2010年は、『プリキュア』シリーズ第7作『ハートキャッチプリキュア!』が人気を博した年である。
本作では、主役を再び2人から始めて原点回帰を図る一方、SDの長峯達也の意向によりキャラデザに馬越嘉彦、シリーズ構成に山田隆司を起用して『おジャ魔女どれみ』のテイストをミックス。花やファッションをモチーフに加えたほか、かつてプリキュアだったキャラの挫折と再生を描くなど、新機軸のドラマも積極的に採り入れた。結果、本作は玩具売り上げが125億円という、現時点でのシリーズ最高の商業的成功作となっている。
2008年4月、土6から日5(日曜17時)へと移動した毎日放送のヒット枠は、しばらく過去の人気作の続編やリメイクが連続していた。本年の『STAR DRIVER 輝きのタクト』は久々の完全オリジナル企画で、榎戸洋司(シリーズ構成)、五十嵐卓哉(監督)が、得意とする舞台劇的なスタイルを駆使し、ケレン味溢れる学園ロボットものを描いて好評を得た。4月より60分2本立てとなった「ノイタミナ」枠では、実験指向の作品がこれまで以上に多く作られ始めた。湯浅政明監督は『四畳半神話大系』を持ち前の表現主義的な手法によって映像化。文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で、TVアニメとしては初の大賞を受賞した。また、UHF枠の『迷い猫 オーバーラン!』では、シリーズ監督クラスの演出家を招き、各話を競作させる試みが話題となった。
この年は、東京都がマンガやアニメの性的表現に配慮した青少年保護育成条例の改正に踏み切ったことでも業界が大きく揺れた年だった。そんななか、『Panty & Stocking with Garterbelt』『ヨスガノソラ In solitude, where we are least alone.』の2作は、セックス描写に対する大胆な姿勢を貫いた点で逆に眼を引いた。サブカルチャーが、体制への反抗によってその存在を主張してきた歴史を考えると、このことは重要である。
9月、グループ・タックが倒産。40年以上の実績を持つ元請け会社が歴史に幕を下ろすのは初めてのことだ。21世紀も10年目、TVアニメは本数の多さとは裏腹に、タックが得意としていたゴールデンタイムの作品は減少し、視聴率や表現規制との戦いで厳しい状況に置かれていた。強烈な作家性が一定の支持を得るなど文化の成熟が見られる反面、TVというメディア自体の存在意義が問われる時期に差しかかっていたのかもしれない。