COLUMN

第204回 夢と希望は色あせない 〜Yes!プリキュア5&Yes!プリキュア5GoGo!〜

 腹巻猫です。4月7日に2枚組CD「Yes!プリキュア5&Yes!プリキュア5GoGo! メモリアルアルバム」がマーベラスから発売されました。3月に公開された『映画 ヒーリングっど・プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!』でプリキュア5が共演したことから企画された歌と音楽集です。選曲・構成・解説を担当しました。初収録音源もありますので、ぜひお聴きください!
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 過去に発売されたサントラ盤を新たな構成で発売しなおす機会はそうそうない。よほど人気作品でなければかなわないことだ。
 いっぽうで構成者の立場からすると、「あの曲も入れておけばよかった」とか「最後はこうなるとわかっていたら、別の曲順にしたのになあ」と、一度リリースしたサントラ盤に悔いが残ることがある。いや「悔い」とはちょっと違うな。そのときはベストの構成と考えていたのだから。「チャンスがあれば別の構成に挑戦してみたい」という野望である。
 「Yes!プリキュア5&Yes!プリキュア5GoGo! メモリアルアルバム」は筆者にとってそんな野望がかなったアルバムになった。
 今回はこのアルバムについて書いてみたい。

 『Yes!プリキュア5』と『Yes!プリキュア5GoGo!』は2007年2月から2009年1月まで連続して放映されたプリキュアシリーズ第4作目と第5作目にあたる作品である。
 サンクルミエール学園に通う女子中学生、夢原のぞみ、夏木りん、春日野うらら、秋元こまち、水無月かれんの5人は異世界から来た妖精ココとナッツと出逢い、伝説の戦士プリキュアに変身する力を手に入れた。彼女たちは襲い来る邪悪な敵(『Yes!プリキュア5』ではナイトメア、『Yes!プリキュア5GoGo!』ではエターナル)から平和な世界を守るため、壮絶な戦いをくり広げる。
 それまでのプリキュアシリーズではプリキュアは2人が基本だったのに対し、『Yes!プリキュア5』はプリキュアが5人に増え、群像劇とチームアクションで見せる作品になった。生まれ育った環境も個性もバラバラの5人が、ときに対立したりしながらも力を合わせてひとつの目標に向かっていく。その姿が幅広い層に支持され、続編『Yes!プリキュア5GoGo!』が制作されるほどの人気を得た。プリキュアシリーズで同じキャラクターで2年にわたって放映された作品は現在のところ本作が最後である。
 放映から10年以上を経ても本作の人気は根強く、2019年にNHK BSプレミアムで放送された「発表!全プリキュア大投票」では、作品部門の第3位に『Yes!プリキュア5GoGo!』が、第6位に『Yes!プリキュア5』が選ばれている。また、プリキュア部門では本作から3人のプリキュアが10位以内にランクイン。歌部門では『Yes!プリキュア5GoGo!』のオープニング主題歌が堂々の第2位、『Yes!プリキュア5』のオープニング主題歌が第4位という結果だった。
 本放映当時に発売されたサウンドトラック盤の構成・解説は筆者が手がけた。筆者はシリーズ第2作『ふたりはプリキュア Max Heart』(2005)からプリキュアのサントラ盤の仕事をしているが、この頃は毎回の音楽録音に立ち合い、録音が終わったあとのスタジオで作曲家インタビューもしていたので、たいへんに思い出深い作品である。
 劇中音楽(BGM)は、シリーズ第1作『ふたりはプリキュア』(2004)から音楽を手がけている佐藤直紀が2作とも担当。舞台となる学園や街並みがヨーロッパ風に描写されているのに合わせて、ヨーロッパの香りがするしゃれたサウンドで書かれた曲が耳に残る。プリキュアの変身曲や活躍曲は佐藤直紀ならではのキャッチーなメロディとダイナミックなオーケストレーションで仕上げられ、シリーズの集大成という印象だ。この2作品が佐藤直紀が音楽を担当したプリキュアTVシリーズ最後の作品になった。
 当時発売されたサントラ盤は、『Yes!プリキュア5』『Yes!プリキュア5GoGo!』それぞれで2枚ずつ。『Yes!プリキュア5』のために作られたBGMはバージョン違いも含め70曲あまり。『Yes!プリキュア5GoGo!』では同じく50曲あまり。これまで発売されたアルバムに大半の楽曲が収録されている。
 また歌ものに関しては、放映当時、それぞれにソングアルバムが2枚、ベストアルバム1枚が発売されている。主題歌とキャラクターソングは、のちに発売された「プリキュア ボーカルベストBOX」やコンピレーションアルバムに再収録される機会も多かった。

