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第36回 1998年(平成10年)『カウボーイ ビバップ』とWOWOW、深夜枠の活性化

 1998年は『カウボーイ ビバップ』が放映開始された年である。
 OVA『MACROSS PLUS』で注目された渡辺信一郎のTV初監督作品。そのハードボイルドな物語とスタイリッシュな映像は、菅野よう子のジャズテイストあふれる音楽、川元利浩のシャープなキャラデザなどとともにアニメファンの注目を集めた。だが、金曜18時から行われたテレビ東京での放映は編成上の都合から、全26話のうち12話分をセレクトし、最後に総集編をつけて終わるという変則的なものだった。さらに、1月に栃木県で起きたバタフライナイフによる刺殺事件などの影響から、一部の映像にボカシなどの修正が加えられてしまった。“ポケモン事件”の余波もあり、この時期、地上波のTVにおける表現規制は厳しくなりつつあったのだ。
 そんな折、いち早く同作の全話完全放送を実現し、注目を浴びたのが衛星放送のWOWOWである。同局はこの年、自社製作の30分シリーズに本格参入。富野由悠季監督の『ブレンパワード』を第1弾として、アニメ枠を拡大する方針を打ち出した。その背景には、有名監督の新作や、地上波では難しい作品を放映することで、加入者数の増加を図りたいという狙いがあった。もうひとつの衛星局であるNHK衛星第2でも、CLAMP原作の『カードキャプターさくら』が、女子児童のみならず男性にもアピールする作品として人気の広がりを見せた。
 また、衛星放送と並び、TVアニメの新たな受け皿として増加し始めたのが深夜枠である。中村隆太郎監督による『serial experiments lain』は、人のつながりの不確実性を題材とした物語が、ポスト『エヴァ』時代の空気に見事にマッチ。大地丙太郎監督の『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!! マサルさん』は、極度に記号化された視覚表現がギャグアニメの新たな可能性を感じさせた。三沢伸監督の『頭文字D』は、人物のドラマシーンには2Dアニメ、車両シーンには3DCGを使い分けるという手法が斬新だった。このように、アニメファン向けの作品や実験的な試みは、地上波ゴールデン枠を脱出し、衛星や深夜へと向かう傾向にあった。
 この年の秋、1週間に放映される国産の30分アニメは、47本という過去最多の本数に達した。その一方で、『ロスト・ユニバース』第4話が未完成のまま放映されるなど、制作現場のオーバーフローも目立った年だった。

(13.04.15)リスト修正

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