編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年4月18日(日)
仕事の合間に、新文芸坐で「有りがたうさん」(1936/76分/35mm)を観る。プログラム「天才と呼ばれた男 名匠・清水宏」の1本。タイトルになっている「有りがたうさん」は山間から街まで行くバスの運転手のニックネームだ。彼はバスに道を開けてくれた人に、必ず「有りがたうさん」と言うのだ。有りがたうさんが運転するバスが終点に着くまでを描いた群像劇で、話も面白いし、映画としてもよくできている。ラストの展開について「え、それでいいの?」と思ったけれど、再見したら印象が変わるかもしれない。原作は川端康成の「有難う」。帰宅してからKindleで読んでみたけれど、ラストの展開は映画の創作であったようだ。「有難う」が収録されているのは「掌の小説」という掌編集で、少し読んでみたがどの作品もよかった。
『BECK』や『Paradise Kiss』を手がけた小林治さんが亡くなったことを知る。少し前からSNSで小林さんの発言がなくなり、心配で、彼と親しい人に様子を探ってもらっていたのだけど、その返事が届く前の訃報だった。小林さんとは取材やイベントでご一緒したし、『ケモノヅメ』『はなまる幼稚園』では同じ作品に参加した。彼のオリジナル作品の企画書を途中まで作ったこともある。気さくで、思いやりがあって、そして熱い人だった。心よりご冥福をお祈り致します。
2021年4月19日(月)
進行中の書籍の作業、「佐藤順一の昔から今まで」の取材予習を進める。
イベントのために「アニメ様の1999年代年表」を作り始める。『THE END OF EVANGELION』『機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-』『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』『アキハバラ電脳組 2011年の夏休み』で、『機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-』だけがビデオ、LD、DVD同時リリースだったのね。確かに同じ内容で3種類のパッケージを同時進行で作った覚えがある。『THE END OF EVANGELION』の時はビデオ、LDが同時だけど、DVDは同時ではなかった。『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』『アキハバラ電脳組 2011年の夏休み』はビデオとDVDが同時だったけれど、LDは出なかった(はず)。
2021年4月20日(火)
Zoom打ち合わせが始まる前の待ち時間に「僕の心のヤバイやつ」の最新話を読んで、ミーティング画面にニヤニヤした顔をさらしてしまった。
「佐藤順一の昔から今まで」で佐藤さんの取材。この企画で4度目のインタビューだ。色々と謎が明らかになった。15時40分から新文芸坐で「花形選手」(1937/64分/16mm)を観る。これも「天才と呼ばれた男 名匠・清水宏」の1本。「有りがたうさん」は面白かったけど、こっちはピンとこなかった。笠智衆さんが学生役で出ていた。見た目は若者だけど、声は僕らが知っている笠智衆のものだった。
2021年4月21日(水)
仕事の合間に、新文芸坐で「蜂の巣の子供たち」(1948/85分/35mm)を鑑賞。これも「天才と呼ばれた男 名匠・清水宏」の1本。映画としては悪くないけれど、公開当時にあったに違いない「新しさ」については想像するしかない。就寝前に萩尾望都さんの「一度きりの大泉の話」をKindleで読む。萩尾さんの作品は数冊と短編数本を読んだだけだが、ガツンときた。
『serial experiments lain』の再見を始める。
2021年4月22日(木)
緊急事態宣言で、外食で酒が呑めなくなるらしい。これは困った。いや、僕らよりもお店のほうがずっと大変なんだけど。
2021年4月23日(金)
グランドシネマサンシャインの9時15分からの回で『映画ヒーリングっど プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!』を鑑賞。プリキュア5チームの扱いが「強力な先輩プリキュア」でしかなくて、それが残念。同時上映の短編『映画 トロピカル~ジュ!プリキュア プチ とびこめ!コラボ ダンスパーティ!』はよかった。『トロピカル~ジュ!』だったら、まんが映画が作れるのではないか、という気がした。
三省堂書店に行って判型とか文字詰めの参考になりそうな本をチェックして購入。それと別に、小説「男の子になりたかった女の子になりたかった女の子」を買った。表題作を読んだら大層面白くて、最後のセンテンスがまるで『少女革命ウテナ』のようだと思ったら、作者は『少女革命ウテナ』のファンだったらしい。
SNSを見ると、イベントや映画館や美術館の「中止」「休業」の話題が並んでいてキツい。
2021年4月24日(土)
ワイフと築地食堂源ちゃん東池袋店で食事。昼から吞む。緊急事態宣言のため、この後、しばらくホッピーが呑めなくなる。夜はオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 129 大友克洋監督のアニメーション」を開催。トークのゲストは橋本敬史さんと井上俊之さん。会場はほぼ満員。今回も井上さんが積極的に話をしてくださった。
『MEMORIES』の「彼女の想いで」において、井上俊之さんがかなりの量の原画を描き直したという話は、以前のオールナイトでも出たはずだけれど、今回のトークでは「直さなかったのは2人だけ」とさらに話が具体的になった。