1971年は、神出鬼没の大泥棒が活躍する異色のアニメ『ルパン三世』が放映開始された年である。
モンキー・パンチの原作を、東京ムービーがアニメ化。キー局は在阪の読売テレビ。ピカレスクヒーローものとしても嚆矢といえる作品であり、そこには主演・山田康雄の声の魅力が大きく貢献していた。監督の大隅正秋は、作画監督の大塚康生ともに“実証主義”を提唱。これは、登場する自動車や時計などのメカニック類を、すべて実在するデザインに基づいて描こうとする姿勢であり、毎回展開する派手な仕掛けやアクションに、絶妙なリアリティを与えることに成功した。謎のヒロイン・峰不二子を中心にセクシーな見せ場もあり、夜7時30分という時間帯にしてはアダルトな内容への挑戦も見られた。ただ、視聴率的には苦戦し、低年齢向けに路線変更を迫られた大隅はこれを不服として降板。代わって、当時、東京ムービーで「長靴下のピッピ」の企画が頓挫していた高畑勲、宮崎駿の2人が監督業務の代行を務めることとなった。
この年、「宇宙猿人ゴリ」「帰ってきたウルトラマン」「仮面ライダー」がスタートし、子供番組の主流は再び特撮ものへと移行。それと入れ替わるように9月、『巨人の星』『タイガー マスク』『あしたのジョー』が放映を終了。時代を牽引した梶原アニメ3本がそろって姿を消したことは、スポ根ブームの終焉を端的に示している。特撮とアニメのシーソーゲームは、その他の番組傾向にも現れた。『ゲゲゲの鬼太郎』の続編、『国松さまの お通りだい』(『ハリスの旋風』の改題)、『新オバケのQ太郎』の3作がともに秋より始まったことは、新規の企画よりも、過去のヒット作のリメイクが安全策として局側に好まれたことを示しているからだ。
そんななか、『巨人の星』の後番組として開始された『天才 バカボン』は注目に値する。赤塚不二夫のギャグマンガを原作に、ややソフトなタッチにアレンジしながらも成功を収めた。製作とキー局は『巨人の星』『ルパン三世』と同じく東京ムービーと読売テレビ。関東のTV局が無難な企画を求めたのに対し、関西局は斬新な原作に果敢に挑む傾向があったということだろうか。同じ在阪局である朝日放送が、手塚治虫原作の性教育アニメ『ふしぎなメルモ』を放映している事実も考え併せると、この点は興味深い事実として浮かび上がってくる。
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(12.08.21)本文修正