2023年3月5日(日)
入院7日目。午前2時40分頃に目を覚ます。二度寝はしないで「傘寿まり子」の続きをkindleで読む。「傘寿まり子」を最終巻まで読んで、他のマンガを挟んで「大奥」を1巻から読み始める。
若い男性の先生(主治医ではない)によれば、6日(月)午前中の血液検査で結果がよければ、最速でその日の午後に退院できるそうだ。ただし、退院が7日(火)以降にズレこむ可能性あり。血中酸素を計る機器が外れた。心電図とのコードも外れた。
病室のベッドの上で「アニメスタイル017」での作業を進める。『モブサイコ100 III』の取材のおこしに手を入れて、原稿まとめを手伝ってくれる外部スタッフに渡すことができるようにする。プロダクションから借りる資料についてもまとめた。事務所で作業していると、ながら観をしたりして、適度に緊張を緩めながら進めることができるんだけど、病室だと集中してやってしまうので、休む時間を挟まないといけない。
2023年3月6日(月)
入院最終日。朝の採血の結果、この日のうちに退院することになった。数日前に主治医の先生に「切って腎臓が小さくなっているので、酒の吞みすぎ、塩分の摂り過ぎは控えて。難しいと思うけど、仕事のやり過ぎ、疲れすぎも避けてください」と言われていた。さらに退院にあたって、次の通院で傷口を塞いでいるビニールを剥がすまではやってはいけないことが記されたリストをもらう。それと「手術から最低10年は通院してください」と言われた。10年かあ。後でワイフにそれを言ったら「これから10年は生きられるってことじゃない」と妙にポジティブシンキング。
ワイフに預けていた財布を持ってきてもらい、支払いをすませる。入院前の見積もりよりも3万円も安く済んだ。あんなに凄い機材と最先端の技術で手術と治療をしてもらったのだから、見積もりのままでも充分に安かったと思う。今回の入院では術後の段取りの確かさに感心した。タクシーでマンションに戻って、荷物を整理。上でも書いたように手術の跡にはビニールが貼ってあるのだけれど、服を脱ぐと、その周りに大きな痣ができており、大変な見た目になっていた。ワイフに見せたら、嬉々として写真を撮っていた(ワイフは手術が終わった直後も、手術跡や切りとった患部の写真を熱心に撮っており、主治医の先生に「奥さん、凄く沢山写真を撮っていましたよ」と言われた)。ワイフと餃子の王将に。どうして王将にしたかというと、入院中に読んだマンガにラーメンと瓶ビールの組み合わせが出てくることが多かったのと、SNSで最近の王将が美味しいという投稿を見ていたから。だけど、入店してから気がついたけど、今の王将には瓶ビールがないのね。ラーメンも思っていたようなものではなかった。
夕方から事務所に。椅子に座ると脇腹(手術の跡)が痛いので「椅子に座ってキーボードを叩く」のに慣れるところから始めないといけない。録画で『機動戦士ガンダムNT』TVエディション、『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』、『ちびまる子ちゃん』、『サザエさん』を観る。この回からタラちゃん役が愛河里花子さんに変わったのだけど、上手いなんてものじゃない。神業だった。
2023年3月7日(火)
主治医の先生には「とにかく歩け」「ラジオ体操をやっても大丈夫」と言われているのだけれど、まだラジオ体操は無理だ。この日は歩いた距離も普段の半分くらい。近くのスーパーマーケットまで買い物に行ったのだけど、それだけでもかなり疲れた。昼食はワイフと焼肉屋のランチに。量が多いメニューを選んだこともあるけれど、食が細くなっていて、食べきることができなかった。自分が食べきれなった分をワイフに食べてもらったのは初めてかもしれない。
入院中の『うる星やつら』『お兄ちゃんはおしまい!』『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』を録画でながし観。自分も天使様に駄目人間にされている感あり。先週のTOKYO MXの『新世紀エヴァンゲリオン』『マジンガーZ』を流し観。第弐拾壱話「ネルフ、誕生」は今観ても面白い。第弐拾壱話に関してはリテイクが入ったバージョンが地上波で流れたのはこれが初めてかもしれない。TOKYO MXの『X Anime さみしいあなた』も観る。ネットアニメを地上波で流したのかと思ったら、これはCBCテレビで放映中のTVアニメで、TOKYO MXでそれをまとめて放映したということらしい。衛星劇場の『アーバンスクウェア ~琥珀の追撃~』『Spirit of Wonder』の録画も流し観。
Amazon prime videoのシネフィルWOWOW プラス で『リトル・ニモ』のパイロットが配信されているのに気づく。テレコム版も出崎監督版もある。『ルパン三世』のパイロットもあって、しかも、シネスコ版とスタンダード版の両方がある。これは便利だなあ。ずっと配信してくれるとありがたいけど。劇場版『エースをねらえ!』があるのも嬉しい。『2』『ファイナルステージ』も配信してほしい。
2023年3月8日(水)
事務所に入ってTVを点けたら、衛星劇場で『プラスチックリトル』が放映中だった。そのまま流し観した。朝の散歩でいつものコースを歩いてみる。今までの1.5倍くらいの時間がかかった。そして、普段よりも疲れた。散歩では沢山の馴染みの猫に会った。人なつっこい「なっちゃん」は手にスリスリしてくれた。しばらくキーボードを叩いてから新文芸坐に。「冬の旅」(1985・仏/105分/DCP)を観る。淡々とした映画だった。淡々とした映画だろうと思って観たので、その点では問題なし。ただ、30~50分くらい短くてもよかった。午後はデスクワーク。17時過ぎに帰宅して、早めに就寝。
