COLUMN

第566回 リテイクのコツ

 先日「『Wake Up, Girls!』2019年3月で解散」が発表されました。自分たちは2ヶ月ほど前にプロデューサーから聞いていたのですが、WUG!さんたちとエイベックスとの話し合いはもっと前からあったそうです。プロデューサー曰く「基本的には彼女たちの意思を尊重するかたちで」とのこと。ご本人たちが決めた答えなら、それを応援するしかありません。いつまでも続けてほしい! というのはこちら側のワガママというもの。ユニットとしては解散しても声優としては続けていくわけですから、また一緒にアニメを作れたら嬉しく思います。来年3月まで頑張ってください、WUG!さんたち!!
 で、『WUG! 新章』リテイク作業も終わったところで、今回は「リテイク版」についてのお話を少々。前回説明したとおり各話200カット前後、作監・原画・動画・仕上げ・撮影、何かしら修正しました。それだけ聞くと当たり前に出てくるのが費用の問題。まず最初に断っておきますが、

リテイク用に追加の費用などは頂いておりません! そもそも費用の有無に関わらず、「全体的に直したい!」 いや直さねば!」と自分もスタッフも思ったからやったんです!!

 そうは言ってもお金はかかります。そこで社長(白石)が綿密に計算。まず基本的に、最初に頂いた制作費の中にリテイク費用はキープしておくものです。もちろんそれは放映時の通常納品のための最低限、例えば、動画の割り間違いや色パカ・撮影ミスなどを救うくらいの費用です。今作はそのリテイク費を奇しくも(?)ほぼ使わずに済みました(使う時間がなかったとも言う)。次に、なるべく内製率を高める、つまり社員にできることなら何でもやってもらう! ウチは、制作が動画・仕上げだけでなく背景の直しもやってます。もちろん社長自身も自動中割りで、動画から仕上げまで参加しました。俺も原画・動画の修正をやりました。社内の人員は何より「いつ入って、どのくらいの物量をこなしてくれるのか?」をちゃんと把握することができます。ところが、原画とかを

フリーのスーパーアニメーターにお願いすると、その方の他の仕事と仕事の合間にやってもらうことになるのでスケジュールが読めません。いつ上がるか分らないまま眠ってるカットは、ゆくゆくは演出・作監のチェックの時間をも奪ってゆき、作監の人数を増やさざるを得なくなってン10万飛ぶ

 これが現在のアニメ業界の現状。つまりどの役職においても「眠るカット×時間=制作費の無駄使い」という方程式が成り立つわけです。実はその無駄をなくせば、少ない制作費の中でも結構いろんなことができるんです。

制作費が安すぎる云々言ってる間に、まずはお金を上手く使うことがウチの会社のテーマですから!

 もちろん、本当のスーパーアニメーターは、演出チェックも作監修正も必要ないのですよ! と同時に「なんでこれでフリー? しかも自宅作業してんの?」ってアニメーターが本当に多くなってきたのも事実なんです。
 てとこで最後にパッケージ(BD)リテイクのコツ。それは

必ず「演出」から見直すこと!

間違っても監督が「ここの顔、変じゃないか? 総作監、修正入れておきたまえ〜」と修正カットを上から目線で指差すだけでは、結果、絶対に直って見えません! キャラが少々綺麗になるだけ。フィルムには一方向に流れる力学が働く宿命があるので、目線・ポーズ・芝居・カメラワークなど、すべて見直してから作監修正を入れないと、感情も流されていっちゃいます。だから、

監督(演出家)も作画スタッフと一緒の目線に立って、自らの失敗を認め新たに作打ち(作画の発注)をし、そしてちゃんと意図どおりに直されてるかどうかをしっかり確認してから初めて撮影に入れる! これ必須です!!