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アニメ音楽丸かじり(119)『きんいろモザイク』サウンドブックはとにかくキラキラ!

 僕の周囲でも多くのファンがいたNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」が9月末に終わり、新番組「ごちそうさん」が始まった。アニメファンとしても、音楽担当が菅野よう子ということで注目していきたい作品だ。
 近年ではアニメ劇伴作家の連続テレビ小説への進出が顕著であり、来春スタートの「花子とアン」は梶浦由記が音楽を担当する予定だ。過去に目を向けても、2012年の「梅ちゃん先生」は川井憲次が音楽担当であったし(まあこの方はすでに実写劇場作品の大家でもあるが)、2007年の「ちりとてちん」を担当した佐橋俊彦は言わずと知れたアニメ劇伴の名匠。2010年のヒット作「ゲゲゲの女房」を手がけた窪田ミナは、「ウンディーネ」「ユーフォリア」「スピラーレ」の『ARIA』3部作の作者、2011年の「カーネーション」を担当した佐藤直紀も『プリキュア』シリーズの音楽で知られる作曲家である。
 このような活況に至った理由は色々と考えられるが、NHKディレクターの若返りが進み、アニメに対して偏見や先入観の少ない世代が主力となってきているのが大きいのではないか、と個人的には見ている。あるいはもう一歩踏み込んで、青年期にアニメに親しみ、現在もアニメを視聴している方が多いのかもしれない(ご存じのとおり、NHKは歌番組へのアニソン歌手・声優の出演に関して積極的である)。今後も、アニメ以外のシーンでアニメ劇伴作家の名前を見る機会が増えるだろうから、劇伴ファンはクレジットを見逃さないようにしてほしい。

NHK連続テレビ小説 ゲゲゲの女房 オリジナル・サウンドトラック2(音楽:窪田ミナ)

VICL-63673/3,045円/ビクターエンタテインメント
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 連続テレビ小説への進出と並んで、現在のアニメ劇伴界で特筆すべきなのが、女性作曲家の躍進である。上記の菅野よう子、梶浦由記、窪田ミナのほか、伊藤真澄、大橋恵、黒石ひとみ、橋本由香利など、女性作曲家がアニメの音楽担当にクレジットされないクールはないと思えるほど。その系譜に続くと期待しているのが、橋本由香利や長谷川智樹と同じくVERYGOO所属の川田瑠夏である。
 川田瑠夏と言えば、『さよなら絶望先生』シリーズの主題歌やキャラクターソングでその名を知った人も多いのではないだろうか。「強引niマイYeah~」「主人公」「オマモリ」「暗闇心中相思相愛」などが彼女の作品だ。その後「キッチンはマイステージ」を始めとした、一連の『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!』関連の楽曲、および『ストライクウィッチーズ』のキャラクターソングで名をはせる。2011年のOVA『かってに改蔵』からBGMを担当し、今年の『閃乱カグラ』『きんいろモザイク』での劇伴起用へと続く。キャラクターソング・主題歌→劇伴へと手を拡げていくのは、近年のアニメ音楽作曲家の典型的パターンと言えるだろう。
 さて、前置きが長くなったが、今回取り上げるのはその『きんいろモザイク』から「きんいろモザイク サウンドブック いつまでも一緒だよ。」である。8月21日にリリースされた「きんいろモザイクサウンドブック はじめまして よろしくね。」に続く、同作のサウンドブック第2弾となるCDで、10月9日にリリースされたばかりだ。
 まず興味深いのは「サウンドブック」と題した企画性だろう。近年ではサントラに挿入歌やキャラクターソングを収録してファンへの訴求力をアップさせたCDが多いが、さらに本盤においては最終回(第12話)で披露された「忍の創作劇」を収録しているのがポイント。まさに「サウンドブック」の名のとおり、音声によるバラエティ豊かなコンテンツを1枚にまとめているのだ。
 CDの内容を見ていこう。まずは定番の主題歌(TVサイズ)で、OP主題歌「Jumping!!」とED主題歌「Your Voice」の2曲を収録。後者は中塚武のアルバム「GIRLS&BOYS」収録曲のカバーである。歌うはもちろん主演声優5名(西明日香、田中真奈美、種田梨沙、内山夕実、東山奈央)によるユニット、Rhodanthe*(ローダンセ)だ。
 また挿入歌「さくらいろチェリッシュ」はフルサイズで収録。第7話の音楽授業の後に、アリスとカレンが歌うシーンで使用されたものだ。残念ながら(?)忍による「きん・ぱつ!」の合いの手は入っていない(サウンドブック第1弾に収録された忍&アリスの「ももいろセレブレーション」では、怒濤の「きん・ぱつ!」ラッシュが楽しめる)。
 その他、陽子&カレンの「あきいろスターマイン」、忍&綾の「ひまわりいろサマーデイズ」、綾&陽子の「なぎさいろハイビスカス」といったキャラクターソングが収録されている。番組名に「モザイク」を冠するだけあって、曲名を「~いろ」で統一しているのが面白い。これらの楽曲はアニメ本編中に使用されたわけではないが、ブックレットには「Rhodanthe* Virtual Concert 『Flower Festa 2013』より」と記載されており、キャラソンが本編から浮いたコンテンツにならないように配慮しているのが見て取れる。
 BGMについては、1曲目「モーニングコーヒー」、6曲目「イトシノキミト」、7曲目「もしかして」、11曲目「一緒だね」、14曲目「ホリディ!」あたりに顕著なのだが、とにかくキラキラした印象。もちろんそうなるだけの理由があって、チェレスタ、グロッケンシュピール、ウィンドチャイムなど金属質の楽器を多用しているのだ。またミックスも極めてクリアかつブライトで、そういったキラキラした音色を際立たせるのに一役買っている。もちろん青春のきらめきを表現する意図があっただろうし、本作の場合「金髪」が作中の重要なモチーフになっているので、そのあたりの諷意があるのかも知れない。金髪の女性が髪をかき上げるシーンで、ウィンドチャイムを入れたくなる気持ちは僕にもよく分かる(笑)。
 CDの最後を飾るのは「忍の創作劇」だ。最終回(第12話)で披露されて話題となった、忍の即興ストーリーを丸ごと収録している。音楽だけでなくセリフもアニメ本編そのままに収録されているので、映像を想起しながらじっくりと楽しみたいトラックだ。ストーリーの内容はお姫様あり人魚あり海賊ありで、ディズニー作品のような世界をミュージカル仕立てで描く6分43秒。目まぐるしく展開するシーン変化に合わせた、千変万化の音楽が聴きどころ。劇伴作家としての川田瑠夏の実力のほどは、このトラックを聴けば分かるはずだ。
 思えば本作では、第1話のイギリス編も、フィルムスコアリング風の豪華な音楽(サウンドブック第1弾に収録)で視聴者を番組に引き込んでいたが、最終話をそれに対応するようにミュージカル風の音楽で締めくくるというのは、納得感があっていい終わり方だったのではないかと思う。

 さて、Rhodanthe*のバーチャルでないコンサートツアー実現への第一歩(?)かも知れないのが、11月24日のANIMAX MUSIX 2013(2日目)への参加決定である。これまでもイベントで歌唱を披露する機会はあったが、横浜アリーナという大舞台への出演はひとつの転機となるだろう。ファンはチケットの予約をお忘れなきよう!

きんいろモザイク サウンドブック いつまでも一緒だよ。(音楽:川田瑠夏)

VTCL-60351/3,045円/フライングドッグ
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