COLUMN

アニメ様の『タイトル未定』
385 アニメ様日記 2022年10月9日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年10月9日(日)
ワイフと新文芸坐で『シチリアを征服したクマ王国の物語』(2019・仏=伊/82分/DCP/吹替版)を鑑賞。プログラムのタイトルは「親子で楽しむモーニングショー」。本編は「語り手が語っている物語」という構成で、途中で語り手が別人になったり、「その結末では満足できません」といった意味のコメントが入ったり、語り手の1人が劇中の人物を演じて、さらに劇中でその人物が成長するという「ちょっとしたメタ構造」。「物語の結末は観客に委ねます」で終わるのだけど、そこで語り手の1人が劇中人物を演じたことに意味が生じているはず。映画の構成としては展開がスピーディで澱みがない。話が二転三転するので、先を予想させない。画作りは絵画的。さらに画作りに関する引き出しの数が多いので飽きさせない。アニメーションであることに甘えず、観客と向き合って、1本の映画としての満足度を意識して制作していると感じた。吹き替えも好印象。語り手のアルメリーナ 、劇中のアルメリーナ、クマのトニオの幼少時代を演じた伊藤沙莉が素晴らしい。僕はモーニングの単独上映で観たが、前夜にオールナイト「俳優・伊藤沙莉 ブクロに狂い咲けVol. 2」の1本としても上映された。流石、新文芸坐。分かっている。
その後、池袋西口に。第23回 東京よさこいが開催中だった。ブルーシートが空いていたので、そこに座ってしばらくよさこいを見る。学生さんの演目には学生さんのよさがあるし、大人の演目には大人のよさがあった。中にはかなり中二っぽい演目もあって、それも含めて面白かった。学生さんのよさこいは、見ているこちらが彼等の青春を浴びた感じ。大人のチームに小学生の男子が参加し、大きな旗を2本振っていたのだけれど、これが圧倒的。その男子は自分達のよさこいが始まるまでの雰囲気もよくて、少年マンガに出てくる寡黙で強いキャラクターのようだった。
この日に観た新番組は『ぼっち・ざ・ろっく!』、『ブルーロック』、『限界アニメ「松山あおい物語」』season4、『弱虫ペダル LIMIT BREAK[第5期]』。『ぼっち・ざ・ろっく!』は隙のない仕上がりだった。よくできているうえに、ちゃんと面白い。2話以降も楽しみだ。

2022年10月10日(月)
前にも話題にしたはずだけど、配信の『けいおん!』について。dアニメストアとAmazon prime videoの『けいおん!』の画面比率は今でもスタンダード。解像度はおそらくSD。つまり、地上波本放映時のマスターであると思われる。4:3の『けいおん!』は今では貴重は気もするけど、それはまた別の話。当時はそんなことを感じはしなかったけれど、改めて観ると、『けいおん!』は色遣い等の自由度が低い感じだ。『響け!ユーフォニアム』も配信で観る。こちらの配信ははっきりくっきりのフルHD。当時は『響け!ユーフォニアム』の撮影について単純に「すごいすごい」と思っていたけれど、改めて観ると発展途上ゆえに頑張っている感じとも思え、今だったら感じが変わるのだろうなあとも思う。
時代劇チャンネルの『カムイ外伝』を録画で視聴。ちょっと画面がザラザラしているが、それ以外は極めて良好。セルの塗りムラまで分かる。少し驚いたのだけれど、オープニングが自分が知っている再放送版とまるで違う。「光る東芝」のインストゥルメンタルから始まって「しのびのテーマ」に変わる。最後は「東芝がカラーでお送りする忍法カムイ外伝」というナレーションが付く。Wikipediaを見ると、これは本放映版のオープニングであり、Blu-rayソフトで46年ぶりに世に出たらしい。同じくWikipediaによれば時代劇チャンネルの『カムイ外伝』はオープニングは本放送版で、エンディングは再放送版らしい。ややこしい。
この日は休みの日にしては仕事が進んだ。夕方にワイフとIKE・SUNPARKに。夕焼けを見ながら、缶のビールとハイボールを吞む。
この日に観た新番組は『夫婦以上、恋人未満。』『ピーター・グリルと賢者の時間 Super Extra[第2期]』。それから、アニメではないけど、アニコミ「女体化した僕を騎士様達がねらってます」。

2022年10月11日(火)
ストップウォッチを仕掛けて「2時間位内に終わらせるぞ」と息込んで始めた作業が1時間きっかりで終了。午後は打ち合わせで、あるアニメプロダクションに。ここに来たのは2年ぶりくらい。世間話もたっぷり。
この日に観た新番組は『BLEACH 千年血戦篇』『クールドジ男子』『永久少年 Eternal Boys』。配信で『魔法騎士レイアース』を1話から8話くらいまで観る。

