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アニメ音楽丸かじり(114)『宇宙戦艦ヤマト』ミュージックビデオシリーズが復刻!

 僕は普段ハリウッド劇場作品を多く観るタイプではないのだが、8月9日から劇場公開予定の「パシフィック・リム」には大いに期待している。あらすじは「太平洋の深海から出現した巨大生物“KAIJU”に、世界中の都市が次々と破壊される。絶滅の危機に瀕した人類は、巨大人型兵器イェーガーでこれに挑む」というもの。そのイェーガーなるロボットは、「2人のパイロットが心をひとつにしないとパワーを発揮できない」という設定。言うまでもなく、日本の怪獣映画やロボットアニメからの影響が色濃く感じられる内容だ。ギレルモ・デル・トロ監督は「MONSTER」の実写ドラマ版を手がけるなど、日本のサブカルチャーに造詣が深い。ハリウッドでも日本オタクとして知られる人物だから、怪獣描写やロボット描写もそれほど的外れなものにはならないだろう、という期待がある。
 近年のCG技術で言うと、「VANQUISH」「The Elder Scrolls V: Skyrim」「The Amazing Spider-Man(日本未発売)」といったゲームの分野では、巨大生物・巨大ロボットの描画に関して、精細度・巨大感を兼ね備えた描画をすでに実現しているだけに、劇場作品での実用例が少ないのが個人的に不満だった。このあたりの視覚的な楽しみも得られると期待して、公開後すぐにでも観に行くつもりだ。

 さて、7月24日に興味深い作品が2種リリースされたので紹介したい。今回はCDではなく、映像作品だ。「MV SERIES 宇宙戦艦ヤマト2199」と「MV SERIES 宇宙戦艦ヤマト」の2本で、それぞれBD版とDVD版がリリースされている。『宇宙戦艦ヤマト』のマニアックなファンならご存じのとおり、このシリーズはセリフ抜きの本編ダイジェスト映像にBGMを合わせ、ミュージックビデオ風に編集した映像作品だ。オリジナル版は1984年から順次LD・ビデオカセットで発売されたもので、『宇宙戦艦ヤマト』『ヤマトよ永遠に』『宇宙戦艦ヤマト 完結編』『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』など、劇場版やTVスペシャルに対応して制作されていた。「MV SERIES 宇宙戦艦ヤマト2199」はこの企画ライン上での完全新作、「MV SERIES 宇宙戦艦ヤマト」は1984年に発売された第1作の復刻ということになる。

 まず4月より放映中の『宇宙戦艦ヤマト2199』のMV SERIESについて紹介しよう。本作の音楽は、宮川泰による『宇宙戦艦ヤマト』のオリジナルBGMを子息の宮川彬良が採譜し、新規に録音し直したものが中心。それに加えて、宮川彬良が新たに作曲したナンバーもいくつか加えられている。本盤では45分のサイズに宮川親子によるBGMをたっぷりと収録しているのだが、残念ながら収録曲のリストが添付されていないため正確な曲数は断定できない。またいくつかの楽曲はメドレー形式になっており、チャプター数から勘案しても、トータルで20曲以上はゆうに入っているようだ。もちろん「無限に広がる大宇宙」「ヤマト前進」「イスカンダルの女」「大志」といった主要な楽曲はきちんと押さえられている。ただし各楽曲はフルサイズを収録しているわけではないのと、ささきいさおの新録歌唱による「宇宙戦艦ヤマト」「真っ赤なスカーフ」は収録されていない点に注意が必要だ。
 BGMは24bit 96kHz仕様にリマスタリングされており、特にストリングスの音色の艶や緻密さは、ランティスより発売ずみのサウンドトラック盤3種よりも向上している。音圧が高くバンドサウンド寄りだったサントラ盤に比べて、より深みと奥行きを感じさせるクラシック寄りのサウンドとなっており、長年『ヤマト』の音楽に関わってきたコロムビアらしいリマスターと言える。
 映像についてはまだ放映途中の作品ということで、シリーズ前半(先行上映で言うところの第四章のあたりまで)のハイライトというべき内容だ。本盤の反響次第では、シリーズ後半の内容を収録した続編のリリースの可能性もあるだろう。

 続いては原典たる『宇宙戦艦ヤマト』のMV SERIESを紹介する。上述のとおり1984年にLD・ビデオカセットとして発売された、ミュージックビデオシリーズの第1作を復刻したものだ。全49分の内容。宮川泰による『宇宙戦艦ヤマト』のオリジナルBGMを、こちらも24bit 96kHzへとリマスタリングしたものを収録している。昨年から「YAMATO SOUND ALMANAC」シリーズとして多数のCDを復刻してきたコロムビアだけに、今回も音質に関しては文句のないできばえ。『宇宙戦艦ヤマト2199』とは30年以上の隔たりがあるにも関わらず、さほど遜色ないサウンドに仕上がっているのは驚きだ。
 映像の内容は基本的に劇場版第1作に準拠しており、楽曲の配置は大筋で「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」を踏まえたものとなっている。特に「序曲」「誕生」「サーシャ」といった序盤の流れは、「交響組曲」をそのまま踏襲。ただし一部でTVシリーズからの音源や、『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』からの楽曲や映像も使用しており、シーンごとの音質のバラつきも見られる。また「MV SERIES 宇宙戦艦ヤマト2199」と同様、楽曲は編集されていてフルサイズではない。
 当然ながら本編の流れをダイジェストで追体験できるわけだが、映像の尺にとらわれずにアレンジされた「交響組曲」がベースになっていることから、どちらかと言えば音楽優先の作風と言えるだろう。『宇宙戦艦ヤマト』の映像集である以上に、「交響組曲」のイメージビデオという側面の強い作品だと感じた。こちらもまた、反響次第ではMV SERIES第2作以降の復刻も検討されるのではないだろうか。
(和田穣)

MV SERIES 宇宙戦艦ヤマト2199

BD版:COXC-1062/3,990円/日本コロムビア
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MV SERIES 宇宙戦艦ヤマト2199

DVD版:COBC-6481/3,360円/日本コロムビア
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MV SERIES 宇宙戦艦ヤマト

BD版:COXC-1063/3,990円/日本コロムビア
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MV SERIES 宇宙戦艦ヤマト

DVD版:COBC-6482/3,360円/日本コロムビア
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