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EVENT REPORT 『はじまりのみち』公開記念 映画監督・原恵一 “演出するということ”

 2013年6月8日、池袋・新文芸坐にて、オールナイトイベント「新文芸坐×アニメスタイル セレクション Vol.41 『はじまりのみち』公開記念 映画監督・原恵一 “演出するということ”」が開催された。この日の上映作品は『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』『同・嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』『Colorful』の3本。原恵一監督のドラマに対する独自の視点、揺るぎない演出スタイルが貫かれた代表作であり、その作風は初の実写作品『はじまりのみち』にも遺憾なく発揮されている。会場はほぼ満席で、「やっぱり原監督の作品は劇場で観たい」というファンのこだわりと熱気を感じさせた。
 上映前のトークショーには、原恵一監督と、『クレヨンしんちゃん』野原ひろし役でおなじみの声優・藤原啓治がゲストとして登壇。プライベートでも親交の深い2人は、若干照れくさそうに、しかし一切遠慮のない掛け合いで、客席を大いに湧かせた。
 原監督曰く「初期から『しんちゃん』を観ている方なら分かるだろうけど、父ちゃん(ひろし)の役割がどんどん大きくなっていくじゃないですか。それはやっぱり、我々スタッフが藤原さんの面白さに気づいたからです。この人をいじれば、いくらでも面白いものが出てくるなと。当時、僕にとっても野原ひろしは自分を投影しやすい、描きやすいキャラクターだった」。片や、藤原は『しんちゃん』で仕事をしていたときから、原恵一の演出を見て「きっとこの人は木下恵介とか小津安二郎の作品が好きなんだろうな」と見抜いていたそうだ。彼自身、木下恵介作品をはじめ過去の邦画を多く観ており、中でも愛してやまないのは黒澤明監督の『どですかでん』。その作品選びも、原監督の印象に強く残ったという。
 話題は多岐にわたり、藤原が『モーレツ!オトナ帝国の逆襲』の収録現場で体験した「人生でいちばん悲しかったNG」のエピソード、原監督の『はじまりのみち』撮影現場での思い出、そして「なぜか二次会から盛り上がる」原監督の酒グセの話にまで及んだ。後半では客席から質問を募り、映画『しんちゃん』で小林愛や丹波哲郎をキャスティングしたときの貴重な逸話、作品において「品を守ること」の大事さなどが、笑いを交えつつ語られた。最後はプレゼント抽選じゃんけん大会で締めくくられ、予定時間を大幅にオーバーしつつ、いつまでも聞いていたいと思わせる楽しいトークショーとなった。
 このあと上映された3作品と『はじまりのみち』を併せて観ると、また新たな発見があるだろう。そして、原監督に多大な影響を与えた日本映画の名作たちにも触れたくなる、そんな一夜だった。(岡)

新文芸坐×アニメスタイル セレクション Vol.41
『はじまりのみち』公開記念 映画監督・原恵一 “演出するということ”

開催日

2013年6月8日(土)

会場

新文芸坐(東京・池袋)

出演

原恵一、藤原啓治、小黒祐一郎(司会)

上映作品

『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』
『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』
『Colorful』

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撮影/永塚眞也