2009年は、前年来の女性パワーが『けいおん!』をはじめとするいくつもの作品に象徴的に現れた年である。
京都アニメ製作の『けいおん!』は、初監督の山田尚子を筆頭に、キャラデザ・総作監を堀口悠紀子、シリーズ構成を吉田玲子が担当。内容は、軽音部に集まった4人の女子高生の部活ライフを描いたもので、空気系アニメの決定打となった。本格的な演奏シーンも話題となり、メンバーが使用するものと同じ楽器が短期間で完売するなど、社会現象化するまでに人気は拡大。また、女子部活ものが流行する大きなきっかけを作った。
“歴女”ブームの火つけ役となったゲーム『戦国 BASARA』のアニメ化は、戦国武将ゆかりの地を訪れる女性の聖地巡礼を増加させ、『忍たま 乱太郎』は、上級生キャラを大量に登場させたことで年長の女性ファンを大量に呼び込む変化を見せた。『ミラクル☆ トレイン 〜大江戸線へようこそ〜』など、擬人化作品の流行も本年から広がり始める。『プリキュア』シリーズでは、「ダンスを好きな子どもが増えている」というリサーチを受け、エンディングに3DCGを駆使したダンス映像を同年から導入。能動的な女性ファン層の存在と行動が、作品の企画内容や経済効果にはっきり影響を与えるさまが見てとれた1年であった。
この年、京都アニメは『涼宮ハルヒの憂鬱』第2期も発表したが、中盤、主人公たちが同じ時間のループに閉じ込められるエピソード「エンドレスエイト」を8週にわたって放映し、そのあまりにも近似した映像の反復が物議を醸した。一方、ライバル会社のシャフトは、人気作家・西尾維新の『化物語』をアニメ化。原作独特の洒脱な会話と、新房昭之監督ならではのシンボリックな演出が理想的に融合し、こちらも高い実験精神が目を引く1作となった。
日本テレビと読売テレビが、開局55周年と50周年を記念してコラボ製作した『ルパン三世 VS 名探偵コナン』は、異なる原作者、異なるキー局のキャラを競演させた点でTVアニメ史上画期的な試みだった。その一方、両局は月曜19時台に放映していた『名探偵コナン』『ヤッターマン』を、バラエティ番組「サプライズ」の開始に合わせ、それぞれ土曜日夕方、日曜朝へと移枠動している。2006年のフジテレビ同様、TVアニメの視聴率不振がもたらした結果であり、人気番組が必ずしも高視聴率に結びつかないという現実を物語る出来事といえた。