COLUMN

アニメ様の『タイトル未定』
428 アニメ様日記 2023年8月6日(日)

2023年8月6日(日)
吉松さんとワイフと大塚 幸龍軒で吞む。セルフの350円缶アルコール飲料に始まり、ヤカンサワーに。沢山食べて吞む。21日ぶりの飲酒だった。
ずっと書いてきたけれど、いまだに仕上がっていないコラム。ここまでの書き方をやめて、違った感じでまとめることにする。

2023年8月7日(月)
「キン肉マン」の最新話をネットで読む。相変わらず意表を突きまくっていて面白いんだけど、マリキータマンって劇中の時間だと、つい最近に倒されたんじゃなかったっけ。と思って検索したら、やっぱり倒されたのは最近のようで、しかも、串刺しになって死んでいた。
病院Bに行く。この日は採血とCTスキャン。原稿以外の作業多くて、原稿は進まず。今週は通院が二度あるし、外出も多いので、どこかで原稿だけをやる時間を作らないと。
WOWOWの『タッチ 背番号のないエース』を録画で観た。

2023年8月8日(火)
ワイフと一緒に『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~』を鑑賞。平日昼間の割りにお客は入っていて、子連れやカップルよりも、女性単独や女性2人組が多かった。いいところもよくないところもあるけれど、プラスとマイナスを合算するとプラスだった。CGに関してはイケないところもあるけれど、「『クレヨンしんちゃん』が3DCGになった面白さ」はあった。その域に達していた。美術がよい感じで、人物の表情は改善の余地あり。巨大物と比較したロングショットの人物も見どころのひとつ。細部だけど、まつざか先生のシャツとトレパンの着こなしがよかった。
内容に関しては、今までの映画『クレヨンしんちゃん』とは似て非なるものだけれど、こういう『クレヨンしんちゃん』があってもいいとは思った。プロットと脚本については明らかに練れていないと思った。文句をつけようと思えばつけられるけれど、上にも書いたようにプラスとマイナスを合算するとプラスだった。今までの映画『クレヨンしんちゃん』よりも面白いと思った人はいるはず。

WOWOWの『タッチ2 さよならの贈り物』『タッチ3 君が通り過ぎたあとに -DON’T PASS ME BY-』を録画で観た。以下は1、2、3の感想だ。TVシリーズと同時進行で作られた『タッチ』の劇場版であり、3本とも過去にも視聴している。今回の放送は恐らくは最新のビデオマスター。配信も同じマスターかもしれないけど、配信は解像度を落としているようだし、Blu-rayソフトは出ていないはずなのでこの放送は貴重かもしれない。
『タッチ 背番号のないエース』は終盤まではいい感じなのだけれど、達也が死んだ和也の代わりにマウンドに立つ展開はかなり強引だ。90分前後で1本の映画にまとめるにはこれしかないと思うくらいの見事なアイデアだし、インパクトはあるんだけど、この展開に持っていくまでの積み重ねが必要なはず。だけど、前知識無しに映画館で観たら納得するんだろうなあ。
『タッチ2 さよならの贈り物』は3本の中では一番ラブストーリーの色、青春物の色が濃い。『背番号のないエース』は『タッチ2』があるかどうか分からないで作っているけど、『タッチ2』は『タッチ3』があるのが分かって作ってる感じ。南が達也に傘を渡すところで、観たことがないような面白いカット繋ぎがあった。面白いし、成功している。「南が甲子園に連れていって欲しいと言った」ので、達也は頑張っているのだと誤解している人がいるが、それは『タッチ2 さよならの贈り物』のせいかもしれないと思った。
『タッチ3 君が通り過ぎたあとに -DON’T PASS ME BY-』は画面で確認すると、確かにタイトルに「-DON’T PASS ME BY-」の文字がある。柏木の話(と須見工との試合)に絞り込んでいて、それゆえに見応えあり。初見時にはダイジェストのように感じて「TVシリーズのほうが面白い」と思ったはずだけど、TVシリーズと比較しなければ充分以上に面白い。新田との最後の対決は手に汗握った。ただし、試合が終わったところで本編が終わってしまうので、そこは物足りない。柏木のその後と、達也の南への告白はエンディングで、セリフ無しの画だけで表現されている。ちなみに新田の妹の由加の出番は無し。由加絡みの人間関係もなく、そのためにスッキリしているとも言えるはず。
色々と端折ってはいるけれど、90分ほどの映画3本で、劇中時間の3年分を描いて、それをまとめて観ると「3年分のドラマを描いている」と思えるのだから大したものだ。演出的なことで言うと、TVシリーズのほうが色々なことをやっていて、作品として「豊か」であるはず。
以下は余談。当たり前といえば当たり前だけど、『MIX』を観た後だと、西村と原田が若い。逆に言うと『MIX』だと見事に年をとっている。それから、この頃の原田は理性的だし、言っていることがロジカルだ。どうして、ああなった。それから『タッチ』の時に大人だったキャラクターって、『MIX』にはほとんど出ていないんだなあ。映画3本だと、南の見せ場ってあまりないんだけど、それでもやっぱり華がある。それに関しては、後のあだち充作品のヒロインは逆立ちしても敵わないのではないか。
さらに余談は続く。Wikipediaの劇場版『タッチ』3本の記述は「劇場アニメ70年史」が出典元になっているんだけど、「70年史」の劇場版『タッチ』の原稿って誰が書いたんだっけ。ひょっとして自分が書いているかもしれない。

