COLUMN

アニメ様の『タイトル未定』
429 アニメ様日記 2023年8月13日(日)

2023年8月13日(日)
コミックマーケット102の2日目。午前中は事務所でデスクワーク。「この人に話を聞きたい」の原稿に着手した。午後から東京ビックサイトに。しばらくアニメスタイルのブースにいてから、CLAPのブースに行って『夏へのトンネル、さよならの出口』の本を購入した。
この日の『ONE PIECE』も作画がよかった。噂話として太平さんがやっているのは聞いていたけど、あんなにしっかりとやっていると思わなかった(後に担当したのは1カットだけだと、ご本人がSNSで発言した。前後のカットは他のアニメーターが大平さんに合わせたのだろうか)。

2023年8月14日(月)
「この人に話を聞きたい」の原稿を進めるつもりだったけど、疲れていてまともに進みそうもなかったので、原稿以外の作業を片づけることにした。
新文芸坐で「JAWS/ジョーズ」(1975・米/124分/PG12)を鑑賞。プログラム「夏休みだよ スピルバーグ・スペシャル」の1本。映画館で観たのはこれが初めてのはず。映画前半で「サメが出るかと思わせて出ない」を何度も繰り返していた気がするんだけど、そうでもなかった。記憶よりもスムーズに物語が進む。映画中盤で主人公達がサメ退治のために海に出る。最初にサメと遭遇したあたりが素晴らしい。演出がいい。スコープサイズを活かした画作りで、観ている自分も海いるかのような臨場感。このあたりだけで映画館で観てよかったと思えた。終盤のサメとの戦いは、公開当時には充分にエキサイティングだったのだろうなと思った。

2023年8月15日(火)
連休明けだけあって、やることが多い。「この人に話を聞きたい」の原稿はあまり進まず。富士そばの『機動警察パトレイバー』コラボそばを食べた。一般販売開始を前に「作画マニアが語るアニメ作画史 2000~2019」を増刷することを決めた。

2023年8月16日(水)
「この人に話を聞きたい」の原稿を進めた。午前中にようやく記事の流れがつかめた。だけど、記事を完成させるために確認することが多い。Netflixの『メック・カデッツ』全10話を流し観。人物の芝居の動きに手描きっぽいところがあっていい。それから『Back Street Girls -ゴクドルズ-』の観ていなかった話数を観た。

2023年8月17日(木)
スターチャンネルでやっていた「愛と哀しみの果て」の吹き替え版を途中から観た。ロバート・レッドフォード(役名はデニス・フィンチ・ハットン)を古川登志夫さんがアテていた。セリフを聞いていると、たまに僕らが知っている古川登志夫さんらしい感じになる。それ以外は低い声の芝居が続く。こういうお芝居もされるんだなあ。勉強になった。1989年の日本テレビ版の「愛と哀しみの果て」はカレン・ブリクセンが池田昌子さんで、ロバート・レッドフォードが野沢那智さん。他に富山敬さんや肝付兼太さんが出ていたらしい。こちらも最近、スターチャンネルで放送したそうだ。録画しておけばよかった。
突然、思い出したけど、1993年に野沢那智さんに取材した時に、野沢さんが「今までの僕の仕事についてまとめた本が出るんだ」とおっしゃっていた。結局、その本は出なかった。読みたかったなあ。

2023年8月18日(金)
昼前後に「この人に話を聞きたい」の本文原稿が終わって、社内チェックに回す。その後、リードや注を書く。WOWOWで「カイジ 人生逆転ゲーム」「カイジ2 人生奪回ゲーム」「カイジ ファイナルゲーム」「カイジ 動物世界」の連続放送をやっていて、それを流し観した。
ワイフのためにマンガ「美味しんぼ」を月に1冊ずつkindleで買い続けてきたのだが、この日、最新の111巻を購入して、全巻が揃った。いやあ、長かった。10年近くかかったはずだ。

