COLUMN

第823回 佳境は乗り越えて『いせれべ』の話(13)

 前回、“佳境”とお伝えした脚本(シナリオ)作業は無事、最終話まで書き終わりました。後は委員会チェックと原作者先生チェックをいただき、調整・修正をする流れに。もちろん、修正も自分でやります。そして、その作品はと言うと、現在制作中『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』(こちらはすでに制作発表済)より、さらに次のシリーズになりますゆえ、タイトルも内容もまだ言えません、アシカラズ。

ということで、既にお忘れかも知れませんが『いせれべ』話の続きに戻ります。

9話は田辺慎吾/脚本・コンテ・演出、作画監督/木村博美・吉田智裕!

 作監に関しては、最初から木村さんでスタートした話数ではあったものの、彼女が総作監の方で他話数の面倒を見続けていたため、原画作監を吉田君フォロー、だったと思います。
 こちらも4話同様、REVOROOTさんの原画は本当に助かりました。皆、巧い! 本話前半Aパートをまるまるやっていただき、木村作監からも(チェックの)上がりがスルスルと出ました。やっぱり、土台(原画)が巧いと作監修(キャラ修正)がやり易い、という当たり前の話。
 お風呂シーンのレンズ(画面)に着いた水滴は1987年以降の出﨑統監督OVA(『エースをねらえ!2』『華星夜曲』など)っぽくて大変気に入ってます。ちなみに自分が要望したのではありません。要は“大事な部分を隠す”手練手管の一種として載せてきた、撮影さんのファインプレーでした!
 サッカーのアクションシーンは作画をローカロリーにするため、レイアウト全修とポーズ全修を総作監としての俺が入れまくりました。“止めで持つ”ポージングを駆使した訳です。

 続いて10話。こちらも、

脚本・コンテとも板垣の方でかなり手を入れさせてもらいました、スミマセン!

まず、脚本の方で「物量的にエピソードが全て入らない」とのことで、こちらで引き取らせていただきました。確かにざっと並べただけでも、

「芸能界勧誘を断る優夜」+「ウサギ師匠登場~修行~聖VS.邪の説明~キングミスリルボアに勝つ!」+「球技大会~卓球~バレー~テニス」+「優夜と佳織のラブ下校」、そして「ユティ登場」

と、盛沢山のエピソード。でも全13話で“ユティとの対決”まで到達(製作委員会の決定)するためにはこの話数をテンポで乗り切らなければ、エピソード自体をまるまる削ることになってしまいますから。これは自分で責任を持って纏めるしかありません。
 でも最初シリーズ構成を纏めていた時、ボリューム的に多少キツイのは分かってはいたものの、

各エピソードの“面白い部分”をテンポ良く整理して繋げば1本になる!

というビジョンは自分的に見えていたので正直、脚本が難航しているのを見て「え? 何で出来ないの?」と、俺はなってしまうのです、いつも。
 例えば、ウサギ師匠との修行から巨大魔物に勝利するまでは、修行シーンの繰り返しにカットバック的に時系列を弄れば色々同時進行させられます。球技大会も卓球で“超力”を発揮したなら、同じことを繰り返しても意味がないので、バレーボールのシーンは“大爆音OFF”で通過など。

“各件(くだり)要点のトリミング”と“画面&音声の2段レイヤーを自在に操る”のが演出!

と、自分は出﨑アニメで学びました。主に『劇場版エースをねらえ!』(1979)で!
 アニメじゃなくマンガの方でも手塚治虫先生は「16ページあればなんでも描ける」と仰ってましたが、これも同様の話かと思います。だって、手塚先生の「ブラック・ジャック」16~18ページ(1話分)って、1冊の小説や2時間の長編映画にできる密度がありますから。
 次にコンテも同様のことが起こってきて、全部足すと440カット越えのコンテが上がってきて「おいおい……(汗)」と。結局、自分の方で360程? に切り直しました。

 また次週で。