2023年8月9日(水)
その気にならないと原稿の時間がとれないので「ここからの2時間は他のことはやらないで取材原稿のまとめをやる」と決めて、作業を始める。午後は病院Bに。先日の検査の結果を聞いた。年末の入院の後に肺炎になっていたらしい。そして、すでに治っているらしい。
「この人に話を聞きたい」の今千秋さんの回の原稿のためにYouTubeで「りぼんオリジナルアニメ」をチェックする。これは僕が知らなかった世界だ。ネット配信のみの作品で、映像中にスタッフクレジットが無いし、公式サイトも無いようなので、版権元か制作会社に問い合わせないと誰が作ったものなのかも分からない。遂にネット配信のために作られた作品について調べなくてはいけない日がやってきた。同じく「この人」原稿のために『BLEACH』15話、33話、『tactics』7話、17話を観た。インタビューで今石洋之さんの『小さな巨人ミクロマン』の影響を受けているという話が出たのだが、確かに33話は今石さんの影響らしき部分があった。
「磯光雄 ANIMATION WORKS preproduction」と「作画マニアが語るアニメ作画史 2000~2019」の見本が印刷会社から届いた。
暑いかと思ったら、雨、やたらと蒸したり、涼しくなったり。目まぐるしい一日だった。

2023年8月10日(木)
「文藝春秋」2023年9月号の本田雄さんの記事をkindleで読む。『君たちはどう生きるか』で本田さんがしっかり修正を入れたと思われる場面、本田さんが原画を描いたと思われるカットの多くが話題になっていて、その意味で満足。
渋谷TSUTAYAがCD、DVDのレンタルを終了することを知る。店頭でレンタルできる時代が終わりに近づいた。ネットレンタルはいつまで続くのか。
夕方に新文芸坐に。『マジンガーZ対デビルマン』と『マジンガーZ対暗黒大将軍』を観て、余力があったので『機動戦艦ナデシコ The prince of darkness』も観た。
「『マジンガーZ対暗黒大将軍』でグレートマジンガーに乗っていたのは不動明だった」という冗談がある。『マジンガーZ対暗黒大将軍』のグレートマジンガーのパイロットは声が田中亮一さんだし、素顔は見せないし、自分の名前を名乗っていないのだ。前作『マジンガーZ対デビルマン』で「俺でよかったらいつでも手を貸すぜ」と言った不動明がグレートマジンガーに乗って助けにきた、というわけだ。その冗談を念頭に置いて『マジンガーZ対デビルマン』と『マジンガーZ対暗黒大将軍』を連続して観ると、本当に不動明がグレートマジンガーに乗っているように見える。悪霊型戦闘獣ダンテの声が野田圭一さんだというのが、さらに事態を複雑化させている。

2023年8月11日(金)
「この人に話を聞きたい」の原稿を進めるつもりだったのだけど、他の用事が多くてあまり進めることができず。まずい。
僕の勘違いでなければサブスクにある「スーパーロボット魂」系の楽曲が減っている。これは困った。今のうちにCDを買っておいたほうがいいのか。

