腹巻猫です。ついに、ついに、ついに! 5月28日、『キミとアイドルプリキュア♪』のサウンドトラック・アルバムが発売されます! プリキュアとアイドルものをミックスした作品として、これまでにない意表をついた展開を見せている本作。それを盛り上げているのがキラキラした魅力がいっぱいの音楽です。サントラ発売日はこのコラムがアップされる翌日ですが、もうフラゲ(フライングゲット)したという方もいるでしょう。今回はその内容を最速でチェックしましょう。
『キミとアイドルプリキュア♪』は2025年2月から放映中のTVアニメ。東映アニメーション制作のプリキュアシリーズ第22作目となる作品である。
アイドルプリキュア、それは世界中を真っ暗闇にしようとするダークイーネから世界を救う伝説の救世主。ある日、歌うことが大好きな中学生の咲良うたは、ふしぎな妖精プリルンと出会い、キュアアイドルに変身する力を手に入れる。同じ中学に通う蒼風ななと紫雨こころも、それぞれキュアウインク、キュアキュンキュンに変身した。アイドルプリキュアとなった3人は、力を合わせてダークイーネとその手下チョッキリ団の野望に立ち向かっていく。
そのいっぽうで、プリルンがプリキュアの動画をSNSにアップしたため、アイドルプリキュアは世間の注目を集め、ついに本当のアイドルとしてデビューすることになってしまった。アイドルプリキュアの3人は、CM出演、CDデビュー、握手会など、アイドルとしても活動の場を広げていく。
過去に素顔で歌手活動やアイドル活動をするプリキュアはいたが、変身してアイドル活動をするプリキュアは初めて。アイドルプリキュアがモンスターを倒す(本作では「キラッキランランにする」と表現される)ときの決め技は歌(「ステージ曲」と呼ばれる)。その曲がアイドルとして活動するときの持ち歌にもなっていて、リアルに(視聴者が買える)CDとしても発売される。本作の設定のユニークな点であり、フィクションと現実をリンクさせるしくみとして「うまいなあ」と感心する点だ。
また、本作では、うたたちがアイドル活動をするためだけにプリキュアに変身するシーンが日常的に描かれる。これも過去のプリキュアシリーズにない趣向である。アイドルの要素は予想していた以上に本作の根幹になっているのだ。
音楽は深澤恵梨香と馬瀬みさきが共同で担当。深澤恵梨香は『ひろがるスカイ! プリキュア』『わんだふるぷりきゅあ!』に続いて、プリキュアシリーズ3作目の音楽担当。馬瀬みさきはプリキュアシリーズの劇伴を担当するのは初めてだが、過去にキャラクターソングや挿入歌の作・編曲でシリーズに参加しているし、当コラムで以前取り上げた『変人のサラダボウル』などの劇伴を手がけた実績がある。2人のアイドル観が反映された音楽が劇中に流れるのが楽しいところだ。
音楽作りは、深澤がメインテーマやプリキュアの変身曲、バトル曲、敵側のテーマなどを担当し、馬瀬が主に日常曲や心情曲とステージ曲を担当する分担で行われている。
「千と千尋の神隠し」等の舞台の音楽監督を務めたことがある深澤恵梨香は、華やかなステージで活躍するアイドルの姿をイメージしたようだ。メインテーマはビッグバンドジャズ風の躍動的なサウンドに女声コーラスを加え、ブロードウェイ・ミュージカルを思わせる華麗な楽曲に仕上げた。プリキュアの変身テーマやメインの活躍テーマも同様の曲想で作られている。
いっぽう、馬瀬みさきの担当曲で重要なのがプリキュアが歌うステージ曲。3人のプリキュアそれぞれがソロで歌う曲と3人一緒に歌う曲の作曲・編曲を担当している。キャラクターソングでありつつ、劇中のアイドルソングであり、プリキュアの決め技でもあるという難しい要求に苦心しながら、一度聴いたら耳に残るポップでキャッチーな楽曲を作り出した。劇伴の日常曲のほうも、アイドル的な可愛らしさと親しみやすさを現代的なサウンドで奏でた楽曲になっている。実は馬瀬自身が子どもの頃からプリキュアシリーズを観ていたというプリキュア世代。それゆえにプリキュアらしい楽曲のツボみたいなものが自然に身についているらしい。
本作のサウンドトラック・アルバムは「キミとアイドルプリキュア♪ オリジナル・サウンドトラック プリキュア・キラキラ・サウンド!!」のタイトルでマーベラスから2025年5月28日に発売。CDと配信があるが、CDのほうは深澤恵梨香と馬瀬みさきのインタビューが掲載されたブックレットつきなので、熱心なファンにはCDがお奨めだ。
収録曲は以下の通り。
- キミとキラッキランラン♪
- キミとアイドルプリキュア♪ Light Up!(TVサイズ) (歌:石井あみ・熊田茜音・吉武千颯)
- 陽だまりのパレット
- サブタイトル
- さくら色のティータイム
- チョッキリ団
- 闇を照らす救世主
- プリキュア!ライトアップ!(Short version)
- 笑顔のユニゾン♪〜プリキュア!アイドルスマイリング! (歌:キュアアイドル(CV:松岡美里))
- うわさの人気者
- 思い出に沈むとき
- 勇気のドアをあけて
- まばたきの五線譜〜プリキュア!ウインククレッシェンド! (歌:キュアウインク(CV:高橋ミナミ))
- あこがれがとまらない
- アイドルプリキュアをさがせ!
