納品が始まると、作画修正やリテイク指示三昧の毎日。再三話題にしているとおり、ミルパンセでは今、外(外注やフリー)に撒かず、なるべく社内~社員スタッフで制作しています。そのため、出来の悪い演出指示・作画・美術などは、もちろんリテイク~結局自分で直すことになります。その際スタッフたちに「どこがどうおかしいのか?」「どう修正するべきか?」などを説明するのに、自分が20~26歳までお世話になったテレコム・アニメーションフィルムで受けた指導内容と、その後フリーになってから回った各スタジオ(会社)でお会いした名監督・名アニメーターの方々との仕事の経験まで——その全てが“糧”となっていて、それらのお陰で俺は今、食えている気がします。
テレコムだけではなく、その後のフリー生活でも「巧い人が関わっている作品」を意識的に選んで参加して一つでも多く「巧く効率のいい仕事の“コツ”」を盗み取ろうとして走り回っていました。それらが今、若手の指導に実を結んでいるという訳です。
ただ、自分はフリーで彼方此方のスタジオで楽しく仕事ができた時期があって、本当に幸せだったと思いますが、現状の若いアニメーターたちには社員若しくは固定給で会社に拘束してもらうほうをお勧めしています。その理由は、デジタル作画がメインになりつつある昨今、制作会社と連携を取るかたちで仕事しているほうが、制作体制の改変にも組み込んでもらえるし、新しいツールの情報だって自動的に入ってきますから。
それでも未だに「アニメーターはフリーが基本!」「俺たちの“自由”を奪わないでくれ!」的に頑ななまでに“会社に囲われたくない”主義の方は、それはそれで良いと思います。人それぞれですから。
ただし、憶えておいた方がいいのは、
“原画しか描けない”とか“コンテしか描けない”“ラフな演出指示画をペラペラ入れるだけ”などの「~しかできない」アニメスタッフより、令和の世は“一人でアニメ作品を作れるアニメクリエイター”の方をこそ、「画を動かすことができる才能職」として世間が認知している!
ということ。某動画サイトには1人で作ったショート・アニメが続々上がっているだけでなく、世の芸能人らが続々フリーになって、“お笑い”“料理”“歌”と、己の芸1本で動画投稿し始めたのがその証拠かと。なのにアニメーターはフリーを名乗りながら、会社から発注を受けないとエンタメを作るどころか、画一つ動かせないって……。だから、自分は社内のスタッフたちに、色々なセクションに興味を持つことを促しているのです。
脚本・コンテ・演出・原画・背景・音響・編集~と興味を持った仕事は、自分が知っている限り、なんでも教えてやらせてみています! ここ2~3作は“監督”の指導もしている!
と。せめて、まだ1人制作は無理でも動画制作工程全般に興味を持って働けば、何かの切っ掛けで“クリエイター”になれるのではないかと!
って訳で、現在制作中『沖ツラ』の次作も別の監督を面倒見て、共同監督しています!