COLUMN

アニメ様の『タイトル未定』
388 アニメ様日記 2022年10月30日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年10月30日(日)
トークイベント「第196回アニメスタイルイベント 夏目真悟と仲間達」を開催。賑やかで楽しいイベントになった。夏目真悟さんはプロになる前にアニメスタイルイベントにお客さんとして来ていて、12年前の新人演出家時代に「第57回アニメスタイルイベント 四畳半神話大系を語る会」 に出演。この日のイベントには監督として出演。他にも学生時代、あるいは新人時代にアニメスタイルイベントにお客さんとして来ていて、この日のイベントに出演した方が何人かいたらしい。
朝の散歩時には『ACCA13区監察課』と『四畳半タイムマシンブルース』のサントラを聴いた。

2022年10月31日(月)
新幹線で名古屋に。ジブリパークのオープニングセレモニーと内覧会に参加する。東京ではなかなか会えない人達に会うことができるのはマチアソビと同じだ。「ジブリの大倉庫」は館内の構造が複雑で、ウロウロと歩き回るのが楽しい。館内に書店や模型店があるのも面白かったし、ジブリ美術館の短編アニメが上映されているのも嬉しい。「ジブリの大倉庫企画展示」として「食べるを描く。増補改訂版」が開催されていた。僕の勘違いでなければ、ジブリ美術館でやった時よりも原動画の展示が増えていた。展示されている原動画はジブリ作品の食べ物に関するカットで、どのようにカットが作られているのかが分かるようになっていた。例えば、アジフライを揚げるカットの中割りの指示がよかった。こういう資料が載っている本をジブリに出してもらいたい。「どんどこ森」は「ジブリの大倉庫」からかなり歩くののも、「どんどこ森」そのものも新鮮だった。「サツキとメイの家」も凝っていて楽しめた。
オープニングセレモニーの後に高橋望さんと話し込んでいたら、背広姿の男性が声をかけてきた。会社員風の人物である。年齢はわからないが、僕や高橋さんよりは若いだろう。彼は僕達が座っている辺りを指さして「そこにまっくろくろすけはいませんか」と言った。念のため、立ち上がってベンチを見たけれど、それらしいものはない。彼は近くにいた他の人にもまっくろくろすけについて聞いていた。おかしいなあ、どうしていないんだろうという様子だった。

2022年11月1日(火)
時間を調整して映画に行けないかと思っていたけれど、なんだかんだで用事があったのと、日曜夜がイベントで月曜が朝から名古屋行きだったので、早めに就寝するために映画は延期。
この数日の深夜アニメを片っ端から再生。それから、Netflixで『ロマンティック・キラー 』を観る。朝の散歩では『魔女の宅急便』と『となりのトトロ』のサントラを聴く。『魔女の宅急便』の曲ってこんな感じだったっけ。

SNSのやりとりでジブリパーク内に「隠しまっくろくろすけ」が仕掛けられていることを教えてもらう。31日(月)のオープニングセレモニーで「まっくろくろすけはいませんか」と言った男性はそれを探していたのだ。変わった人ではなかった。むしろ、僕や高橋さんよりもジブリパークに詳しい人だったのだ。

2022年11月2日(水)
『ヤマノススメ Next Summit』5話を観る。松本憲生さん作画のAパートが素晴らしい出来だった。「画」が巧くて「動き」もよくて、しかも「芝居」がいい。どこまでが演出なのか分からないが、松本さんが「キャラクター表現」に踏み込んでいるのではないかと想像した。Bパート、エンディングを含めて大充実の話数だった。『ヤマノススメ Next Summit』がオール新作話数に入ったことで「2022年秋のスーパー作画大戦」が本格化した印象だ。
新文芸坐で「ボイリング・ポイント/沸騰」(2021・英/95分/DCP/PG12)を鑑賞。プログラム「厨房はスリリング! 思惑と事件が交錯する夜」の1本。あまり楽しめなかった。ええ~、ここで終わり? という感じ。レストランのスタッフ達が主人公で複数の事件が同時進行で進んで、クライマックスでそれらが解決するとか、そういう映画だと思っていた。キャッチコピーに「90分驚異のワンショット」とあって、実際にその通りなんだけど、それで緊張感とか没入感があるかというと、自分としてはそうでもなかった。
朝の散歩とその後で『ちはやふる』サントラ1、2、『ちはやふる2』サントラを聴く。

