COLUMN

アニメ様の『タイトル未定』
360 アニメ様日記 2022年4月17日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年4月17日(日)
『BECK』等を監督された故・小林治さんのTwitterアカウントで新しいツイートがあった。「こんばんは 今日は命日、1年は早いなぁ…」で始まるテキストだ。ご本人が生前に書いたものなのか、誰かが小林さん風にツイートしたものなのかは分からないけれど、小林さんらしい遊び心だと思った。小林さんが手がけていた作品の制作を、他の方達が進めているらしい。
https://twitter.com/animesama/status/1515638622128640005

午後に新文芸坐で「地獄の黙示録 ファイナル・カット」を観るつもりだったが、やたらと眠たくて映画は無理そうなので諦める。代わりに遠出をして散歩。南千住に始まり、隅田川、荒川を経由して北千住まで歩く。散歩のガイド本「東京 自然を楽しむウォーキング」にあったコースだ。街、川沿い、土手を歩くことができて楽しめた。この散歩には大満足。さすが、プロが作った散歩コースはよくできているなあ。

2022年4月18日(月)
仕事の合間に、グランドシネマサンシャインで「フラッシュダンス」4Kデジタルリマスター【字幕版】を観る。クライマックスのダンスシーンは公開当時、ミュージッククリップとして何度も観たし、「フラッシュダンス」のパロディや影響を受けた作品も沢山観た。ではあるけれど、本編を観るのはこれが初めて。才能はあるけれど、チャンスに恵まれない女性がようやくダンスのテストを受けることができて……という話かと思っていたけど、微妙に違っていた。主演のジェニファー・ビールスがとにかく魅力的で、最後のダンスはやっぱり素晴らしい。事前情報無しで観たら、感銘を受けたに違いない。ラスト以外も「いい画」がいくつもあった。ドラマは薄口ではあるけれど、それも含めて、あの時代の空気が濃密だった。観ている間、店の太った親父の声を、頭の中で富田耕生さんで再生していたのだけど、事務所に戻ってネットで吹き替え版のキャストを確認したらやっぱり、富田耕生さんだった。

『SPY×FAMILY』のオープニングはいかにも石浜真史さんらしい部分、新境地の部分(あるいは石浜さんが担当アニメーターに任せたと思しき部分)があって、それも面白い。

2022年4月19日(火)
TOHOシネマズ池袋で『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』を観る。中盤までは「うむむ」という感じだったけれど、クライマックスは面白かったし、意外と映画的な作品だった。TV最終回の後の追加の部分は白川さんファンとしては嬉しかった。これこれって感じ。

2022年4月20日(水)
『マモー編』の北米版Blu-rayに絵コンテが全編収録されていると知り、Amazonで注文する。気になるのは、コンテ初期稿にあったはずの「銭形が寺男になっている場面」「古本屋の男が登場する場面」が残っているかだ。

2022年4月21日(木)
進行中の書籍も、他の件も少しずつ進んでいるのだけど、進みが遅いので「仕事をしているぞ」という感じにならない。

新文芸坐で「野良犬 4Kデジタルリマスター版」を観る。プログラム「新文芸坐リニューアルオープン記念 4Kで甦る黒澤明」の1本だ。今回のプログラムで「野良犬」を選んだのは、新文芸坐の黒澤作品定番の中で唯一観ていなかったタイトルだったため。映画としては前半は惚れ惚れするほど「ちゃんと」している。後半もよくできている。今回の上映に関しては映像が大変にシャープ。70年以上前の映画とは思えないほどだ。音響については、佐藤刑事の自宅シーンでのカエルの鳴き声の臨場感が大変なことになっていた。作り手もあそこまでの臨場感は期待していなかったのではないか。

Twitterで、大平晋也さんが「アニメスタイル016」の中村豊さんの特集を参考にして、取り上げたエピソードを全て配信で観たらしいことを知る。担当パートの秒数を入れてよかった。
https://twitter.com/promax225/status/1516951433291374592?s

以下は『オッドタクシー』のリアリティレベルについて思ったこと。考えとしてはまとまっていないけれど、ここで書いておかないと忘れてしまいそうなので記しておく。もしも、インタビュー記事などで、似た内容が話題になっていたらごめんなさい。
看護婦の白川さんがダイエットのためにカポエラをやっていて、そのカポエラの技で敵を倒す展開がある。これって小戸川がセイウチで、白川さんがアルパカ。つまり、動物が立って歩いて、喋っている世界だから「そのくらいのことはあるかもしれない」と思える。白川さんが最初から人間姿で登場していて、カポエラの技で敵を倒したら「そりゃあ、ないだろう」となる。実写のドラマで女優さんがやったらギャグだ。うら若き、そして、美人の白川さんが、偏屈な小戸川のことを好きになるのも、彼女がアルパカで小戸川がセイウチなら「まあ、あるかな」と思うけれど、最初から2人が人間の姿だったら「どうしてあいつのことを好きになるわけ?」と思ったかもしれない。
最初にリアリティレベルと書いたけれど、実はリアリティレベルは変わっていないのかもしれない。作劇のトーンは同じだし、画面の奥行きや物理現象に対するアプローチが変わったわけではない。むしろ、こちらが先入観で「動物が主人公だから、多少、変なことが起きてもおかしくないかも」と思っていただけなのではないか。その先入観を巧みに作劇に使っているのではないか。
『オッドタクシー』のリアリティレベル、あるいはリアリティに対する思い込みは他にも面白いところがあると思うのだけれど、それについては『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』を観返した時に。

2022年4月22日(金)
『カードキャプターさくら』で、衣装設定や各話設定が版権イラスト(版権イラストという言葉はなるべく使わないようにしているのだけれど、ここはあえて版権イラストと表記する)のように丁寧に描かれているのは番組最後の「ケロちゃんにおまかせ」のコーナーで使われる可能性があったからではないかと気づく。ところで、22話の「ケロちゃんにおまかせ」では、さくらと知世の体操服の設定が使われているのだけれど、線画設定では目をつぶっているさくらと知世が「ケロちゃんにおまかせ」では目をあけている。社内Zoom打ち合わせで、そのことを話したら、「テレビアニメーション カードキャプターさくら アーカイブス」の構成を担当しているスタッフに「たまに設定と細部が変わっていることがありますよね」と軽く言われる。既に気がついていたか。

2022年4月23日(土)
昼の散歩では天王洲アイル駅から天王洲運河沿いに進んで、レインボーブリッジ遊歩道を踏破した後に、青梅駅まで歩いた。ムック「歩いて再発見! 東京8000歩さんぽ」にあったコースだ。新橋で軽く食事をして池袋に。事務所でキーボードを叩く。
マンガ「膳所くんと長浜さん」2巻をKindleで読了。完結してしまった。いや、設定的には2冊くらいでちょうどいいんだろうけど、潔いなあ。