2023年8月19日(土)
コピー機(複合機)を新しいものと入れ替えるので、コピー機の周りを片づけた。その過程でどこにいったのかと思っていた未開封のCDや読みかけの小説を見つける。届いたままにしてあったAmazonの箱を次々と開けた。11時頃に昼食のために池袋駅西口に。目当ての洋食屋に行列が出来ていたので、チェーンの居酒屋に入る。この店はホッピーの中(焼酎)で、コーヒー焼酎を選ぶことができるのが面白い。作り置きではないのに頼んだものがあっという間に出てくるのも嬉しいし、店のお姉さんがやたらと元気なのもよかった。考えてみたら、最近は飲食店で店員さんが元気なのをあまり見なくなった。マンションで昼寝をして、夕方に事務所に戻る。オールナイトの予習をしてから新文芸坐に。
オールナイト「【新文芸坐×アニメスタイル vol. 164】真夏の『Sonny Boy』Night」を開催。マニアックな企画なので、あまりお客さんが入らなくても仕方がないと思っていたのだけれど、8割くらいの席が埋まった。お客さんは若い人が多かった。しかも、お洒落な若い女性が多い。いつものアニメスタイルのお客さんとの重複は少ない感じで、濃い目のサブカル系というわけでもないような。トークの最初にアンケートをとったら、このオールナイトで初めて『Sonny Boy』を観る人が4割くらい。Blu-ray BOXを購入した人が3割くらい。『Sonny Boy』を観たことがない人とBlu-ray BOXを購入するくらいのファンを足すと全体の7割になる。『パトレイバー』特集でも『ナデシコ』上映でも初見のお客さんがかなりの量いるのだが、『Sonny Boy』を観たことがなくて、オールナイトに足を運ぶ人がこんなにいるとは思わなかった。
オールナイトのゲストは夏目真悟監督。上映前のトーク(40分ほど)は企画の話、監督としての狙いの話を中心にして、キャストの話もうかがった。客筋がつかめないので、キャストの話はやっておこうと思ったのだ。夏目さんが、渡辺信一郎さんや川尻善昭さんに「もっと売れるものを作れ」とか「マジメにやれ」と言われた話も。だけど、夏目さんはメジャーな作品を作っているつもりだったそうだ。
僕も夏目さんも、関係者席で朝まで観た。『Sonny Boy』のクールさ、捻った感じ、あるいは画作りが予想以上にオールナイト向きだった。昼間のプログラムでやったら、こんなには楽しめなかっただろう。内容については理解しているつもりだったのだけど「分からない!」と思ったところがいくつもあった。ひとつひとつの話も密度が高いので、一晩で2クール以上観た手応え。集中して観ると、各話の作り込みの差がはっきりと分かる。後に『ぼっち・ざ・ろっく!』を監督として手がける斎藤圭一郎さんの絵コンテ・演出回(8話では脚本・絵コンテ・演出を担当)が抜きん出ていた。それから前から思っていたことではあるけれど、11話の作画がいい。
今まで気がつかなかったけれど『Sonny Boy』って、1話から11話までタイトルロゴも出なければサブタイトルも出ないのね。ちなみにオープニングもない。作品タイトルが出るのはエンディング最後のマルシー表記だけ。タイトルロゴもタイトル表記もなく、最終回の12話のエンディングで初めてタイトルロゴが表記される。『うる星やつら2 ★ビューティフル・ドリーマー★』でやった本編最後に作品タイトルが出るのを、TVシリーズで、しかも、全話を使ってやったということだ。
ロングショットで(たまに寄りのカットでも)キャラクターの顔を描かないで、さらに輪郭を色トレスにする手法は劇場で観たほうが違和感がないかも。トークで夏目監督も言っていたけど、劇場で観ると「黒のしまり」がいい。
上映後のトーク(10分ほど)は夏目さんが久しぶりに自作を再見して、その感想をファンの前で言うところが、企画的なポイントだった。トータルでの感想は「やり過ぎですね」というものだった。そこまでは言っていなかったけれど、渡辺さんや川尻さんに苦言を呈されるのも仕方ないということだろう。それから、若いから作れた作品で、これからこういったものを作るかどうかは分からないとのこと。
上映後にTwitterで検索してみると「すてきな夏をありがとうこざいました。」「自分の中ではアニメというよりアート作品に感覚が近いです。」「漂流してました。」「最愛の作品を劇場で、監督と一緒に観られた。これ以上の喜びはない。ありがとう。本当にありがとう。」「一緒に漂流を体験したような濃密さと、上映後の朝日の清々しさが最高でした。サニボを観ると、ゆっくりでいいから未来を見つめて生きていこうなんて前向きな気持ちになりますね。」「夏に一晩でサニーボーイ全部見る行為自体、終わってみれば夢っぽくてサニーボーイ感があるのが良いよね」等々、素敵なツイートがいくつもあった。