COLUMN

第747回 観なくてもよくないですか?

年々、無欲の度が増している気がします!

 それは良いことなのか? 悪いことなのか? こないだカミングアウトしたとおり、アニメ業界人としての必須科目的アニメも、バシバシ観逃している板垣です。別にどんな職種でもよく言われる、“「好き」を仕事にすると「嫌い」になる”的な贅沢な不幸話ではありません。それで言うなら俺、マンガ読むのも、アニメ観るのも、ゲームやるのも、好きで好きでのめり込んだことなんてほぼありませんから。むしろ多分、

それらを観た人・やった人の話を聞く方が好きなんです!

 エンタメ自体を己で楽しむことに意味を感じていなくて、“そのエンタメを味わった人が何を感じたのか?”にこそ興味があるのです。だから俺の場合アニメの“感想”は言っても、“批評”らしいことは自分発で言うことが殆ど皆無なんです。Twitterも自分ではやらないけど、他人の発信を見るのは嫌いじゃないんです。「あ、世の中こんなこと考える人が増えたんだ~」と。
 今頃気付くことじゃないかも知れないけれど、恐らく「客観視点」で生きてきたし、これからもそう生きたいと思ってるんでしょう。でも、何かを作る時だけ「主観人間」になりたい、と。

 で、この前の日曜日——

ホント、久っ々に(コ●ナ禍以降初めて?)、BOOKOFFにて中古Blu-rayを買い漁りました!

 自分、やっぱり映画・アニメはレンタルとか配信とかより、ソフトとして実物が欲しい人間なので、BOOKOFFで「今晩何買って観ようかな~」と店内散策するのが至福の時なんです! まず手に取ったのは「八甲田山」(1977年)。木村大作撮影監督の監修による4Kリマスター版(前に買ったDVD版は画質が酷かったので今回Blu-rayで買い直し)。脚本/プロデューサー・橋本忍、森谷司郎監督作品。森谷監督と言えば、黒澤明監督ファンの皆さんならご存知、「用心棒」「椿三十郎」「天国と地獄」などの黒澤映画の黄金期を支えた名助監督! 監督作品としては、本作同様に大ヒットした「日本沈没」(1973年)ももちろん有名ですが、個人的には「小説吉田学校」(1983年、残念ながら遺作)が好き! で、「八甲田山」は自分が3歳の時の映画。当然、TV放送などで知ってた程度。我々世代にとって本作以外にも「二百三高地」(1980年)や「連合艦隊」(1981年)といった全尺2.5~3時間に及ぶ超大作は“TVで好きなレギュラー番組を平気で3~4時間ぶち抜いて放映する”という、子供からするととてもはた迷惑な映画群の一本。高校生くらいから映画自体に興味を持つようになって初めて認めるタイプの作品です。昭和だったら「観てたら先生に褒められる賢い子」で「これを観ずにアニメばっか観てると馬鹿な子」と区分けする物差し的役割を担っていた、いわゆる「高尚映画」。でも、昭和の子供にとっての「我慢が伴い、本音を言うと“退屈”な2時間越え映画」も、成人迎えた頃になると「うん、中々いいじゃない!」と思える不思議。公開当時のリアルタイムに劇場で観たら、一種アトラクション感覚だったのではないでしょうか?

密閉された暗闇で共に大画面を見上げる何百人の観客と共に、猛吹雪で遭難する雪中行軍を“疑似体験”するヴァーチャル感を味わうことができる豪華な映画だったはずです!

 次はアニメ。『八百八町表裏 化粧師』(1990年)Blu-ray。石ノ森章太郎原作による、江戸後期を舞台にした“ビジネス漫画”。化粧師と名乗る主人公が、「江戸の町を化粧する!」と人々のメイクはもちろん、町ぐるみイベントをプロデュースしたりと、とにかくアイデアマン。TBS「ギミア・ぶれいく」内、あの『藤子不二雄(A)の 笑うせぇるすまん』の充電期間に挟まれたアニメで、まだ名古屋にいた頃、リアルタイムで毎週ビデオ録画していたものの、当然当時のVHSとか残っておらず、これも買い直し(?)気味。いや、でもこれ──

改めて観直して本当に良かった(現在2周目視聴中)!
本当に素晴らしい!

 総監督・福冨博、作画監督・木上益治のあにまる屋(現・エクラアニマル)コンビ。『怪物くん』(1980年)や『キャッツ♡アイ』(1983年)などでご活躍されてた方々。自分的に面識はないのですが、新人だった頃、先輩方から名前を聞いて知っていました。会社は別でも、巧い人は巧い人とどこかで繋がってるのがアニメ業界の狭いところ。福冨監督はTVスペシャル版『プロゴルファー猿』(1982年)の監督や『ハイスクール!奇面組』(1985年)『ついでにとんちんかん』(1987年)のオープニング・エンディングが最高だと思ってます。特に『奇面組』『とんちんかん』のOP・EDは洒落てて好き。“背景動画(背景を作画で描いて動かす)”が印象的な監督で、『化粧師』でもそれは発揮されてます。監督御自身によるコンテ本数は多くはないですが、どれも背景動画が効果的な箇所で使われて「ニヤリ」とさせられます。木上益治作画監督は後に京都アニメーションの取締役で御活躍される方。『化粧師』も作画がとにかくハイクオリティ! 芝居の一挙手一投足がちゃんと作監修正で押さえられてるのが分かります。しかも最終話(第22話)ではコンテ・演出までなさってます。これまた素晴らしい出来で、今ではダサいと言ってやらなくなった“80~90年的イメージ画面”も木上さんがやるとダサいどころか、一回りして美しく見せるセンスの良さ。シャープでカッコいいアクションシーンも、手足のフォルムから全体のポーズまで本当に洗練されてて、現在でも十分通用する“粋”な作画! こんなに凄い最終回がデータを観ると、“未放映”とのこと(第17~22[終]話が未放映話数)。勿体ない!! 何やってるんですかTB●さん!?

江戸時代をリアルに描く! ではなく、TVの製作内で“感じさせる”演出・作画が素晴らしい!

 そして最後は言わずと知れた『チャージマン研!』(1974年)のBlu-ray! マニアの間では『チャー研』の愛称で親しまれている名作で、だーいぶ前、今石洋之監督がDVD-BOX買ってたのを羨ましく思い出し、BOOKOFFで発見! しかもBlu-ray! 今さら即買い! 内容は一体何が“チャージマン”なのかも視聴者に知らせもせず突き進む怪しさ! しかもSE(効果音)もほとんどない! 変な尺埋め追っ駆けっこ!

おかしなことが、とにかくいっぱい!