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アニメ音楽丸かじり(121)『銀魂』シリーズ有終の美を飾る「銀魂BEST3」がリリース!

 先月下旬から今月にかけて、10月期のアニメ主題歌が続々とリリースされ始めている。今期も色々と興味深い主題歌が多いのだが、いま個人的に最も注目しているのが『機巧少女は傷つかない』のエンディング主題歌「回レ!雪月花」だ。主演声優3人による歌組雪月花(原田ひとみ、茅野愛衣、小倉唯)が歌を担当しており、CDは11月27日にリリース予定となっている。畳みかけるような早口の歌詞と、サビの「回レ回レ」の連呼はインパクト満点。『這いよれ! ニャル子さん』主題歌のように、中毒性の高い楽曲として人気が出そうだ。
 面白いのは「和テクノ」とでも言うべき独特の音楽性。バックトラックはほぼ打ち込みのみで制作されたテクノサウンドだが、随所に和楽器のサンプリングが入って楽曲を盛り上げている。よく似た音楽性だと、まず昨年放映された『偽物語』のオープニング主題歌「白金ディスコ」が挙げられよう。きゃりーぱみゅぱみゅの大ヒット曲「にんじゃりばんばん」も近い路線だと言えそうだ。また『じょしらく』がオープニング、エンディング共に和楽器を導入していた事も記憶に新しい。ここ数年でアニメ主題歌に「和テクノ」が導入される下地ができつつあるようだ。
 このような状況に至った理由は色々と考えられるが、機材の側面から見るとサンプリング音源の高品質化・低価格化が急速に進んでいることが挙げられる。かつてのサンプリングと言えば、AKAI製サンプラーの16〜128MB程度の限られたメモリ容量の中でやりくりして使っていたものだが、現在ではパソコン上で動作するソフトサンプラーが主流。容量の制約もないし、専用ハードウェアが不要なので価格は安く、音質は飛躍的に向上した。そのため容量を食いやすい民族楽器のライブラリも、質・量ともに充実してきているのだ(あくまでニッチな世界なので「1990年代に比べたら」という話だが)。
 僕も相当数の民族楽器ライブラリを使ってきたクチなので、「回レ!雪月花」でフィーチャーされていた琴、尺八、小鼓の3種の和楽器についておすすめを書いておこう。

 琴……KOTO NATION/IMPACT SOUNDWORKS
 尺八…Ethno Instruments 2/MOTU(Mark of the Unicorn)
 小鼓…KABUKI & NOH PERCUSSION/Sonica Instruments

 「回レ!雪月花」のような楽曲を制作したい! と思う方は一度お試しあれ。ちなみに、小鼓奏者による「イヨー!」という独特のかけ声は、上記の小鼓音源にも収録されているのでご安心を。

機巧少女は傷つかない エンディング主題歌「回レ!雪月花」

ZMCZ-8910/1,260円/メディアファクトリー
11月27日発売予定
Amazon

 中断を挟みつつも、今年3月で7年におよぶ長期のTVシリーズ放映を終えた『銀魂』。この作品の主題歌集「銀魂BEST3」がアニプレックスより11月27日に発売予定だ。これまでにリリースされた「銀魂BEST」が2009年、「銀魂BEST2」が2011年で、いずれも日本ゴールドディスク大賞の「アニメーション・アルバム・オブ・ザ・イヤー」を受賞している。その年のアニメ音楽を代表するヒット作として認定されている(この賞はCD売上など客観的な指標で受賞が決まる)のだから、本作にも期待が高まろうというものだ。
 CDの内容は全12曲で、いまのところ発売されるのは期間生産限定盤のみ。この限定盤には、「銀魂BEST」「銀魂BEST2」でもお馴染みのノンクレジットOP&EDを収録したDVDが付属するほか、スペシャルブックレット、特製ピンナップなどが付属する豪華仕様。2014年5月末まで生産し、その後は通常盤に切り替わる予定なので、これらの付属品が欲しい方は早めに入手すべきだろう。

