COLUMN

第759回 人間の旬は過ぎた

40代がそろそろ終わりに近づきつつあります!

そして今、社内の若手に対して「ああ~これが若い頃の自分に、当時の先輩方が抱いたと思われる感情なのだ……」と考える様になった、歳食った自分がいます。つまり、現在の板垣は、自分に原画を教えてくださってた頃の友永(和秀)師匠と同年代なのです。
 若い世代とのやり取りは、それ自体、毎日が勉強。若手にムカつくことがあった時などは、一瞬踏み止まり——

多分、友永さんも25年前の俺に同じくムカついたことがあるはず!

と考えれば、いちいち怒らず「仕方ないか、昔の自分もこうだったしな〜次に期待しよう」と許せるようになりました。期待を裏切られたり、仕事から逃げられた時とかも同様です。

50代に近づいて、ようやく“相手を許す”ことができるようになりつつある板垣です!

 そんな心境でYouTubeをダラ観してると、「ああ言われたら、こう言い返した~」だ「誹謗中傷! 訴えてやる!」だと、自分より10以上若いYouTuberさんらが過激な発言などで賑わしているのとかが目について複雑な気持ちになります。ま、ここで俺、説教するつもりは毛頭なく、前述同様「この連載で自分も若い頃、色々世間に唾棄してたもんな~」とも思うし、誰でも世間に言いたいことはあるだろうし、誰でも程々に言ってもよいかと思います。あくまで、“程々に”です。

しかし、若い頃——と言えるくらい無駄に長期連載であることに今更ながら驚き、呆れます……

 やっぱり、人間の旬は20~30代だと思います。その時期は誰もが元気で、仕事も遊びもとにかく楽しくて、たくさんの物事に怒り、様々なことを真剣に考え、幾人の友人と大笑いするものです。
 そういう板垣も20代の頃は、語り合える友人らと「宮崎駿作品・高畑勲作品、そしてスタジオ・ジブリの未来」とか「押井守監督&Production.I.Gに於ける数々の問題作」についてとか、何を偉そうにと、今振り返ってもとても恥ずかしいことを肴に朝まで語り明かしたものでした。本当に恥ずかしい! でも、その当時は最先端の本気だったし、本当に楽しい宝物のような時間だったんです。
 だから、ウチの若手に限らず、世間にモノ申したい20~30代の方々、“旬”を存分に楽しんでください! その旬の時期に成果を残せると、40~50代で“もう一段上のステージの旬”を味わえるのではないでしょうか?
 ま、このコラム連載からも読み取れる(?)ように、その人間の旬を過ぎた現在の俺は、コ●ナ禍関係なく飲み会とかも自らの意思でほぼしなくなったし、これからは今いる自分の立場でできる作品作りに没頭したいと思っています。その現場から、新しい監督を生み出すお手伝いができたら——それが今回、“総監督”の目的の一つでもあります。

これまでの人生で、今が一番“穏やかな心境”なのかも知れません!