前回の続き、「ふたりのブラック・ジャック~マンガ&アニメ絵コンテ・競演集」の話!
まだ全部は読めていなくて、杉井ギサブロー監督・丸山正雄プロデューサー・杉野昭夫作画監督のインタビュー&コメントもまだ。
ただ、仕事の合間合間にコンテ集を捲っては、エネルギーをもらっています。出﨑コンテ独特の勢いある筆致、出﨑監督の「こういう画が欲しい~いや、“こうあるべき”!」との“熱量”から、俺は勇気をいただいています。現在『沖ツラ』の次シリーズ(まだ、タイトルは未発表)のコンテ中で……。
話は遡ります。自分は名古屋時代、“古本からスクラップ”して出﨑コンテを収集していたのですが、上京して業界入りしたテレコム時代、何人かの先輩から使用済み出﨑コンテ(コピー)をいただいて超興奮したものです。「出﨑ファンの君にやろう!」と『劇場版BLACK JACK』のコンテを部分で、——恐らくご自身が担当されたパートのコンテでしょう。ちなみにこのコンテを下さった方は、テレコムに席を借りていたフリーのアニメーターで、当時は手塚プロダクションの作品も手伝っていたので、使用済みを破棄するくらいならと、俺に。孫コピーだったので、筆圧・濃淡は荒いものの、初めてA4サイズで手にした出﨑コンテに涙が出るほど嬉しくて、友達らとの飲み会に持ってって自慢したし、その後フリーの演出になった自分がコンテを切る(描く)際は、テキストとして何度も見返したものです。
その後、俺が退社する際に別の先輩(社員)から「これ餞別~」とOVA『エースをねらえ!2』の半パートのみと、同じく『~ファイナルステージ』コンテを1本分まるまるいただきました。その先輩は出﨑監督の『劇場版エースをねらえ!』を観てアニメーターを志したほどの方で、新人だった頃OVA『エース』の現場で使ったコンテ(孫コピー)とのでした。で、いただいた『エースをねらえ!2』のコンテで印象的だったのは、「誰が描いたコンテでも全部出﨑監督が直す」と噂に聞いていたほど、修正が成されていなかったこと。特に意外だったのは出﨑監督得意の派手なアクションである“(テニスの)試合シーン”ほど、無修正で流し、逆にお蝶夫人と竜崎理事の会話シーンの方が画も台詞も全修だったこと。特に普段は“全話コンテの出﨑”であるはずが、『エースをねらえ!2』では何故1話・2話・12話・13話以外のコンテを他人に譲ったのか? DVD-BOXのブックレット内インタビューでは「元々監督のつもりで取り組んでいたら、後で“総監修”とは何だ(笑)?」と出﨑監督は語られていました。ところが、自分の学生時代の先生が『エースをねらえ!2』の演出で参加しており、その先生曰く「(オレの知ってる限りでは)元々出﨑さんは“監修”クレジットのみ~現場のチーフ・ディレクターが実質監督の予定だったけど、当時出﨑さんが本腰入れるはずだった海外合作がなくなって、急に深く関われるようになったんじゃなかったかな~? で、出﨑監督が入る時には、コンテ・演出スタッフに既に声を掛け済みだったような?」と。しかし、これも何10年も前の半分うろ覚え話ゆえ、確実な証言とは言い難いのですが、先生の話どおりだとすると、出﨑監督が頭と尻の2本ずつしかコンテを担当していないことも辻褄が合うんですよ。(でもこの話、何年か前もここで話題にしたしましたよね?)
他人の描いたコンテは、特にその当時の若手が描いたアクションはアニメーションの見せ場としてちゃんと使いつつも、ドラマの核になる部分こそは徹底して直しに直す、脚本があろうと台詞まで全部——それが、出﨑流コンテチェック。
ま、何にせよ自分が初監督『BLACK CAT』において
他者の描いたコンテを監督チェックでどう処理するか? ——は出﨑監督による『エースをねらえ!2』のコンテ修正をこれまた教材にしていた!
のは言うまでもありません。
懐かしい話を想い出したところで、またコンテチェックに戻ります! 傍らに出﨑コンテを置いて。