COLUMN

第833回 コンテと脚本の指導

現在、画コンテの指導を2シリーズ同時にしています!

 制作中の『沖ツラ(沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる)』と、その次作品(こちらのタイトルはまだ未発表)、2シリーズのコンテマン(ディレクター)の指導・育成を平行してやってる感じです。
 ま、指導だ育成だとか言うほど、自分の場合「こーゆー場合は、あーしてこーせい」って感じの教え方はしません。まず「脚本を基に、自分なりに面白く描いてみて~」と割に大雑把な渡し方をする代わりに「2週間で!」と、早く描くことのほうを重視します。
 2週間の根拠はと言うと“TVシリーズ1話分のコンテは(1ページに6フレームのコンテ用紙で)概ね80~100ページ”ってことは土曜・日曜は休日なので月~金の5日×2週間(=10日)で100ページと。つまり、“1日10ページ”がノルマ。「ある程度ラフでもいいので、スケジュール内で上げ切ること!」を目標にコンテを切らせ(描かせ)て、必要なだけ俺の方で手を入れて、第831回で前述したように、「加筆・修正をした理由」を描いた本人にちゃんと説明してから決定稿にするという訳です。

ここのところ、ミルパンセでというより板垣個人的にも、
社内スタッフの脚本とコンテの指導に力を注いでいます!

というのも、アニメ会社はこれからAI(人工知能)の導入をしなければ、作り続けられません。単純な話「企画・コンテンツはこれからも増え続けるのに、描き手は減る一方だから」です。我々より上の世代から徐々に引退していく上、我々より後の世代は出生率的に見ても、どんどん減っていく一方。業界的に新人アニメーター育成は必須というのが大前提としたって、これから成人を迎える日本中の若者らの半分以上がアニメーターになってくれでもしない限り、企画に対するスタッフの人数が圧倒的に足りなくなる勘定でしょう。
 例えばこの現状で、まだ本線が終わってもいないシリーズを、別スタッフで頭っから作り直すなんて“業界的なアニメーター不足に輪を掛ける”という意味で、どうかと——あ! あくまで例えばです、例えば(失笑)!
 で話を戻します。別にAI導入で手描きアニメーターをなくすという気は全くありませんし、なくなるとも思っていません。ただ、内容的に「歩く・走る」だ「手を上げる・下げる」だ程度のどうってことない芝居は人手を掛けずAIに任せて、本当に必要な“演出意図から凝った芝居やアクション”、所謂“作家的素養”が必要なモノこそ、“巧いアニメーター”に描いてもらう! とかです。
 つまり、「勤勉・実直な職人こそアニメーターの鑑」的な昭和価値観を言い訳に、本物のモノ作りから照れて逃げ回ってきた我々アニメーターも、そろそろ限界。

「AI導入反対!」とかプラカード掲げる前にもうひと勉強して、
少しでも“アニメーション作家”に近づいてAIを使いこなす側になろう!

と自分自身でも考えているし、周りのスタッフにも「いきなりお話作りは難しくても、脚本やコンテとかから勉強してみない?」と声を掛けている訳です。
 繰り返しますが、いつまでも「真面目に描き続けるだけのアニメーターのままで、僕(私)は満足~」では、その仕事皆AIに持って行かれますよ! 4~5年とか、で?

(次週2023年ラストです……。)