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宮崎駿監督『風立ちぬ』の主役声優に庵野秀明監督が挑戦

7月20日公開の宮崎駿監督最新作『風立ちぬ』の主役・堀越二郎を、庵野秀明監督が演じることが発表された。起用の経緯、庵野監督と鈴木敏夫プロデューサーのコメントは以下のリリースの通りだ。

●『風立ちぬ』公式サイト
http://kazetachinu.jp/

※以下、リリースより抜粋して掲載


7月20日公開のスタジオジブリ最新作『風立ちぬ』。5年ぶりに宮崎駿監督が描くのは一人の青年技師“堀越二郎”の半生の物語です。主人公のモデルとなったのは後に神話と化した零戦を設計した堀越二郎と、同時代を生きた文学者、堀辰雄。この2人の人生を融合させ、技師としての生き方や薄幸の少女菜穂子との出会いなどを、完全フィクションとして描いていきます。

この度、その主人公“二郎”の声優に、あの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの監督として有名な庵野秀明さんに決定いたしました。

主人公には“(1)早口である(2)滑舌がよい(3)凛としている”をイメージしていた宮崎駿監督。適任者を探し会議を重ねる中で、鈴木敏夫プロデューサーから庵野さんの名前が候補にあがりました。1984年公開の『風の谷のナウシカ』で巨神兵シーンを描いて以来、宮崎監督を師と仰ぐ庵野さん。声優と聞き「最初から断ることはできない」とオーディションに参加しました。そして、声を聞いた宮崎監督から満面の笑みで「やって」と直々の依頼があり初の主人公役声優に挑戦することになったのです。

スタジオジブリにて4月中旬から始まったアフレコ収録の序盤では、「難しい」を連発した庵野さん。そのため通常は離れたブースから指示を出す宮崎監督がスタジオに降り、庵野さんの真後ろから声をかける形でアフレコはスタートしました。宮崎監督から「うまくやろうとしなくていい。いい声だからでなく、存在感で選んだのだから、それを出さなくてはならない」とのアドバイスが出されました。その一言を聞いた庵野さんは外国語や声を張るシーン等にも果敢に取り組み、人を背負うシーンでは実際に手を後ろに回して声を出すなど、体も動かしながら調子をつかんでいきました。また同じセリフを、リズムを変えて何度も繰り返しながら「この練習部分も(録音を)回しておいてくださいね」とお願いしたり、「今の中で使えるものがあると思います」と自分でOKを出したりするなど、日ごろは演出をつける“監督”らしいコメントが随所に飛び出し、宮崎監督は「監督が二人いるみたいでややこしいな」と笑う場面も見受けられました。

そのほか宮崎監督からは、主人公の半生を描くゆえに年齢が変化していく様子を「まずは20代、語尾を上げ、明るく高い声で」と指示が出されたり、二郎が冷静にみんなを諭すシーンでは「三船敏郎のように」と注文が出されたりしていました。4日間に渡ったアフレコ収録を通じ“二郎”という役どころをすっかり掴んだ様子で、ヒロインとの愛をささやくシーンにいたっては現場に居合わせた全員が息をのむほどの完成度の高さを見せての一発OK。宮崎監督の満足の笑みが光る現場となりました。

本年は宮崎駿監督と高畑勲監督というスタジオジブリが誇る二大監督の作品が同年公開される奇跡の年。そこに、ジブリ映画の原点である『風の谷のナウシカ』を知る庵野秀明さんが加わるという更なる奇跡が重なり、2013年の“ジブリイヤー”の勢いは更に加速度を増していきます。以下、庵野さんのコメントと鈴木敏夫プロデューサーによる起用理由です。

堀越二郎役:庵野秀明さんのコメント

 突然ある日、鈴木(敏夫)さんから「二郎の声をやってほしい」と電話がかかってきました。“まぁ無理だろう”と思いましたが、無理とはいえ宮さん(宮崎駿)から是非にということでしたし、まずはオーディションをして本当にいけるかどうか確認してみようということになりました。オーディションが終わると、しばらく見たことないくらいニコニコと満面の笑みの宮さんに「やって」と言われまして、“これはやるしかないんだろうな”と思ったのが正直なところです。できるかどうかは別にして、やれることはやりますけれど、そこまでです、ということで引き受けました。ダメだったときは、僕を選んだ鈴木さんと宮さんが悪いんです(笑)。といいつつも、頑張ります。
 主役は初めてなので、シーンが多すぎてどこも大変だなあという印象です。もともと宮さんにオーディションで言われたのが「寡黙な男でセリフはそんなにないから」ということで。それを信じて引き受けたのですが、絵コンテ見たらびっくりですよ。ずっとしゃべりっぱなしだし、歌はあるわ、フランス語もドイツ語もあるわで、完全にだまされた! って感じです(笑)。役作りは、素人なのでやっても無駄ですから、意図してやっていません。素のままぶつけて宮崎さんが気に入ればいいし、違えば直していこうと思っていました。役柄についてはあまり説明がなく、注文もそんなにありませんでした。アフレコ2日目くらいから、宮崎さんがニコニコと、とても喜んでいる様子で。それだけでよかったなと思います。
 この映画の中に出てくる堀越二郎さんと僕自身が共通するのは“夢を形にしていく”仕事をしているところだと思います。そこはすごくわかるし、自分の実生活にも通じるところがあります。素の自分のままアフレコをやったところを宮さんが喜んでいたので、やっぱりそうなんだなと。アニメや映画を作るということと飛行機を作るということは、作るものは違えども、夢を形にすることは同じ仕事なのだと強く思いますね。
 2時間を超える長編をつくるというのは、体力的にも精神的にも本当に大変な作業です。ラストシーンは、正直感動しました。

鈴木敏夫プロデューサーによる起用理由

 役者さんでは演じることのできない存在感です。映画を設計する監督と飛行機の設計士、作るものは違うが共通点もあると思いました。こじつけですが(笑)。