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第31回 1993年(平成5年)『乱太郎』『しまじろう』など低年齢向け作品の増加

TVアニメタイトルリスト1993年

 1993年は、TVアニメ不況のなか、幼児・児童層とアニメファン向けの企画の二極化が目立った年である。
 1週間に放映される国産の30分アニメの本数は、91年春に最高値の42本を記録した後、バブル崩壊の影響を受けて急速に下降線を辿り、93年春には最低値の28本にまで落ち込んでしまった。一方、OVA市場の売り上げも頭打ち状態となり、ビデオメーカーは逆に活路を求めてTVへと参入し始める。ここに、第3次ベビーブームを想定した企画傾向が加わった結果、93年のTVアニメはみっつの様相を呈することとなった。
 ひとつ目が、前年より加速し始めた乳幼児・児童向け作品の増加である。NHKでは『忍たま 乱太郎』が、テレビせとうち・テレビ東京系列では『しましまとらの しまじろう』がスタート。前者は尼子騒兵衛が朝日小学生新聞に長期連載していた人気マンガ、後者は福武書店(後のベネッセコーポレーション)の通信教育教材に登場するキャラクターが原作であり、どちらも子供を持つ家庭にはすでにお馴染みである点が共通していた。
 ふたつ目は、低年齢層をメインターゲットに置きつつ、アニメファン層へも目配せを行った二極的な作品の試みである。正統派スーパーロボット路線に、アクの強いキャラクターとケレン味たっぷりな物語を加味した『勇者特急 マイトガイン』、デフォルメ系ロボットキャラクターに、熱いスポ根・友情のドラマをミックスした『疾風!アイアンリーガー』などがその代表例といえる。『機動戦士 Vガンダム』は、主人公の年齢やメカ設定の面では児童層を意識する傍ら、富野由悠季監督ならではのハードな人間ドラマも健在で、これまた二極性が混在する作品となった。名作劇場初の続編原作もの『若草物語 ナンとジョー先生』も、大人と子供の2人の主人公を設定し、新旧両方の視聴者を取り込もうとした点で共通した傾向のひとつととらえることができる。
 みっつ目は、TVシリーズ初の“製作委員会”方式の登場である。『無責任艦長 タイラー』は、ビデオ関連各社が出資を分担することでリスクの軽減を目指し、同時にOVA並の映像クオリティをTVに持ち込もうとした点で新時代の始まりを告げるものであった。TVをショーケースとして活用し、最終的にはビデオ販売で制作費を回収するという画期的な収支モデルだが、この方式が本格的に浸透するにはまだ数年の時が必要であった。

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