COLUMN

第873回 原作ありかオリジナルか?

 少しだけ前回の話を、別の角度に広げて。今から35年以上昔、中学生だった俺はまだ一介のアニメファン、ならぬ出﨑(統)ファンでした。その頃、同級生に熱狂的宮崎駿崇拝者H君がおり、彼はしょっちゅうナウシカの模写をしていました。うちの妹もそうだったし、自分自身も宮崎アニメは好きでしたが、その当時発表されてた、いわゆる“宮崎作品”は『未来少年コナン』『ルパン三世 カリオストロの城』『名探偵ホームズ』『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』と計6本程ほど(1988年まで)。それに比べ出﨑統監督作品は、

『あしたのジョー』『エースをねらえ!』『ガンバの冒険』『家なき子』『宝島』『ベルサイユのばら(後半)』『あしたのジョー2』『コブラ』『ゴルゴ13』『エースをねらえ!2』他まだあり!

大半がTVシリーズというのもその特徴とは言え、ざっと数えて(1988年当時で)すでに10数本!
 え、殆ど原作もの? オリジナルじゃないからズルい? いや、

その人の監督作品が観たい俺にとって、原作ありかオリジナルか? なぞは不問!

です。じゃ、出﨑監督ほどの“ジャンルの広さ”は他の監督でいらっしゃいますか? スポーツ青春ものから少女漫画~ギャグ~世界名作文学~SF・ロボット、そしてハードボイルド・アクション……。

フィルモグラフィーのほとんどが原作ありにも関わらず、その“すべてが出﨑アニメ”!

 そして1989年以降、2011年に亡くなられるまで、劇場・TV・OVA・短編合わせて、さらに30本ほど追加されています。
 宮崎駿監督作品ファンを否定する気はありません。それどころか、自分自身も宮崎アニメ好き(特に『未来少年コナン』の影響はかなり受けている俺)ではある上で、なぜ「出﨑優先」なのか? その源は、俺の“せっかちな性格”にあるのでしょう。宮崎アニメに限らず、今日日のアニメ作家によるオリジナル新作発表サイクル(?)——数年懸けて100分前後の超クオリティ劇場作品は、せっかちな板垣にとって「ファンとして新作を楽しみに待つ」サイクルが長過ぎるんです。それに比べ、次作を楽しみに待つ出﨑アニメファンライフにおいて、年に1~2本新作が観れる幸せ!
 例えば1989年の出﨑アニメはTVスペシャル『ルパン三世 バイバイ・リバティー危機一発!』と、OVA『華星夜曲』(全4巻)と『エースをねらえ!ファイナルステージ』(全12話)! 1990年はTVスペシャル『ルパン三世 ヘミングウェイ・ペーパーの謎』とOAV『B・B』(全3巻)と『修羅之介斬魔剣~死鎌紋の男』!
 もう“総尺”は計算するまでもないでしょう。このスピードでファンに栄養補給してくださる監督でないと、俺は性分的に“飽き”ます! 宮崎アニメも実は『ハウルの動く城』以降ろくに観ていないのはそのせいです。とは言うものの、友永(和秀)師匠が久し振りに参加した『風立ちぬ』くらいはいくら何でも観なければ、と思っていますが。
 だから、“フィルムメーカーたちの新作が観たい”自分にとって、原作だ~オリジナルだ~関係ないのです。毎年とはいかないまでも、せめて最低1年おきにでも新作を発表してくださるアニメ監督、且つそれを心待ちにできた方は出﨑統監督だけでした。逆に言うと、いくら死ぬほど面白いアニメを作る監督でも、毎年新作が発表されない限り、その監督の作品をファンとして追っかけることはないのです、自分の場合は。
 故に、出﨑アニメの新作が作られなくなって早10数年——俺はもうアニメファンではなくなったのだと思います。

 で、アニメ業に戻ります。