 歌のアルバムもサントラ・アルバムも熱心な『プリキュア5』ファンはすでに持っているだろう。そこで、今回の「メモリアルアルバム」はこれまでにないコンセプトで作ってみた。歌とBGMをひとつのアルバムにまとめてプリキュア5の世界を表現しようと考えたのだ。2013年発売の10周年記念CDセット「プリキュア ボーカルベストBOX」でもソングアルバムのラストにBGMパートを設けて同じようなことを試みたが、今回の構成はそれとは違う。歌とBGMを区別せずに並べて、ひとつの流れの中で聴いてもらうことをめざした。イメージは「歌とオーケストラサウンドによるプリキュア5のコンサート」である。
 同時に選曲にあたっても、過去のアルバムへの再挑戦として、蔵出し音源や近年発売されたアルバムに収録されていない曲をフォローしたいと思った。
 歌ものについては、「プリキュア ボーカルベストBOX」の発売前に「メモリアルボーカルセレクション」というシリーズが各作品で発売されていて、BOXはそちらと内容が同じにならないように選曲した経緯がある。なので、「ボーカルベストBOX」に収録されなかった重要曲がいくつかあるのだ。『ふたりはプリキュア』の劇中で流れた「☆SHINING STAR☆」「Heart to Heart」などはその一部である。
 いっぽう、BGMはほぼ全曲がCDに収録されているが、劇中に使用されていて、まだ商品化されていないバージョン違いの楽曲が何曲か残っている。今回はその中のいくつかを収録することにした。
 ディスク1「Yes!プリキュア5」編の内容を紹介しよう。収録曲は下記のとおり。

  1. メタモルフォーゼ!〈V-4A〉
  2. プリキュア5、スマイル go go!(歌:工藤真由)
  3. メタモルフォーゼ〜青春乙女LOVE&DREAM〜(歌:ぷりきゅあ5)
  4. 5つの心!プリキュア5!!〈V-16〉
  5. 乙女の力、受けてみなさい!〈V-15〉
  6. もん!太陽ドリーム(歌:夢原のぞみ/キュアドリーム[CV:三瓶由布子])
  7. リバーシブル(歌:夏木りん/キュアルージュ[CV:竹内順子])
  8. とびっきり!勇気の扉(歌:春日野うらら/キュアレモネード[CV:伊瀬茉莉也])
  9. サブタイトル〈V-1〉
  10. 私の夢、けってーい!!〈V-32〉
  11. Yes!〈V-38〉
  12. イケメン登場!〈V-24〉
  13. キラキラしちゃってMy True Love!(歌:宮本佳那子)
  14. 見て見て見てね!! ★
  15. プリキュアキャッチ!〈V-2〉
  16. プリキュアキャッチ2!〈V-3〉
  17. 信頼(歌:秋元こまち[CV:永野 愛])
  18. Heavenly Blue(歌:水無月かれん/キュアアクア[CV:前田 愛])
  19. 星の冠(歌:コージ&夏[CV:草尾 毅&入野自由])
  20. 闇からの使者〈V-47〉
  21. コワイナー出現!(Alternate version) 〈V-29B Perc & Pf & Strings ver.〉★
  22. プリキュアの敗北(Alternate version) 〈V-103 Brass,Horn Cut〉★
  23. 女帝デスパライア(Strings version) 〈V-105 Strings Only〉★
  24. プリキュアfly(歌:工藤真由)
  25. 1、2、シュート!〜Five Explosion〜(歌:夢原のぞみ[CV:三瓶由布子]&ぷりきゅあ5)
  26. 信じる仲間とともに〈V-46〉
  27. プリキュア・ファイブ・エクスプロージョン!〈V-101〉
  28. 希望の絆〈V-9B〉
  29. 思いは空を超えて〈V-109〉
  30. ガンバランス de ダンス〜夢みる奇跡たち〜(歌:宮本佳那子 with ぷりきゅあ5)

