SPECIAL

第35回 1997年(平成9年)『少女革命ウテナ』『ポケモン』と制作デジタル化の波

TVアニメタイトルリスト1997年

 1997年は『少女革命ウテナ』と『ポケットモンスター』が放映開始された年である。
 『エヴァ』のヒットにより到来した第2次アニメブーム。それは、同作の特徴である緻密な映像と情報量、やや難解な作劇などが引き金となり、熱心なファンや研究者、心理学者などによる分析的研究の気運を高めることにもつながった。『少女革命ウテナ』は、そんな“アニメ批評の時代”に、理想的なタイミングで登場した1作だった。制作はJ.C.STAFF。監督は『セーラームーン』シリーズで2代目SDを務めた幾原邦彦。男装の女性が主役の暗示的なストーリーに、前衛映画やアングラ演劇、宝塚歌劇などの香りが散りばめられたその内容は、年長のファンの知的好奇心を刺激するに十分な仕掛けにあふれていた。同年では、米たにヨシトモ監督の『勇者王 ガオガイガー』、ワタナベシンイチ監督の『はれときどきぶた』も話題となった。子供向けの題材ながら、その高密度な映像はやはり『エヴァ』以後のTVアニメファンが期待する情報量、批評的内容を含んだものだった。
 『ポケットモンスター』は、94年発足の新興会社OLMが制作を担当。監督は湯山邦彦、シリーズ構成は首藤剛志という『ミンキーモモ』コンビ。任天堂のゲーム用ソフトを原作とした本作は、みるみる子供たちの心を掴み、その影響は海外にまで波及した。だが、過熱する人気のなか、12月16日、第38話を観ていた視聴者約750人が体調不良を訴える事故が勃発した。マスコミはこれを大きく報道。番組は5ヶ月間、放映中断を余儀なくされ、その間にこの事故が、強い点滅などの光刺激を原因とするものであることが解明された。本件以後、「テレビを見るときは部屋を明るくして離れて見てください」といった警告が、多くの番組の冒頭で流されるようになった。
 この年は、TVアニメの技術史においても大きな転換点だった。東映動画が『ゲゲゲの 鬼太郎[第4作]』第64話を境に、セルアニメのシリーズとしては初めて、仕上以降の完全デジタル化を導入したのである。従来の作業工程(作画、仕上、撮影の分業)に適合させつつ、セルシス社が開発したソフト“RETAS! Pro”が、この改革を現実のものとした。東映動画の英断をきっかけとし、他社も次々とデジタル制作への移行を検討。21世紀初頭までの間に、『サザエさん』を除くほぼすべての制作現場から、セルやアニメ塗料が消えていくこととなった。

(13.03.26)本文修正

少女革命ウテナ Blu-ray BOX 上巻

価格:23940円(税込)
仕様:カラー/4枚組
発売元:キングレコード
Amazon

EMOTION the Best CLAMP学園探偵団 DVD-BOX

価格:15750円(税込)
仕様:カラー/6枚組
発売元:バンダイビジュアル
Amazon

ルパン三世 ワルサーP38

価格:5040円(税込)
仕様:カラー/1枚組
発売元:バップ
Amazon