今回はアニメでなくて、マンガの話だ。
「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が連載40周年にして最終回を迎えた。僕は、連載が始まる前の読み切り版から「こち亀」を読んでいる。その後もずっと読み続けて、ムック「Kamedas」には自ら志願してライターとして参加させてもらうくらいの「こち亀」のファンだった。
「こち亀」のフィナーレは華やかだった。最終回が掲載された「週刊少年ジャンプ」は「こち亀」ポスター、「こち亀」第1話のカラー版を収録した豪華版。それと同日にコミックス最終巻(200巻)の特装版が発売。さらに翌日には「こち亀」のアニメスペシャル「THE FINAL 両津勘吉 最後の日」が放映。関連書籍も刊行され、前後してイベントも開催。連載が終わるのが寂しくないとは言わないが、そんな「こち亀」らしいお祭り騒ぎの中で完結したのが嬉しい。
「少年ジャンプ」版の最終回の中で「『少年ジャンプ』と『コミックス200巻』では『オチ』が違っています」と両津が発言しており、確認してみると確かにラスト4ページの内容がまるで違う。その後の秋本治先生によるコメントも別原稿だ。「こち亀」ならではの遊び心である。しかし、これでは最終回が載った「ジャンプ」が捨てられない。
捨てられないと言えば、今年は四年に一度しか起きない日暮熟睡男が登場する年であったが、2016年版の日暮登場エピソードは増刊の「こち亀ジャンプ」にのみ掲載。その話はコミックスに収録されないのだという。だから「こち亀ジャンプ」も捨てられない。
最終回はバラエティ番組ノリの賑やかなエピソードだった。むしろ、実質的な最終回かもしれないと思ったのが、ラス前の「永遠の腕時計の巻」だった。エピソードの前半は腕時計のウンチクで、後半、両津は擬宝珠夏春都(ぎぼしげぱると)からアンティークの腕時計をもらう。それは夏春都の亡夫が残した軍用のものだった。これからコミックスで読む人もいるだろうから具体的な事は書かないが、腕時計に関連して両津がある事をする。
「永遠の腕時計の巻」の冒頭は、擬宝珠家の庭で、両津、纏(まとい)、檸檬(れもん)が一緒にヒマワリを見る場面だ。最近ずっと両津が擬宝珠家にいるので、纏は「あいつが警官なのを忘れていた」と口にする。ラストシーンは、来年も再来年も擬宝珠家に平和な夏が来るだろうという事を予感させるものだった(この話の最終ページは、コミックスでも雑誌掲載時と同じ煽り文句が入っている)。
長い連載の中で、何人ものヒロインが登場したが、両津は彼女達の誰とも結婚しなかった。当然、彼が子どもを作る事もなかった。両津には実家もあるのだが、その実家と別に、彼は擬宝珠家という居場所を得た。擬宝珠家は両津にとって大事なものになっており、その日々は最終回の後も続くのだろう。「永遠の腕時計の巻」を読んでほろりときた。
●イラスト/吉松孝博
(2016/09/20)