COLUMN

第913回 『沖ツラ』制作話~7話 沖縄の台風とコンテ修正

 7話、折り返しです。6話の続きで台風話。こちらから撮影チームにリクエストした“暴風雨”が、巧くいってて個人的に嬉しかった——って、(傍らのコンテを改めて見て)この話数もコンテ直しまくってますね。ご当地スーパー“ユニオン”が閉まってて、安寧が崩壊する喜屋武さん比嘉さんは、もちろん原作から面白かった件ですが、比嘉役・ファイルーズあいさんの狼狽した芝居「すすすすす……」とか聴いた時、より面白くなっててスタジオで爆笑してました。さらに沖メモシーサーのザワつきも良いです。
 ところで今さらですが、直した~修正した~といちいち言うけど、

で、板垣はコンテをどういうふうにチェックしているのか?

と、思われる方もいらっしゃると思うので、この辺で少し。
 前作『いせれべ』も今作『沖ツラ』も、下に監督がいようとコンテの主導権は板垣の方にあると思っていただいて結構です。ここは前々からこの連載で語っているとおり、

自分にとって監督とは、コンテを自在に描く・操る立場にある人のこと!

であると思っているからです。「じゃ、何でコンテチェックも監督にやらせてやらないんだ?」と仰る方も多いと思います。で、その疑問に答えると、ハッキリ言ってウチ(ミルパンセ)で、野放しで流せるコンテを描けるスタッフがまだ育っていないということです。未熟な人のコンテをなんでも個性~個性~で流すと、ただでさえ限りある作画リソースを不用意に痛め付けることになりかねないし、下手をすると製作委員会の方から「このコンテで大丈夫?」とその後の制作自体に不安がられることにもなります。これは実際あった話なのですが、とある10年以上前、自分の監督作品の隣の班で準備していた某タイトル(俺の監督作品ではありません)は、総監督・監督のダブル監督で進んでいました。ちょっと遅れ気味で上がってきた監督のコンテ第1稿に対して製作委員会側から「原作とだいぶ印象が違うんですが、総監督さんがしっかり直してくれるんですよね?」と言ったやり取りがありました。その際、総監督は「直します」と言っておきながら、ほとんど手を付けずそのまま“総監督チェック済み”として提出したのです。当然それに委員会が激怒。で結局、総監督は解雇。その後、新監督で制作され、その第1稿を上げた元監督は一演出処理に降格。コンテは新監督が全修したのでした。
 つまり、監督が居ての総監督だったとしてもコンテの全責任を取れなければならない! ということになります。よって、取り敢えず今は社内スタッフのコンテを大幅に直しつつ、「ここはこう~」と本人に教えながらやっていくしかないと覚悟を決めたのが『いせれべ』でした(その前の『蜘蛛ですが、なにか?』まではほぼ全話自分でコンテ切ってましたから)。そんな中「コンテやりたい人~」と募って、集まったのが今作『沖ツラ』のコンテマンという訳です。その際「俺にどれだけ直されても処理(演出)までやる」というのが条件。

 と、もう時間です。コンテ修正の話は次回へ! 『キミ越え』に戻ります(汗)!