- ココロレボリューション〜プリキュア!キュンキュンビート! (歌:キュアキュンキュン(CV:高森奈津美))
- はなみちタウンで会いましょう
- アイドルキャッチ♪
- 光あふれる世界
- 私はピカリーネ
- あの子のひみつ
- すれちがいデュエット
- プリプリルンルン〜♪
- キラキラをふりまいて
- 闇の気配
- 世界をクラクラの真っ暗闇にせよ
- キラッキランランにしちゃうよ
- プリキュア!ライトアップ!
- 激闘のプレリュード
- 白熱のバトルステージ
- 歌って踊ってファンサして【ハート】
- Trio Dreams〜プリキュア!ハイエモーション!〜 (歌:キュアアイドル(CV:松岡美里)&キュアウインク(CV:高橋ミナミ)&キュアキュンキュン(CV:高森奈津美))
- 夢色のときめき
- 川沿いの道を走ろう
- キミと一緒に
- Trio Dreams(TVサイズ) (歌:キュアアイドル(CV:松岡美里)&キュアウインク(CV:高橋ミナミ)&キュアキュンキュン(CV:高森奈津美))
- 今日もキミと!キラッキランラン〜♪
主題歌2曲とステージ曲4曲、劇伴30曲と予告用音楽を収録した内容。構成は筆者が担当した。
アルバムの大まかな流れは、前半がプリキュアが1人ずつ増えていき、アイドルプリキュアが3人そろうまでのイメージ。後半は、パワーアップして襲い来る敵に3人が協力して立ち向かい、勝利するまでのイメージ。その中に日常曲や心情曲、キャラクターテーマなどをちりばめた構成にしてみた。
本アルバムの聴きどころを紹介しよう。
1曲目「キミとキラッキランラン♪」は本作のメインテーマ。思わず体が動いてしまうような躍動感のある曲だ。サックスの音色が少し大人びた雰囲気をかもし出している。サックスを入れるのは音楽プロデューサーの注文だったそうだ。あとで出てくる「勇気のドアをあけて」(トラック12)、「はなみちタウンで会いましょう」(トラック17)、「歌って踊ってファンサして【ハート】」(トラック31)、「キミと一緒に」(トラック35)の4曲はメインテーマのアレンジ曲である。
オープニング主題歌を挟んで、「陽だまりのパレット」(トラック3)と「さくら色のティータイム」(トラック5)は、うたたちの日常をイメージした選曲。明るく軽やかな曲調が本作のムードに合っている。本作では、劇伴の曲名もこれまでと趣を変えて、アイドルソングっぽいタイトルにしてみた。
チョッキリ団のアジトのシーンに必ず流れるジャズ風の曲「チョッキリ団」(トラック6)に続いて、第1話でプリルンがうたにプリキュアのことを説明する場面に流れた「闇を照らす救世主」(トラック7)。壮大なファンタジーの世界を思わせる曲だ。
トラック8「プリキュア!ライトアップ!(Short version)」はプリキュアの変身テーマの1人変身用バージョン。アイドルがステージに出て行くときのわくわく感や意気込みをイメージさせる本作ならではの曲想。変身テーマは1人用、2人用、3人用……と何種類か作られている。
トラック9「笑顔のユニゾン♪〜プリキュア!アイドルスマイリング!」はキュアアイドルのステージ曲である。フルサイズの「笑顔のユニゾン♪」を40秒に短縮した劇中バージョンだ。
トラック11〜トラック16は、キュアウインク、キュアキュンキュンが1人ずつプリキュアになっていく姿をイメージした構成にした。
「思い出に沈むとき」(トラック11)は第3話のななの回想シーンに流れたしんみりした曲。次の「勇気のドアをあけて」(トラック12)も第3話でなながプリキュアになる直前に使用されていた曲だ。プリキュアシリーズに欠かせない、勇気や決意を描写する曲で、ななだけでなく、うたとこころがそれぞれ初めて変身するときにも使われていた。
トラック14の「あこがれがとまらない」は夢みる気持ちをロマンティックな曲調で少し大げさに表現した曲。こころのイメージで選曲したが、実際には第12話から本格的に登場する妖精メロロンのシーンによく流れている。
次の「アイドルプリキュアをさがせ!」(トラック15)は第1話でプリルンとうたが街でアイドルプリキュアを探す場面に流れ、以降もイベントのシーンなどに使われている軽快なファンク風の曲。本編の明るくはじけた雰囲気が伝わってくる。
トラック13とトラック16に収録したキュアウインクとキュアキュンキュンのステージ曲が、それぞれのキャラクターを反映した曲調とアレンジになっているところもポイント。
メインテーマアレンジの日常曲「はなみちタウンで会いましょう」(トラック17)とアイキャッチ曲「アイドルキャッチ♪」(トラック18)を挟んで後半へ。
