COLUMN

第633回 これからのアニメーターの在り方〜10話以降

 今回は「一部の方から怒られるのを覚悟」でいきます。以前、というか数年前(10年近く前?)、

俺は君みたいに、コンテやりたいとか監督やりたいなんて贅沢言ってないんだから! 原画だけ描ければいいのに、なんでアニメーターは食えないんだ! 業界がおかしいだろ!?

と熱弁をふるったフリーの友人。それに対して自分は

そっちのほうがよっぽど贅沢でしょ! 俺だって原画は好きだし、原画はいまだに描いているけど単価をつり上げたりしたことはない! テレコム辞めて以降、拘束とかすべて断ってきたけど、食えている! そもそも皆が思ってるほど、仕事量の割りに監督料は安いんだよ! 監督やってる時間、原画描いてても少なくとも俺の稼ぎは変わらないから! じゃ、コンテの描き方教えようか? 今やってるヤツ(監督作)1本振ろうか?

と提案すると、友人

だから俺はそうゆーんじゃないって!
原画で食えないのがおかしいんだって!

の一点張り。まあこの話はずっと以前にも書いたような気がしますが、昨今いわゆる働き方改革やら2023年インボイス制度導入などで、アニメ業界のワークスタイルも見直しが入ってきています。それにこの友人の話が多少絡むと思うのであえてもう一度。
 つまり「アニメ労働を見直せ」とお国は仰ってるわけです。その話を聞いた同年代または同年代以上のアニメ業界人(アニメーターだけでなく演出も制作陣も)は「そんなの絶対無理、アニメ作れなくなる!」と。でも自分は何事も「本当にそうかな?」と疑いを持つ主義(?)なので

ちゃんと決まった時間帯に入って、昼休憩1時間で夕〜夜に帰る、ってそんなにアニメ業界にとって悪いことなのかな?

と。まず、どのみちアニメの作り方は変えていかなきゃならないでしょ? だって単に出生率で言ったって、第2次ベビーブームの我々以降スタッフは減る一方って当たり前なのに、その反面アニメの本数は増えてるわけで。それを埋めるためにデジタル作画やCG、さらにAIを導入し、今より少人数で作品を作ることを考えないと物理的にやっていけない。なのに業界の現状はどの会社もスタッフの取り合いばかり。自分らはそこに参戦したくないので、新人の育成中心でやります。しかもそれはもう

原画だ動画だのの区切りは捨てて、「画で描かれたキャラが動く」のなら手段はなんだってよし!

に立ち返ってです。もちろん原画の基礎は教えるけど、例えばCG・撮影も併用できるように各々勉強すべきだし、ミルパンセのスタッフには

原画の仕事がいつまでも今のまま残り続けるとは思わないこと(ていうか、アニメに限らず仕事はすべてそう)! もしかしたら、CGに自分の画を貼付けたり、自らコンポジットを組んだりできるようにならなきゃならない(かもしれない)!

と言ってます。何しろ、

・人手が足りないなら足りないなりの作り方をまず考える(働ける時間が短くなるなら尚のこと)!
・稼ぎを増やしたいなら「何千、何万出さなきゃ描かない」運動をするより、テクノロジーの勉強をし、短時間で効率よくカット(動く画)を上げる努力をする(フリーならば尚のこと)!
・他社とのスタッフ引き抜き合戦なんて、長い目で見て業界人同士、首を絞め合うだけ! フリーの人なら尚のこと。ただ人手を欲しがってるだけの誘いは見分けられるようになるべし! 5〜10年後にCGのほうが効率がよくなったら、会社はすぐ手描きアニメーターを捨てますよ!

 特に2023年からのインボイス制で、会社はフリー(業務委託)として席を置いているスタッフの整理を強いられるでしょうから。冒頭の友人の話に戻ると、これは「フリーのくせに自らの不勉強を棚に上げまくってギャラが上がらない」と愚痴ってるだけ。原画だけで思った稼ぎにならないなら、もう一つ何か勉強するべきでは? 40代でも50代でも。

 で、続きの『コップクラフト』10話の話。これは本当に大変な話数でした。単純にぶっちゃけると、原画・作監を外に撒いた結果、出来が悪くて俺がアクション、木村(博美)さんがキャラ、その他芝居を中心に吉田(智裕)・斉藤(わかめ)で放映ギリまで直しまくりました。それでも間に合わなかった所はパッケージでガッツリ修正させてもらいました。中継車の中でマトバが犯人を割り出すシーンは、ホン読み(シナリオ打ち)時に削られそうになってたところ、「マトバが頭脳派でもあると見せるくだりは重要だ」と自分の提案により復活させた箇所でした。

 で、時間です。また途中ですみません!