COLUMN

第278回 空バカと昭和

 最近、油断すると

と飛び出す始末。特に自分は「空手」に人並み以上の興味を抱いてるわけではありません。俺の中学生の頃からの友人が空手をやってたんですが、その友人Y君いわく「瓦は割るモンじゃない、屋根に並べるモンだ。俺はそう教わった」だそうです。つまり自分は……たぶんこれは『空バカ』に限った話じゃなく、

昭和のスポ根が大好き!!

なんです。「努力は必ず報われる」というすべての人々に勇気と安心を与えるテーマをスポーツの点数または勝ち負けで綴る単純明快なストーリー展開のいかにも高度経済成長の日本とガッツリとリンクしたドラマ……それが、昭和のスポ根。平成のそれが、各々のスポーツ独自のリアルな試合運びや、ちょっと外れた主人公(例えば体より頭を使うインテリキャラなど)が織りなす学校生活や恋愛模様であるのに対し、昭和のスポ根は主人公が熱血漢で暴れん坊の正義の味方で異性らとのチャラい恋愛よりひたすらスポーツに打ち込むストイックで汗臭い物語です。特に今回話題にしてる『空バカ』(これ以降すべてアニメ版に限ります。というのはアニメ『空バカ』は原作とかなり違うし、そもそも主人公の名前からして違うんで、その相違点にいちいち言及すると文字数食うからです!)はマジでテーマが

地上最強の空手!!

のみですから!
 戦争で生き残った(戦闘機の故障で特攻しそこなった)主人公・飛鳥拳(原作では大山倍達)がヤ○ザの用心棒から「邪道上等!」と思い出したように「空手で暮らしていく」ことを決心し、吉川英治著「宮本武蔵」に感化されて

俺は自ら求めて馬鹿になる!

と山にこもって眉を片方剃って天狗と呼ばれ、山を下りたら猛牛と闘うわ大熊と死闘を繰り広げるわ、まさに波瀾万丈の空手男! 息もつかずにあらゆる格闘技の強者たちと闘いまくる本物の馬鹿です。けど、それはよくある「昔のドラマやアニメって今観るとこんなに馬鹿だよね〜」的な茶化しではなく、俺は本心から素敵だと思ってるんだからね、念のため! なにしろ『空バカ』を語る時の俺は

な目をしてるし、ふた言めには

って叫んでるんです。つまり、自身の誠実さゆえに何度も手痛い裏切りにあい、弟子にも裏切られ、それでも一途に空手を信じ続ける飛鳥拳は真剣にカッコいいんですよ。そのカッコよさについては次週。