2007年は、新人や中堅の監督たちに機会が与えられ、オリジナル企画の野心作が多数生まれた年である。
NHKアニメ『電脳コイル』はその代表例。業界内で才能が注目されてきたアニメーター・磯光雄が、原案・脚本とともに初監督を手がけたSF作品だ。斬新な設定や物語、セピア色を強調したレトロ感覚に、豊かな作画の魅力も加わり秀作となった。制作はマッドハウス。04年にインデックスの子会社となった同社はこの時期、制作本数が増えるなか、丸山正雄PDがクリエイター主義をより強め、社内外の才能ある監督にチャンスを与えようとしていた。片渕須直監督の『BLACK LAGOON』、湯浅政明監督の『ケモノヅメ』、佐藤竜雄監督の『TOKYO TRIBE 2』、水島精二監督の『大江戸ロケット』などの意欲作が次々と登場。この勢いは翌年も継続していく。
女性向けのマンガ原作路線で出発した「ノイタミナ」枠もこの年、新たな広がりを見せた。中村健治SDがオリジナル作品『モノノ怪』でデジタル技術を駆使した浮世絵調の映像美を前面に出し、高い支持を得たのだ。これは前年、『怪 〜ayakashi〜』で、中村の演出回(「化猫」)が高視聴率をとったことから生まれた企画だった。同枠は以後、新鋭監督の実験の場として、奇抜な題材や映像もセールスポイントに加えていくことになる。
ガイナックスは、今石洋之のTV初監督作『天元突破 グレンラガン』で原点回帰ともいえるパワフルなロボットものに挑戦した。京都アニメの『らき☆すた』は、初監督に起用された山本寛の途中降板が波乱を呼びつつも作品は好評で、女子同士のとりとめのない会話を幸福感とともに描く“空気系”アニメの代表格となった。舞台の埼玉県鷲宮町はファンの盛んな来訪(聖地巡礼)によって活性化、ご当地アニメが続出する契機を作った。
中堅では、シャフトの新房昭之監督が持ち前の作家性を発揮し、『ひだまり スケッチ』『さよなら 絶望先生』を成功に導いた。サンライズは、水島精二監督の『機動戦士 ガンダム00』で少女マンガ家・高河ゆんにキャラ原案を依頼、華やかさと硬質さのコラボによる新味を狙った。『おおきく振りかぶって』は、久々の高校野球アニメを、水島努監督が繊細な演出で現代にも通じるドラマへと再生させ、人気を呼んだ。製作のAー1 Picturesは05年に発足。ソフト会社・アニプレックスの主導により設立された点で新しいタイプのスタジオだった。
リスト修正(13.06.14)