 ★=初収録音源
 〈〉内はMナンバー
 ※歌手のコーラス表記は省略しました。

 1曲目は5人共通の変身BGM。『Yes!プリキュア5』を象徴する楽曲であり、アルバムの開幕を飾るにふさわしい曲だ。
 続いて、オープニング主題歌「プリキュア5、スマイル go go!」とプリキュア5人が歌うイメージソング「メタモルフォーゼ〜青春LOVE&DREAM〜」を収録。「メタモルフォーゼ〜青春LOVE&DREAM〜」はキャラクター名や技名を織り込んだ、70年代アニメソングみたいな燃えるキャラクターソング。「プリキュア ボーカルベストBOX」から漏れた1曲である。
 トラック4〜5にはプリキュア登場&活躍シーンに流れるBGM「5つの心!プリキュア5!!」「乙女の力、受けてみなさい!」を収録した。いずれも使用頻度の高い、代表的なアクションBGMである。躍動感みなぎる佐藤直紀のプリキュアサウンドに「来た来た!」と気持ちが高揚する。
 ここまではコンサートの序盤のイメージで、「最初からクライマックス」を意識して盛り上がる曲を詰め込んだ。これまでのサントラ盤にはなかった構成である。
 トラック6〜8は、のぞみ、りん、うららのキャラクターソング。「とびっきり!勇気の扉」はシングルバージョンとアルバムバージョンがあるが、ここでは第20話の劇中で流れた、のぞみたちがコーラスを務めるバージョンを収録した。
 トラック9〜12はサブタイトル音楽と日常場面でよく流れた軽快なBGM。聴けば「そうそう! 『プリキュア5』ってこんな感じ!」と想い出がよみがえるファンも多いだろう。それだけ耳になじんだ曲である。「イケメン登場!」は妖精ココとナッツが人間に変身した姿、コージと夏のテーマ曲。
 前期エンディング主題歌「キラキラしちゃってMy True Love!」に続いて、トラック14は次回予告用音楽「見て見て見てね!!」。放映当時発売されたサントラ盤には収録されなかった初商品化音源だ。
 アイキャッチ音楽2曲をはさみ、トラック17〜19は、こまちとかれん、ココ&ナッツのキャラクターソングを収録。
 トラック20〜23はプリキュアの敵ナイトメアの脅威を表現するBGM。アルバムの中でがらっと雰囲気が変わるところだ。トラック21〜23の3曲が初収録になる。「コワイナー出現!(Alternate version)」はよく使われた怪物出現曲のパーカッションとピアノ、ストリングスのみで演奏されるバージョン。「プリキュアの敗北(Alternate version)」はプリキュアの敗北場面に流れた悲愴な曲のブラスとホルンを抜いたバージョン。第48話でプリキュア5が絶望の闇に襲われる場面などに使用されている。「女帝デスパライア(Strings version)」はナイトメアの首領デスパライアのテーマのストリングスのみのバージョン。同じく第48話でなどで使われた。
 強敵出現の重苦しいムードを吹き飛ばすようにトラック24「プリキュアfly」が流れて空気を変える。主題歌歌手・工藤真由が歌うテンションの高いロックナンバーだ。これも「プリキュア ボーカルベストBOX」から漏れた名曲の1つ。次の、のぞみとプリキュアたちが歌う「1、2、シュート!〜Five Explosion〜」とともに最終決戦突入のイメージで選曲した。
 トラック26〜29には物語の大詰めとなる第48話と第49話(最終回)で使用された曲を集めた。
 放映時に発売されるサントラ盤は、放映期間中にリリースする都合上、最終回の展開や、そこでどんな曲が使用されるかを知らないまま構成しないといけない。最終回を音楽で再現するサントラが作れたら……という思いがずっとあった。本アルバムでは、その思いを実現してみた。
 「信じる仲間とともに」と「プリキュア・ファイブ・エクスプロージョン!」は第48話のプリキュア5対ナイトメアの決戦を盛り上げたアクション曲。「希望の絆」と「思いは空を超えて」は、第49話で最後の戦いが終わったあとの、のぞみたちとココたちとの別れの場面をしっとりと彩った曲である。最終回を思い出しながら聴くと胸に迫るものがある。
 アルバムのラストは後期エンディング主題歌「ガンバランス de ダンス〜夢みる奇跡たち〜」で締めくくった。
 ディスク2「Yes!プリキュア5GoGo!」編の内容にも少し触れておこう。
 歌ものでは「プリキュア ボーカルベストBOX」未収録の「プリキュアからの招待状」「プリキュアモードにSWITCH ON!」に注目。どちらも聴けば勇気がわいてくるような熱い曲だ。「プリキュアモードにSWITCH ON!」はプリキュアシリーズ5周年を記念して作られたメモリアルソングである。
 BGMは『映画 ヒーリングっど・プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!』の中でもアレンジされて流れたプリキュア5活躍曲「勇躍!プリキュア5!」を筆頭に、代表的なアクション曲、日常曲などを収録。初収録音源では、エターナルの首領の過去を描く「館長の秘密」の別演奏によるバージョン違いと、苦悩する心を表現する「折れた心」の第47話などに使用された別バージョンを収録している。

 この「Yes!プリキュア5&Yes!プリキュア5GoGo! メモリアルアルバム」、自分で言うのもなんだが、すごくいいアルバムになったと思う。なにせマスタリングのときにエンジニアさんが「いいのできた!」と言ってくれたくらい、音楽アルバムとして聴きごたえがあるのだ。
 古くからのプリキュア5ファンは当時を思い出して懐かしく、また感動を新たに聴いてもらえるように、新しくプリキュア5を知ったファンにはプリキュア5の魅力が伝わるように、そんなアルバムをめざして選曲・構成してみた。手元に置いて愛聴していただければ幸せである。
 そして、これが好評なら、プリキュアシリーズのほかの作品も新たな選曲・構成で「メモリアルアルバム」を世に出せるのではないかと野望をふくらませている。『プリキュア5』は夢と希望を拓いてくれる作品なのだ。

Yes!プリキュア5&Yes!プリキュア5GoGo! メモリアルアルバム
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