東映チャンネルの「Gメン’75」の19話、20話を録画で観た。19話「デカ部屋の悪霊」(脚本/高久進、新井光 監督/佐藤肇)では山田刑事(藤木悠)の弟が誘拐される。山田刑事はおそらくは40代で、弟は大学受験を控えていて、まだ少年の面影を残している。それくらい年齢が離れた兄弟もあるだろうけど、親子と言われたほうがしっくりくる。そのあたりには劇中の誰も突っ込まない。弟が誘拐された後、身代金として2000万円が必要になり、黒木警視(丹波哲郎)がその金を用意してくれる。その時のセリフが凄い。「Gメン全員の退職金を担保にしてな、警視庁から融通してもらったんだ。遠慮はいらん」。これは笑った。無茶苦茶すぎる。最後の「遠慮はいらん」も凄い。遠慮するよ。細かい見どころとしては、響圭子刑事(藤田美保子)が、山田刑事の弟をもてなすために、山田刑事のアパートにやってきて、手料理を振る舞ったこと。家庭的なところを見せることもあるのね。作った料理がオムレツ、焼肉、サラダ。料理が上手過ぎず、慣れていないわけでもない感じが絶妙だった。
20話「背番号3長島対Gメン」(脚本/池田雄一 撮影/下村和夫 監督/深作欣二)は「Gメン’75」で4本しかない深作欣二監督回の1本。サブタイトルのインパクトがかなりのものだが、勿論、Gメンと長嶋茂雄が戦うわけではなく、野球にちなんだ事件にGメンが挑む。前半にプロ野球選手の写真が何度か送られてきて、その写真に秘められた暗号をGメンが読み解くという展開があり、その部分が「Gメン’75」には珍しいコメディタッチ。推理の途中で黒木警視が昔の野球選手に関する知識を披露するのも可笑しい。「Gメン’75」ファンのサイトで「『バーディー大作戦』を思い起こさせるような」と書かれていたけれど、確かに「バーディ大作戦」だ。

2023年8月12日(土)
コミックマーケットの1日目であったが、新文芸坐でのトークが入ってしまったため、この日のコミケ会場は事務所スタッフに任せて、僕は不参加となった。新文芸坐のプログラムは「【新文芸坐×アニメスタイル vol. 162】映画館で出逢うアニメの傑作『マジンガーZ対デビルマン』『マジンガーZ対暗黒大将軍』」と「【新文芸坐×アニメスタイル vol. 163】公開25周年!『劇場版 機動戦艦ナデシコ』」の2本立て。順番としては劇場版『マジンガー』2本を上映した後に、羽原信義さんと僕のトーク。次が佐藤竜雄さんと僕のトークで、その後が『機動戦艦ナデシコ The prince of darkness』の上映だった。
いつものように新文芸坐さんに関係者席を用意してもらっていたのだけれど、8月10日(木)の上映で劇場版『マジンガー』2本は前の席で観たほうがいいことが分かったので、自分と羽原さんのために前の席のチケットを購入して、その席で鑑賞した。トークでは自分はアニメ映画史における2作の位置づけ、TVシリーズとの関係などを簡単に説明。TVシリーズでマジンガーが初めて空を飛んだ4日前に、『マジンガーZ対デビルマン』でマジンガーが飛んだと言ったところ、羽原さんから34話の予告で飛ぶことは分かっていたとナイスな突っ込み。羽原さんには主に技術的な部分を語っていただいた。『マジンガーZ対デビルマン』『マジンガーZ対暗黒大将軍』を初めて観たお客さんが半分近く。予定していた前説をやらなくてよかった。トークの間、ずっと頷き続けているベテランファンらしき女性がいて印象に残った。
『機動戦艦ナデシコ The prince of darkness』は作品未見の人は1割くらい。こちらのトークは初心に返って、劇場版を作ることになった理由、大月俊倫さんからどんなオーダーがあったのか、佐藤竜雄監督とXEBECスタッフのモチベーション等について。そして、アキトに過酷な運命を与えた理由について。当時のパンフレットやムックで話してもらえなかったことについて話してもらえた。それから「ルリが初登場時に『こんにちは』と言うのは観客に挨拶しているということでよいのか」「ルリがハーリー君と一緒に寝たのはどういうつもりだったのか。その描写の意味は」といった意外と訊いていなかった(はずの)ことについて。トークの後、佐藤竜雄監督と羽原さんと軽く呑んだ。