COLUMN

第851回 『(劇)ジョー2』の魅力(1)

TV版『あしたのジョー2』のオープニング「傷だらけの栄光」と「Midnight Blues」、どちらがお好みですか?

と訊かれたとしたら、ズルいようですが、自分は「どちらもそれぞれ好き!」と答えます。
 どちらも荒木一郎作詞・作曲であるにもかかわらず方向性が全然違う! シリーズ前半OP「傷だらけの栄光」はやたらスポーティーで、後半OP「Midnight Blues」はやたらとムーディー。映像面でも同様で、前半OPは本編キャラが一切登場しないボクサーのシルエットのみで展開される非常にクールでスタイリッシュな逸品。後半OPはコートに帽子のレギュラー姿のジョーが超望遠の夕陽をバックに延々と歩き続けるメチャクチャ大人なアニメ。まだ未見の方は、是非観て下さい。板垣が「どちらも~」と言う意味が分かっていただけるかと。
 さて、先日買った、

ぴあCOMPLETE DVD BOOKシリーズの『劇場版あしたのジョー2』!

を観ました。観ましたと言っても、俺はこの『ジョー2』——手塚治虫先生が『バンビ』を観た回数の10倍回は観ています! それくらい、板垣にとってのマスターピースで、例えば、もう『ジョー2』以外のアニメがなくなったとしても正直、俺は困りません。それほど、板垣の人生に影響を与えた1981年の出﨑統監督作品!
 ご存じない方に軽く説明すると、『あしたのジョー2』はTVシリーズがバリバリ放送中なところに、ラスト“ホセ・メンドーサ戦”を先行して作画し、

前半TVシリーズの総集編+後半(公開時点では)新作+別班で音響(アフレコ・ダビング・選曲が新録)!

で構成されているのが“劇場版”になります。TVシリーズが1980年10月13日~1981年8月31日放送で、劇場版公開が1981年7月4日。つまり、2ヶ月早く“真っ白に燃え尽きるジョー”が観れたわけ。当時のリアタイ勢は7月4日公開初日に『(劇)ジョー2』を観て感動した2日後、TVでは“ハリマオ戦”の放送を観たことになります。それから最終回までの2ヶ月間は劇場版用先行作画分の間を逆に新作で埋めてレギュラー放送を全うした——それが、アニメ『あしたのジョー2』です。
 が、そんなややこしい、云わば前代未聞の“最終回先行上映スタイル”に翻弄されつつ必死に作り上げられた出﨑・杉野アニメ大作も、結局時代が過ぎて現在改めてTV・劇場の両方を見返すと、

全47話のTVシリーズと、普通にその総集編映画がある!

というだけな気が……。
 ただ!! 前回その断片だけ紹介したように“ただの総集編”にしないのが出﨑統監督の手腕!
「『ジョー2』と言ったら、TVシリーズの方でしょ!」と仰る人の方が多いかと思うのですが、こちらも、俺的には「どちらも良い!」と。
 先ずド頭0:00:06で“三協映画”のクレジットで「あ『地上最強のカラテ』!!」と俺。
0:00:10~“制作協力 東京ムービー新社”が“トムス~”になっていなくて、ホッ……。
0:00:16~対力石戦~“ダブル・クロス外れてアッパーカット炸裂!”の名シーン。『(旧)ジョー』で2回描かれた(#50吉川惣司演出回と#51崎枕(出﨑統)演出回)名場面を出﨑監督自身で3度目のアニメ化。何度観ても興奮します!
0:00:43~あ、セルバレ(画面左下)!
0:02:09~力石徹追悼テンカウントゴング。テレビシリーズではちゃんと10回フルで聴かせてカット割りのタイミングもそれに合わせてあるのに対し、劇場版の新録ではカット跨いで5回目でF.O。途中で切ることによって、“力石の死を背負ったジョーが返って来る”という直後のオープニングと相まって深みが増します。“画(カット)とタイミングをズラす”ことで、こんなに印象が変わる! 音響演出というモノの奥深さを感じるシーンです。
0:02:50~劇場版OP。前述のテレビ後半OPをベースに、テレビ#01ラスト近辺の夜の街を軽やかに舞うジョーをコラージュ・インサート。主題歌もジョー山中(「~明日への叫び」)で男臭く、やはりこれもTVとは全く違うイメージでとても良い!! 有りモノカットの編集OPとは思えない構成力で、元々劇場版でこう使うのを最初から(テレビ用OP2の)想定してコンテ切ったのかと思うほど。
0:05:36~“脚本 監督・出崎統”のクレジット。どれだけ他人の脚本を使わず“ぶっつけコンテ”で監督して来たか~を表している表記で好き! 俺の記憶ではこれ以前の出﨑監督の“脚本”クレジットは『元祖天才バカボン』#67の“脚本さきまくら”のみ(ですよね?)。

 ——て、とこでそろそろまた時間です(汗)。