に、曲順はおおむね楽曲登場順の時系列で構成されている。
第1期からのBGMも相当数使われているのだが、それにも関わらず第2期における新規BGMが40曲以上と多い。劇中に音楽が流れるシーンが多い上に、多種多様な音楽が使用されている。しかもシーン固有のBGMも多く制作されており、ある意味で劇場作品並と言えるほど、1クールのTVアニメとしては贅沢な作り方をしているのが『ラブライブ!』の特徴だ。
ラブライブ! 2期 オリジナルサウンドトラック
Notes of School idol days~Glory~(音楽:藤澤慶昌)
LACA-9356 ~57/3,564円/ランティス
発売中
Amazon
続いて『アイカツ!』だが、こちらは昨年10月から始まった第2部(2ndシーズン)の音楽を中心にまとめたサントラとなっている。ストーリーラインとしては、主人公・星宮いちごがアメリカ留学に旅立ってから1年した経過した、中等部3年次からが第2部に該当する。CDは全41曲収録で、OP主題歌「KIRA☆Power」「SHINING LINE*」、およびED主題歌「オリジナルスター☆彡」「Precious」はいずれもTVサイズで収録。なお本盤に挿入歌は収録されていないので、そちらが気になる方は注意してほしい。挿入歌を集めたミニアルバムについては、第1弾が6月に発売済み。第2弾も9月24日に発売が予定されている。「アイカツ! ベストアルバム Calendar Girls」もリリースされており、本連載の4月の記事でも紹介ずみだ。
『アイカツ!』のBGMを担当するのはMONACA、主題歌や挿入歌もほとんどが彼らの作曲だ。ナムコ出身者を中心に設立された作曲家集団で、『THE IDOLM@STER』や『Wake Up, Girls!』への楽曲提供でも知られる。アイドルアニメはお手のもののチームと言えるだろう。今回のサントラには石濱翔、帆足圭吾、岡部啓一、高田龍一、高橋邦幸、田中秀和(担当曲数順)の6名が参加している。
収録曲については、2曲目「話題の新設校!ドリームアカデミー」が、第2部のスタートとなる第51話で、ドリームアカデミー所属アイドルの風沢そら・姫里マリアが初登場するシーンにて使用。オーケストラ風の壮大なサウンドだ。3曲目「あなたがドならわたしはレ!」は、同じくドリームアカデミーの音城セイラ初登場シーンの楽曲。ロック少女のテーマ曲らしく、エレキギターをフィーチャーしている。4曲目「オケオケオッケー♪」は冴草きいのテーマ曲だ。こちらも曲順はおおむね初出の順番に時系列で並んでいる。
BGMは打ち込み中心に形成されており、7曲目「ごきげんよう」はバロック音楽風、8曲目「JBP Yeah!」はディスコ風、9曲目「さらに特訓!」はモータウン風といった感じで、曲調が各ジャンルの典型的なものに揃えられている。このあたりは、女児中心の視聴者層に配慮して、分かりやすさを重視した結果だろう。『ラブライブ!』の音楽が一部ミュージカル的であったり、映画的であったりするのと比べて、『アイカツ!』の音楽はゲーム的であるように思う。FM音源系の煌びやかなシンセが目立つ5曲目「ドリームアカデミー 学校案内」や、DTM的解釈によるフュージョン風の14曲目「楽しかった~」などは、ゲーム「THE IDOLM@STER」の新しいBGMだと言われたら信じてしまいそうなほど、サウンドの雰囲気がよく似ている。以上のように、番組の基本フォーマットに共通点の多い『ラブライブ!』と『アイカツ!』だが、BGMのサウンド傾向はまったく異なるのが面白いところだ。
今年のAnimelo Summer Live 2014 -ONENESS-では、3日間を通じて『ラブライブ!』からμ’s、『アイカツ!』からSTAR☆ANIS、『THE IDOLM@STER』関連の3ユニット、『Wake Up, Girls!』から同名ユニットがそれぞれ出演し、まさにアイドルアニメ花盛りといった様相だ。番組や関連アイテムの人気上昇と、歌唱を担当する声優や歌手の認知度向上がシンクロし、ファンとしては非常に感情移入しやすいコンテンツだけに、今後もさらに似た傾向の作品が提供されていくのではないだろうか。(和田穣)
アイカツ! -アイドルカツドウ!-
オリジナルサウンドトラック アイカツ!の音楽!!02(音楽:MONACA)
LACA-15442/3,240円/ランティス
発売中
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