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佐藤順一の昔から今まで(19)シルバー王女と声優オーディション

小黒 この頃のシリーズディレクターとしての仕事に『夢のクレヨン王国』(TV・1997年)がありますね。

佐藤 ありました。

小黒 久々に観返してですね、めちゃめちゃ面白いじゃん! と思いました。多分、佐藤さんの素に近いですよね。

佐藤 素?(笑)

小黒 ええ。あまり気取らないで、ナチュラルに作ったんじゃないかと。

佐藤 そうだね。あんまり気負ってはないかな。

小黒 原作はこういう話じゃないんですよね。

佐藤 違います違います。原作では大人のシルバー王妃を、12歳の女の子にするという改変から始まって。凄く長いシリーズの、トピックの話をベースにTVシリーズを作ろう、というプランは既に立っていたからね。

小黒 そこまで決まってからの参加なんですか。

佐藤 そう。(シリーズ構成の)山田(隆司)さんと、関(弘美)プロデューサーのほうで大体の方針が決まっていたところから「ディレクターやってくんない?」という感じで来てる話なので。稲上(晃)君にオファーしたのは、僕だったような気がするんだけど、自分の参加は稲上君にオファーする少し前かな。

小黒 シルバー王女の人柄や性格設定は、佐藤さんが方向性を考えたんですか。

佐藤 こちらからこうしたいというのはなかったんです。「12の悪い癖」の設定は原作にもあるし、自分が参加する前のプランにもありました。ただ、キャラデをどうするかという時に「12歳に見えないぐらい幼くしてくれ」とオーダーしたのは僕のほうで。

小黒 原作だとシルバー王女は大人で、しかも、王妃なんですね。

佐藤 そうそう。原作では大人で、それが企画段階で12歳にすることになって、その上で僕が頭身は5、6歳ぐらいにしてくれとオーダーしてるんだよね。そのぐらい幼く見えてれば可愛いけれども、大人っぽいキャラクターで12の悪い癖があったりすると、視聴者が親しむ存在にならないだろうと思ったんです。それを描いてくれるんだったら稲上君かな、と判断してオファーしたんだと思うよね。稲上君が当時『ドラゴンボール(GT)』か何かで凄く忙しくて、制作からは「できないかも」と言われていて、それで、直接口説きに行った記憶があるんですよ。

小黒 なるほど。キャスティングには関わってるんですか。

佐藤 キャスティングは、めちゃめちゃ関わってますね。

小黒 東映が青二プロダクションの声優を使っていなかった時期のものですよね。

佐藤 そうでしたね。

小黒 当時の僕は東映のアニメを観すぎていてですね、「あ! いつもの東映の感じじゃない!」と思いました(笑)。

佐藤 (笑)。

小黒 今観ると、アラエッサもストンストンもいいです。

佐藤 いいでしょ(笑)。

小黒 いいです。アラエッサは相当いいですよ。

佐藤 キャスティング会議は楽しかったですからね。そういえば(アラエッサ役の)坂田おさむさんは、いいと思ってオファーしたんだけど、オーディションで一回読んでもらったらガチガチで「これは流石に無理かもな」と思ったんです。だけど、「こんな感じで」とオーダーしてもう一回やってもらったら、ステップ3、4段飛ばしてよくなったんですよ。「えーっ! ちょっとしたアドバイスで、こんな自然な感じになるんだ。これならいいだろう」ということになって坂田さんにやってもらうことにしたんですよね。
 アニメのアフレコをやったことがない人達もいるので、オーディションの台本もいつもと少し変えましたね。いつもだったら、本編のセリフを抜き出したものを渡して、それを読んでもらうんだけど、この時のオーディション台本はキャラ表から変顔とか怒ってる顔をいっぱい抜き出して、その顔のそばに「なんなのよもう!」「トンカツにしちゃうわよ!」といったセリフを配置して、その顔を見ながら読むという台本だったの。特にシルバー王女のオーディション台本には顔を沢山貼ってあったと思います。

小黒 なるほど。シルバー王女役の徳光由禾さんはこれがデビュー作ですね。

佐藤 そうです。それまでやったことないんじゃないですかね。

小黒 そうみたいですね。

佐藤 オファー先も、アニメ声優さんがいないプロダクションまで裾野を広げていたからね。

小黒 ホーレソレ役は『まほTai!』で主演だった小西寛子さんですね。この頃の小西さんは若手ですから、サブキャラでもおかしくないですが。

佐藤 そうですね。「ちょっとオーディション受けてみて」と言って、やってもらったんじゃないかな。

小黒 キャラクターが多いから兼役も多いんですよね。番組始まる時に、先の分までキャスティングしてるんですか。

佐藤 いや、基本的にはメインどころだけやって、先の先まではしていないかな。

小黒 先に決めたのはメインキャラと野菜の精達くらいですか。

佐藤 王様、お姫様、クラウドとか、その辺りくらいは固めてた。もしかしたら、おにぎり国とハンバーガー国の王様、王子様は割と早い時期に決めてたかもしんない。

小黒 佐藤さん自身は番組の立ち上げをやって、その後は絵コンテで参加といった感じになったんですか。

佐藤 それとホン読みも、ほぼ全部出てるはずですね。

小黒 で、好評につき放映が延長になりました。例えば、9月放映分なら「9月の旅I」「9月の旅II」とサブタイトルに放映された月が入っていたので「なんて潔いんだ。一年で終わるんだ」と思っていました。だけど、「12月の旅」では終わんなかったんですよね。

佐藤 そうそう。「13月の旅」が始まるんだよね。

小黒 関さんとのお仕事はこれが初めてですよね。

佐藤 ええと、そうだね。初めてです。関さんのやり方は、まずプロデューサーとライターが方針を決めて、それからディレクターを呼ぶっていう東映プロデューサーのやり方なので、特に変わったことではない。

小黒 なるほど。

佐藤 むしろ『どれみ』のように、最初から呼ばれてるほうがイレギュラーですね。


●佐藤順一の昔から今まで (20)『おジャ魔女どれみ』の企画とキャラデザイン に続く


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