 さて肝心のCDの内容だが、まずTVシリーズ第2期『銀魂’』から、オープニング主題歌の「桃源郷エイリアン」「ジレンマ」「ワンダーランド」、およびエンディング主題歌の「サムライハート(Some Like It Hot!!)」「バランスドール」「アナグラ」「仲間」と合計7曲を収録。そしてTVシリーズ第3期『銀魂’[延長戦]』から、オープニング「LET’S GO OUT」「サクラミツツキ」とエンディング「ムーンウォーク」「エクスペクト」で合計4曲を収録している。第2期の放映期間は4クール、第3期は1クールと、4年間続いた第1期に比べると短いものだったが、「ジレンマ」以降はオープニング主題歌が1クールごとに変わる仕様となったため、曲数はそれなりに揃っているのだ。そして7月から劇場公開され、観客動員100万人を突破するヒット作となった『劇場版 銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』から主題歌「現状ディストラクション」を収録。以上で全12曲の収録となっている。
 まず注目したいのは、「サムライハート(Some Like It Hot!!)」「サクラミツツキ」「現状ディストラクション」と3曲を提供したSPYAIRの存在だろう。通常のTVアニメのタイアップは、1期と2期でアーティストや作曲家に継続性を持たせるケースが多いが、『銀魂』はこれとはやや異なる。基本的にソニーミュージック系列に在籍するアーティストの中から、若手のロックバンドが交代で起用されることが多いのだ(本作の主題歌がメジャーデビュー曲というケースもある)。このため、同一アーティストが複数回起用されたのは、高橋瞳が2曲、DOESが2曲、redballoonが2曲あるのみで、短期間に3曲を担当したSPYAIRのケースが異例であることが分かるだろう。いずれもラウドなギターに、やや哀愁を帯びたボーカルメロディが乗ったサウンドで、楽曲・サウンド・技術ともに大きなスケール感を感じさせる。2012年には武道館公演も成功させており、ソニーミュージックの次代を担うアーティストという期待が、この起用に込められているのではないだろうか。
 このような起用の経緯により、『銀魂』の主題歌を担当したアーティストは、その後大きな成功を収める場合もあるが、すでに活動を終えている場合も多い。「銀色の空」のredballoon、「かさなる影」のHearts Grow、「風船ガム」のキャプテンストライダム、「奇跡」のシュノーケル、「Speed of flow」のTHE RODEO CARBURETTORは活動を休止しているし、「ウォーアイニー」のBEAT CRUSADERS、「桃源郷エイリアン」のserial TV dramaは正式に解散を表明している。特に本盤にも収録されている「桃源郷エイリアン」は、かけ声の入った歌謡調の歌メロと、和太鼓を思わせるシャッフルリズムの和風ロックで『銀魂』の世界観にピッタリ。第2期以降の顔とでも言うべき楽曲だっただけに、バンドの解散は実に残念なことだ。しかしながら、リーダーでギター担当の新井弘毅は、その後プロデューサーに転身。アニメ主題歌でもお馴染みの藍井エイルやkyleeの楽曲にも参加しているので、我々は今後も彼のサウンドを聞く機会があるはずだ。

 TVシリーズも終了し、劇場版も『完結篇』と謳っている以上、『銀魂』のメディア展開が終息に向かっているのは間違いないだろう。主題歌集のリリースも、恐らくはこの「銀魂BEST3」が最後になるはずだ。長い間視聴者を大いに楽しませてくれた番組だけに、なんとも寂しい限りではある。しかしながら、『銀魂』はいまだにTVシリーズのBDがリリースされていない作品であり、今後BOXなどの商品展開があるかもしれない。まずはそれに期待しつつ、12月18日に迫った『劇場版 銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』のBD・DVDの発売を待ちたいところだ。
 そしてその劇場版BD・DVD、本盤「銀魂BEST3」、今年6月に両国国技館で行われたイベントを映像化した「劇場版銀魂 銀幕前夜祭り2013」DVDの3種の商品を購入することにより、応募者全員に「銀魂 メモリアル・ファンディスク」がプレゼントされるとのこと。非売品なのでファンとしては是非押さえておきたいところだ。詳しくはアニプレックス公式HPを参照してほしい。

銀魂BEST3

期間生産限定盤:SVWC-7959/3,675円/アニプレックス
11月27日発売予定
Amazon