取材の予習で「日本アニメ(ーター)見本市」の「POWER PLANT No.33」「ヒストリー機関」、『機動警察パトレイバーREBOOT』をBlu-rayで視聴。コメンタリーも聴いた。
2023年3月9日(木)
この日の仕事は取材の予習と、別の取材のための質問状づくりを進めた。予習のために配信で観たあるアニメの画質の低さに驚く。そんなに昔の作品ではない。スマホで観る分には問題ないけど、大きめのモニターで観るとかなり厳しい。放映やパッケージはハイビジョンで、配信用に解像度の低い動画を作り、その後もその動画で配信しているとかそんな感じかなあ。僕が気づいていないだけで、他にもそういった作品はあるのかもしれない。
ホテルの店頭で弁当三個とサラダを買って、弁当のひとつとサラダはマンションに持っていってワイフに渡す。残りの二つは自分の昼飯と夕食のために買ったのだけど、ひとつを食べて「これはカロリーが高すぎて、翌日に後悔するやつだ」と気づいて、ひとつを事務所スタッフに食べてもらうことにした。美味しくて安くていい弁当なんだけど。
朝の散歩では「ラブひな OKAZAKI COLLECTION」を聴く。これはよかった。続けてプレイリスト「はじめての岡崎律子」を聴く。
木村貴宏さんが亡くなられたことを知る。木村さんは魅力的なキャラクターを数多く生み出してきたアニメーターだ。好きな作品が何本もある。20年ほど前に「この人に話を聞きたい」で取材を申し込んだのだけれど、その時には「自分の代表作と呼べるものができたら取材を受けたい」と言って断られた。その後も、僕はいつかまとまったかたちで取材をしたいと思っていた。心よりご冥福をお祈り致します。
2023年3月10日(金)
この日の朝の散歩ではアニメ『ジョゼと虎と魚たち』サントラを、続けて実写映画「ジョゼと虎と魚たち」サントラを聴いた。午後は「この人に話を聞きたい」で金子雄司さんの取材。取材場所への移動中に取材開始が1時間ズレることが分かり、近くの喫茶店で時間を潰す。せっかく時間ができたので、改めて質問事項を書きだす。金子さんが社長を務める青写真はお洒落なスタジオだった。スタッフは手描きで背景を描いている人とPCで作業をしている人が混在。写真は室内と室外の両方で撮ったのだけど、どちらもロケーションがよくて、面白い写真になりそう。最近は言われることが多いのだけれど、金子さんにも「若い頃にアニメスタイルを読んでいました」と言われた。
この日の起床時の体重が64.1キロ。入院前が65~66キロだった。退院直後が65.1キロだったので、そこからさらに1キロ落ちた。入院中に規則正しい生活をしていたので体重が落ちやすくなっているのだろう。だけど、ここまで落とせるとは思わなかった。
2023年3月11日(土)
退院してから初のラジオ体操。飛び跳ねる運動で手術跡が痛いのは想定内だったけれど、予想以上に身体が鈍っていた。これはいかん。ちなみに散歩は毎日続けている。朝9時にいつもの床屋に行って頭を刈ってもらう。オバチャンに手術や体調のことを色々と聞かれる。床屋で鏡に映った自分の顔をマジマジと見る。いやあ、顔が変わったなあ。
13時から「第202回アニメスタイルイベント ここまで調べた片渕監督次回作14【人物の名前を覚えてもらうのは諦めました編】」を開催。今回は新潟国際アニメーション映画祭のためにコントレールが作った小冊子を配り、それについての話も。キャラクターデザインを見ながら話を進めるが、いまだに主人公が誰なのか分からない(以前のイベントで中宮定子、清少納言、もう1人の3人が主人公だという話題は出ていた)。そして、今さら、『マイマイ新子と千年の魔法』に登場した諾子(なぎこ)についての疑問が生じているという話も。トーク終了後、雑誌「アニメスタイル」の本文にアンダーラインをいっぱい引いている読者の女性が「映画的な時間と空間とはなんですか」と訊いてきた。面白い質問だったので、楽しく答えた。
録画で『異世界おじさん』最終回を観た。何かが悪いわけではないけれど、なんだか、しっくりこない。
以下は、10日(金)と11日(土)にSNSに書いた内容。
ある作品のキャラクターデザイナーによる修正原画を見た。線がカリカリしていて、そのためにエッヂが効いた印象になっている。いかにも鉛筆が走っている感じ。これこれ。「この人が描いた画」として取り上げるならこういう原画だよね。
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の原画を見ると、田中将賀さんの修正原画はふわっとした力のない線で描かれている。特にめんまの髪とか。ご本人に伺うと、自分の画の個性が分かっているので、あえて力を入れすぎないようにして描いているとのこと。そういうことが分かるのが、原画を見る楽しみでもあるわけだ。
そして、そういった原画の線の面白さは第二原画になったところで、ほとんど無くなってしまう。
作画ファンが見たいのは巧いアニメーターの巧い原画であるはずだ。そして、巧い原画がどのように描かれているかを知りたいはずだ。だから、原画展で第二原画が展示されていたり、原画集に第二原画が掲載されているのは、ほとんどの場合において意味があるとは思えない。Blu-rayソフトのブックレットで第二原画ばかりが載っているとガッカリする。勿論、原画マンが第二原画まで描いた場合は別だけれど(レイアウトを描いた原画マンが描いた第二原画は、第二原画ではなくて「原画」と呼ぶべきだと言われそうだけど、まあ、それはそれとして)。
原画展を開催する方達や、原画集を編集する方達にその辺りを分かっていただきたい。