COLUMN

第563回 OVA大好き!

 ちょっと前になりますが、金月龍之介さん(『ユリシーズ〜ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士』のシリーズ構成・脚本)より、

「OVA(オリジナルビデオアニメ)80′S〜テープがヘッドに絡まる前に〜」
という本をいただきました! この場を借りてお礼申し上げます、ありがとうございました!

 80年代後半から90年代初頭、自分はレンタルビデオ屋に足しげく通ってOVAを借りまくりで、おそらくTVアニメよりよく観てたと思います。OVAにハマった要因は、もちろんその時期の出崎統監督作品のメインがOVAだったからで、『エースをねらえ!2』『エースをねらえ! ファイナルステージ』『1ポンドの幸福』『華星夜曲』『B.B』『修羅之介斬魔劍』『創竜伝』、もう夢中で観ました。『BLACK JACK』は正確にはOVAバブル期からは外れてて、もう東京に出てきてからコツコツお金をためてソフトを買って観てたもので、「夢中で」ってのとちょっと違うかも。
 で、話をOVAバブルの頃に戻しましょう。特に「出崎作品以外は観ない」と決めていたわけではなく、あらゆるジャンルを観ました。『妖獣都市』『魔界都市〈新宿〉』などのハードボイルドな川尻善昭監督作品、杉井ギサブロー監督による『タッチ』っぽい『のぞみウィッチィズ』とか、もちろん『機動警察パトレイバー』やその他『イクサー1』などの美少女(?)ものも。あ、あと出崎哲監督&マジックバス制作の『哭きの竜』『力王』『マッドブル34』なども楽しく観ました。『To-y』『迷宮物件』『江口寿史のなんとかなるでショ!』、挙げたらキリがないし、順番バラバラ。レンタル屋にブラ〜っと入って、気軽に手に取って借りて、自宅で菓子食いながら観る幸せ。ただ当たりハズレも大きく、酷いヤツはホントに酷い! でもその時代は当然セルでアナログ撮影だし、一説によると最ピーク時は年間200本以上出てたって話を聞いたことがあります。だからこそ有象無象入り乱れる中、アニメのピンキリが5〜6年にギュッと凝縮されたOVA作品を色々と観て、そして考えさせられたんです。「なぜこんなダメな作品が世に出たのか? これとジブリ映画の差はなんだろう?」と。数年後アニメ業界に入って、周りの先輩方に「なぜ?」と訊いてみました。理由は様々で、白黒ハッキリはしないのが常。今思うとそれは当たり前で、予算・スケジュール・人手、条件はまちまち、すべてがグチャグチャ。学生時代の、宮崎さんがどーした、高畑さんはああ言ったことだの、「俺はやっぱ押井さんみたいになるのかな〜」「俺がコンテ切ると自然と庵野さんアングルに」とかのプロごっことは訳が違うんです! 今書き出しただけでも恥ずかしい作家気取りの議論の数々なぞ、本当に役に立たない問答無用の世界、

作ってから文句を言え!

これが業界に入った時に感じたことでした。ちなみに俺自身は、宮崎・高畑・押井だ〜な議論には参加しましたが、自分をその巨匠方と重ねるようなみっともないマネは決してしませんでした。当時からその辺は分をわきまえてましたから。
 板垣が他者様作品を公で批評だ論評だしないのも、そこらが理由です。別に「言い返されたら怖い」とか「委員会に怒られるから」ではなく、はたまた謙遜などでもさらさらなく、ただただ、

自分にはまだその資格がない!

からに他なりません。本当に世の中の人が喜ぶ作品を作り上げられたなら、ほっといても周りから「○○について板垣さんはどう思います?」と感想を求められるでしょう。そうなってないってことは、当たり前の話「誰も板垣の感想・批評など知りたくない」わけですから、無理矢理ブログやTwitterでクダ巻いてもしょうがないと。それよりも作るのが先! じゃ、仕事に戻ります!