後半は、ファンタジックな曲とユーモラスな曲から始まる。
トラック19「光あふれる世界」はキラキラした音色を使った美しい曲。第10話でキュアキュンキュンがファンの女の子と握手する場面など、胸を打つ温かいシーンに使用されている。
トラック20「私はピカリーネ」はプリルンがいた妖精の国キラキランドの女王ピカリーネのテーマ。フルートとハープ、ストリングスなどによる神秘的なムードの曲である。
トラック21「あの子のひみつ」からトラック23「プリプリルンルン〜♪」までは特徴的なリズムや音色を使ったコミカルな曲を集めた。いずれもプリルンやうたのシーンによく選曲されている。
トラック24「キラキラをふりまいて」はプリルンやメロロンの登場場面にたびたび使用。弦のピチカートと木管が奏でる可愛い曲だ。
トラック25からは一転して不穏な気配がただよい始める。
ストリングスやハープの合奏が徐々に盛り上がっていく「闇の気配」(トラック25)は「緊張をはらんで後半に続く!」といった雰囲気のサスペンス曲。
敵のモンスター登場シーンに流れる危機感に富んだ「世界をクラクラの真っ暗闇にせよ」(トラック26)、それに対抗するプリキュアの決意を力強い曲調で描写する「キラッキランランにしちゃうよ」(トラック27)と2曲続いたあと、3人そろっての変身テーマ「プリキュア!ライトアップ!」(トラック28)がアイドルプリキュアの登場を描写する。
トラック29〜トラック32まではプリキュアのバトルを怒涛の選曲で再現してみた。
トラック29「激闘のプレリュード」とトラック30「白熱のバトルステージ」はプリキュア対モンスターの戦闘シーンに流れる定番曲。アイドルのイメージは希薄で、スピード感と緊迫感とカッコよさが強調されている。前作『わんだふるぷりきゅあ!』が「攻撃しないプリキュア」だったので、今年は久々に熱いバトル曲が復活した印象だ。
トラック31「歌って踊ってファンサして【ハート】」はメインテーマアレンジのプリキュア活躍曲。ビッグバンドサウンドと女声コーラスが組み合わさり、華麗で爽快で躍動感にあふれたアクション音楽になっている。いきなり女声コーラスから始まるのが最高!
そしてトラック32「Trio Dreams〜プリキュア!ハイエモーション!〜」はプリキュア3人で歌うステージ曲。エンディング主題歌と同じ曲だというのがニクい。ステージ曲はどれもそうなのだが、この曲も視聴者がコール&レスポンスで参加できる趣向。TVを観ながら声を出して応援してほしい。
トラック33〜トラック35の3曲は、エピローグのイメージで選曲した。うた、なな、こころ、3人の心情の流れを大切に構成を考えてみた。
「夢色のときめき」(トラック33)はタイトルどおり、ときめく気持ちを表現する曲。第3話でうたとなながステージに歩き出すラストシーンや第14話でこころが誕生日を祝ってもらうシーンなど、うたたちの心が通い合う感動的な場面に使われている。
「川沿いの道を走ろう」(トラック34)は軽快なリズムの上でバイオリンやピアノ、ギターがメロディを奏でる解放感のある曲。さわやかな青春の一場面のイメージだ。
「キミと一緒に」(トラック35)はメインテーマのしっとりとしたアレンジ曲。ピアノとストリングスのやさしい音色が友情や家族の愛情を表現する。曲は必要以上に盛り上がることなく、そっと終わる。しみじみとした余韻が残る曲である。おだやかな曲調と次のエンディング曲(トラック36)のダンサブルなサウンドとの対比もねらってみた。
最後のトラック37「今日もキミと!キラッキランラン〜♪」はオープニング主題歌のカラオケを編集した次回予告音楽。曲タイトルは毎回予告の締めに使われるフレーズである。
今回のアルバムは、アイドルムービーみたいな、明るく楽しく、けれど最後はじんわりと心に沁みるものが残るようなイメージで構成してみた。難しいことは考えなくていい。深刻にならなくてもいい。でも大切な何かが、心に残ってほしい。本作における大切な何かとは、たぶんキラッキランランになること。キラッキランランとは「キラキラして、ランランして、ニコニコって感じ」だそうだ(第1話のうたのセリフより)。周囲の人も、敵も、そして自分も、みんなキラッキランランにしてあげたくて、プリキュアは活躍しているのだ。このサントラを聴いた人がキラッキランランになってくれたら、筆者も本望(キラッキランラン)である。さあ、キミも一緒に! キラッキランラン〜♪
キミとアイドルプリキュア♪ オリジナル・サウンドトラック プリキュア・キラキラ・サウンド!!
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