なんと600回ですが知らん顔して作画の話。
「気分が出てる」っちゅーのはアニメーションでは大事なんですよ!
遡ること20数年前のテレコム時代、大塚康生さんが俺の描いた炎(研修課題)を見て仰った一言でした。
さらに遡って専門学校時代、恩師・小田部羊一先生が次のような課題を出されました。
小田部先生独特の可愛くデフォルメされたベートーベンもどきのキャラにポーズをつけると。たしか先生は「イメージで描いてもいいです」と仰いました。当時(1993年)はケータイなどはまだ学生まで普及しておらず、その場でネット検索をする人もいなかったでしょうが、調べるのも大事だけどこの課題のように
自らの記憶を総動員して「指揮者」と聞いてイメージするポーズを自由に描ける!
のも大事ということでしょう。
上の図のようなハッキリとシルエットの違うポーズを10枚ほど描いて提出。小田部先生より4重マルをいただいた上、「プロの現場でもいい仕事をもらえることでしょう!」と一言が添えられており、とてつもなく嬉しかったので、いまだに保管してあります(が、先生の許諾なしにここで勝手に見せるわけにはいきません)。まあ、この時の課題「指揮者のポーズ」と前述の大塚さんの「炎の気分」、お二人の巨匠が仰ってることには共通項があると思います。要は
何事も描き手(アニメーター)の記憶にあるイメージが重要だということ! 現代よりもはるかに記録ツールの乏しい世代の先達らは、画像だ動画だ検索だと安易に頼らないのです!
小田部先生は「『アルプスの少女ハイジ』のロケハンの時、宮(崎駿)さんは写真撮るより触って覚えてたよ」と教えてくださいました。
もちろん現代のハイテクを使って作画のレベルを上げることも重要です。スマホやネット検索を否定しても始まりません。ポンポンとネットに上がる写真やムービーを参考にしつつも、それらプラス「記憶による誇張」で原画を描くように後輩には教えています! 実写や3DCGをまんまトレスするだけでもダメで、ちゃんとそれらを「外回りする誇張」を加えて、初めて魅力あるアニメーションになるんです。そしてその「誇張」は手描きアニメーターの修練が手っ取り早いと。
あ、ちなみに『Wake Up, Girls! 新章』のモーションキャプチャーのダンスも、ちゃんとカットごとに所々誇張してるしコマもいじってるんです。『ベルセルク』も同様でした。てとこで、
頼まれたイラスト入り色紙7枚描かなきゃっ!