2022年10月12日(水)
グランドシネマサンシャインで『君を愛したひとりの僕へ』『僕が愛したすべての君へ』を観る。予告で「僕愛から観るとちょっと切ないLOVEStory」「君愛から観ると幸せなLOVEStory」というコピーがついていて、幸せなLOVEStoryがいいと思って『君愛』から観た。『君愛』だけでもひとつの物語としてまとまっているけれど、いくつか疑問点が残るので、やはり『僕愛』が観たくなるはず。『僕愛』は単独映画として観ると、終盤の展開が唐突に思えるはずだし、まとまりはよくないはず。画作りについてはいいところもある。演出もしっかりしているところがある。『僕愛』で和音がカラオケボックスで椅子から転げ落ちるところがやたらとよかった。新海誠作品リスペクトとしては、今までの後継作品とは違ったところを攻めていた。これはプロデューサーレベルでの判断であると思われる。細田守作品リスペクトについては、リスペクトだと思わないでやっている可能性があるくらいしっくりとしていた。
『チェンソーマン』1話を観る。力の入った仕上がりで、まだ余力を残している感じ。これからの話数も楽しみ。「制作・製作 MAPPA」のクレジットが大変なインパクトだ(自社で製作費を集めているという意味)。『ヤマノススメ Next Summit』2話のエンディングは大傑作だった。エンディングに脚本があるのか、絵コンテを担当した吉成鋼さんのアドリブなのかが気になる。
改めて『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を観る。ああ、なるほど。これはハイエンドアニメだ。画作りの設計が根本的なところから違う。Netflixの『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』はフルHDと思われるが、少なくともうちの環境では効果が濃いところはきちんと再現できていない。これはBlu-rayを購入する価値があるということか。

『モノノ怪』について少し心配していたのだけれど、Twitterを見ると、和解したようだ。よかった。以下は橋本敬史さんのツイートと山本幸治さんのツイートだ。

橋本敬史さんのツイート
https://twitter.com/norider1965/status/1579734777418354688?s=20

山本幸治さんのツイート
https://twitter.com/koji8782/status/1579746370621419520?s=20

2022年10月13日(木)
12日(水)と13日(木)にSNSと社内Zoom打ち合わせで「~の手による」「~の手になる」問題を話題にした。5年に一度くらい、社内で話題になるなあ。僕は「~による」と書くようにしている。つまり、「山田一郎の手によるイラスト」とも「山田一郎の手になるイラスト」とも書かないで「山田一郎によるイラスト」と書く。
新宿ピカデリーの8時15分からの回で『劇場版ツルネ -はじまりの一射-』を<7.1ch> で鑑賞。映画前半は物語を引っぱるものが弱く、少々退屈だったのだけれど、クライマックスは(やや強引ではあるが)しっかりと盛り上がる。演出や作画に関しても、終盤は緊張感のある構図や決まった構図が連続。その意味でも楽しめた。7.1chのお陰がどうかは分からないが、矢を放った際の音は迫力もあったし、臨場感もあった。BGMに関しては一部の曲の立体感が際立っていた。紀伊國屋で本を見ようかと思ったら、まだ開店前だった。池袋まで歩いて帰る。
新番組は『恋愛フロップス』『ある朝ダミーヘッドになっていた俺クンの人生』を観る。『恋愛フロップス』は絵に描いたような明るいエロコメで、これはこれでOK。
朝の散歩時に『∀ガンダム』のサントラ1を聴いた。かなりよかった。

2022年10月14日(金)
『うる星やつら』の放映開始とともに起床。寝ないで待機していたワイフと一緒に1話を観る。基本的に好印象。キャストに関しては文句無し。ラムのキャラクターはデサインが秀逸で、色もいい。全体として原作を重視し、旧アニメも意識し、なおかつ現代的なアレンジもしている。バランスを取りまくった作品だと思った。1話のポイントは、あたるがラムのツノをつかんで「これで結婚だ~」と叫んだ後の、あたるを見つめるラムの表情と芝居だと思った。そのラムの表情と芝居で、ラムがあたるのことを好きになった瞬間を描いたのではないか。その前の「鬼さんこちら~」のセリフの辺りで、すでにラムは、あたるのことが少し好きになっている。電撃をくらったあたるが立ち上がったの見て感心して、さらに「まだまだ~」と言いながら迫ってくるところで、ちょっと好意をもって、「これで結婚だ~」と叫んだあたるを見つめている時に好きになった、という感じかな。
Blu-rayで『夜桜四重奏 ~ホシノウミ~』を観る。『ホシノウミ』って「WEB系」と「WEB系NEXT世代」の両方が参加している作品という位置づけになるのか。『ホシノウミ』『ハナノウタ』等で、りょーちもさんが育てていたアニメーターがWEB系NEXT世代になっているのか。これは頭の隅っこに入れておこう。

2022年10月15日(土)
『ワッチャプリマジ!』が最終回を迎えて、後番組はアニメではない。僕の観測範囲内で言うと、新作の女児アニメはプリキュアシリーズだけになった。
オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.139 『MEMORIES』と大友克洋のアニメーション」を開催。田中栄子さんは「昔の作品だから昔からのお客さんが多いのでしょうね」と言っていたのだけれど、実際には若いお客さんが多かった。『MEMORIES』『Manie-Manie 迷宮物語』はそれぞれ初見の方がお客さんの7割くらい。『AKIRA』でも2割か3割が初見だった。若いお客さんが多いので、片渕さんと田中さんの紹介から始めてほしいというオーダーが新文芸坐サイドからあったのだけれど、片渕さんも田中さんも紹介の途中でグイグイと話を進めるので、紹介にならなかった。だけど、問題はそれくらいで、30年近く前の作品であるにも関わらず、濃密なトークが展開。僕にとっても初耳のエピソード(当時の大友さんの高い志の話、「大砲の街」の撮影の話、田中さんが「録音がないから言うけど」と前置きしてから始めた話題など)がいくつも披露された。『MEMORIES』と『Manie-Manie 迷宮物語』は35ミリフィルムでの上映。それぞれ少しずつ上映を観たが、味わいのあるいい上映だった。