2022年11月3日(木)
朝の散歩時には『リトルウィッチアカデミア』のサントラを聴く。3時間27分もあって、最後まではたどりつかなかった。

スタジオバードの作画担当回をチェックするために、TV『銀河鉄道999』を配信でチェックしているのだけれど、個々の話がびっくりするくらい面白い。そのうちの1本が49話「これからの星」(脚本/藤川桂介、演出/葛西治)だ。のんびりした話で、悪人がひとりも出てこない。その星の人達は貧しいけれど、皆が元気であり、よく働く。鉄郎達の荷物と999号のパスが行方不明になり、鉄郎は一度は星の人達を疑うが、発車直前に旅館の夫婦が持ってきてくれる。町の人達が総出で荷物とパスを探してくれたのだ。鉄郎がパスを使って999号に乗ろうとは思わなかったのかと尋ねると、そんなものは欲しくないと彼らは答える。働けばいつかは買える、ここには他人のものを欲しがる人なんていないのだと言うのだった。ポジティブに、そして、しみじみとした読後感をもってこのエピソードは幕を下ろす。気になって原作をチェックしてみると、大筋はほぼ原作どおり。詰め込みすぎない物語構成と、オーソドックスな演出の勝利か。
原作からの大きな変更はメインのゲストである宿の父娘の設定で、原作では父娘だった2人がアニメでは中年の旦那と美人の奥さんになっている(多分、奥さんはかなり若い。そう思うのは後述するキャストのためだ)。娘(奥さん)が「風呂に入らないとインキンになります」と言って鉄郎に入浴を勧めたり、デッキブラシで鉄郎の身体をゴシゴシ洗うという展開があり、そこは娘のままのほうが色気があったかもしれないが、夫婦が未来を信じて働いていることにしたために、テーマがよりくっきりしたと思う。宿の主人を演じているのが八奈見乗児さん、奥さん(名前は奈美)を演じているのが小山まみさん(テロップでは「まみ」がひらがな)で、小山さんの奈美がよい。この話が成功している理由のひとつがこのキャストだろう。
このエピソードで語られている「未来を信じている元気で大らかな人達」というのは、戦後のある時期の日本人のことで、原作やTV『銀河鉄道999』の頃には少し前の時代の人達だった。今観ると、おとぎ話のようないい時代に思える。当時もこのエピソードを観ているはずだけど、まったく記憶に残っていないので、多分、地味な話だなあと思ったのだろう。
1995年か96年の夕方にTV『銀河鉄道999』の再放送があり、一緒に仕事をしていた友達と「面白いね」と言い合ったのを覚えているけど、今の目で観てもやはり面白い。本放送当時も楽しく観ていたのだけれど、今の方が作品が熟成されている感がある。

2022年11月4日(金)
以下はTwitterに書いた内容。最近のマニア目線の作画語りだと、なかむらたかしさんに始まって『AKIRA』『御先祖様万々歳!』『THE八犬伝』と続く、リアル作画の流れが話題になることが多いけれど、1980年代前半当時に多くの作画マニアが熱中していたのは金田伊功さん、そして、山下将仁さん、越智一裕さん達の仕事、あるいは金田さん達の影響を受けたアクションアニメーターの仕事だった。それと板野一郎さんとその影響を受けたメカアニメーターの方々の仕事にも注目が集まっていた。1980年代前半のアクション作画が、現在の作画語りにおいて「空白期間」になっている気がする。

『恋愛フロップス』4話。イリーナが股間に天狗のお面をつけて男風呂に入る展開が大変オゲレツで愉快だった。ながら観で感想を書いて申し訳ないけれど、『夫婦以上、恋人未満。』の4話の演出がやたらとこなれていた印象だ。 絵コンテ・演出は内沼菜摘さん。

『王立宇宙軍 オネアミスの翼』 4Kリマスター版をグランドシネマサンシャインのBESTIA enhanced で鑑賞。音響に関しては「おっ」と驚くくらい音が響いている箇所があった。映像は全体に鮮明。ただし、これは『王立宇宙軍』に限ったことではなく、『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』や『ルパン三世 カリオストロの城』もそうだったのだが、リマスターして映像が鮮明になったため、動画の粗いカットがより目立つようになっている。それから、セル、背景のそれぞれの質感が際立って、セルと背景のマッチングの印象がフィルムと変わっている。

朝の散歩で『シドニアの騎士 あいつむぐほし』のサントラを聴く。同TVシリーズのサントラ1も途中まで聴く。

2022年11月5日(土)
以下はTwitterに書いた内容。『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』のTV放送版が最終回を迎えた。改めて思ったのだけれど、この作品はアニメーションとして「豊か」だ。内容に大らかさがあり、よく動いているだけでなく、芝居やキャラクターデザインにも「豊かさ」がある。「豊かさ」に関しては線の太さも重要だと感じた。勿論、線が太ければ「豊か」になるというわけではなく、何を描くか、どう描くかということと線の太さがリンクしているのだろう。アニメーションとして「豊か」であり、狭義の「アニメ」的な魅力もたっぷりのところが素晴らしい。