★本文抜粋・2(2000年の一部)

沓名 『人狼』の前後で、技術的に大きな影響を与えたと思われるのが『フリクリ』(OVA・2000年)なんです。
小黒 そうなんだね。
沓名 『フリクリ』で特筆すべきなのは、『人狼』のスタイルを取り入れた平松禎史さんの描くキャラクターですよね。『彼氏彼女の事情』(TV・1998年)を観て、平松スタイルのイメージがなんとなく見えてきてはいたんです。『人狼』にどのタイミングで参加していたか、僕は分からないんですが。
小黒 『人狼』は『彼氏彼女の事情』の後だろうね。

【注】右の発言は小黒の事実誤認である。「この人に話を聞きたい」第四十八回(アニメージュ2002年 月号)で、平松禎史自身が『人狼』と『彼氏彼女の事情』は制作が同時期であり、『彼氏彼女の事情』のシワの処理は『人狼』を参考にしていると語っている。また、『彼氏彼女の事情』のデザインは『七つの海のティコ』(TV・1994年)の森川聡子の影響も濃いともコメントしている。

沓名 そうでしたか。『カレカノ』のデザインを手がけた平松さんが、それをさらにアップデートさせたのが『フリクリ』です。平松さんの色気のある画は、リアル系と美少女系の中間地点ですね。絵柄的には萌えとしても成立するようなスタイル。
小黒 一応、ツッコミを入れると『フリクリ』のキャラクターデザインは貞本義行さんで、平松さんは各話の作監なんだけど、1話を始めとした担当話数で示した作画美意識が非常に重要である、ということですね。
沓名 確かにキャラデザインは貞本さんでしたね! ついつい平松キャラデザインの作品だと思い込んでいました。でも、1話で提示された平松テイストは、作品全体にも反映されていると思います。鶴巻和哉監督がどの程度コントロールしていたのかは分からないですが、目の中の処理に特徴があります。彩色ツールのAnimoで鉛筆のタッチが見えるようにするスタイルが出てきていますね。平松さんの影響を受けた絵描きが、この後大量に出てくることになります。自分もその一人ですね。