COLUMN

アニメ様の『タイトル未定』
273 アニメ様日記 2020年8月16日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2020年8月16日(日)
早朝の新文芸坐に行って、オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 125 『この世界の片隅に』四度目の夏」の終幕に立ち合う。『アリーテ姫』の終盤を観たのだけど、フィルムの痛みがいい味わいになっていた。元々、往年の名画のような作品であるのだが、その印象が強まっていた。
ちなみに、今回のオールナイトのお客さんは『アリーテ姫』初見の方が5割、『マイマイ新子と千年の魔法』初見の方が4~4.5割、『この世界の片隅に』初見の方が数人。つまり、リピーターばかりではなかった。何度も同じことを書いているかもしれないが、新文芸坐とアニメスタイルのオールナイトが作品との出会いの場になっているということだ。

2020年8月17日(月)
「劇場版 若おかみは小学生! 原画集」の先行入稿分の校正紙が出た。「アニメスタイルちゃんのうすい本」の表紙デザインがFIXした。朝から夕方まで、テレ朝チャンネル2の「祝!ドラえもん 歴代アニメ100時間完全保存版スペシャル」で『ドラえもん』を浴びるように観た。

2020年8月18日(火)
ワイフと一緒に『Fate/stay night [Heaven's Feel] III.spring song』を観に行くつもりでチケットも取っていたのだが、ワイフの夏バテのため、鑑賞を延期。新文芸坐オールナイトの企画書を4本、書いた。今日も「祝!ドラえもん 歴代アニメ100時間完全保存版スペシャル」を流しながら仕事。原恵一さんの演出と思しきショートアニメ(夏のスペシャルのイントロ)があった。
確認することがあって、アニメージュ1995年4月号の特集「セーラームーンと佐藤順一の世界」に目を通す。へえ、こんな特集だったんだと他人事のように読んでいたら、総論を自分が書いていた(ギャフン)。なんだかマイルドな原稿だけど、今はこんなふうには書けないかもしれない。1995年は自分がアニメージュの仕事をしていない時期だから、総論だけ依頼されたのだろう。原稿の中で、佐藤順一の真価は作品の方向性が彼の資質にあわなかった時にこそ発揮されるとあって、これはこの原稿が掲載された時点では放送が始まっていない『新世紀エヴァンゲリオン』での仕事を意識して書いたものであるはず。

2020年8月19日(水)
グランドシネマサンシャインの午前8時35分からの回で『映画ドラえもん のび太の新恐竜』を観る。一昨日、昨日と「祝!ドラえもん 歴代アニメ100時間完全保存版スペシャル」を観続けて、さらに新作劇場版を観たので『ドラえもん』の世界で暮らしている気分。デスクワークをはさんで、16時からワイフと新文芸坐で「スキャンダル」を観る。これは公開時にもワイフが観たがっていて、行きそびれた映画だ。

2020年8月20日(木)
この日の「祝!ドラえもん 歴代アニメ100時間完全保存版スペシャル」は楽しみにしていた「スタッフセレクション <テレビシリーズ編>」だった。今までの『ドラえもん』TVシリーズの中から、スタッフがセレクトしたエピソードをコメント付きで放送した。中村英一さんのセレクションは「ミサイルが追ってくる」「ジャイアンのファンクラブ」「しずかのネックレス」で、いずれも中村さんが一人で原画を描いた話で、コメントでも一人原画に触れていた。
僕個人で大きかったのは原恵一さん演出回の「ハリーのしっぽ」(セレクトとコメントは山田俊秀プロデューサー)。これは原さんから思い出深いエピソードだと聞いていたもので、ようやく観ることができた。渡辺歩さん担当回だと、渡辺さんに絵コンテを見せてもらったことはあるけど、映像は未見だった「人間モトクロス」と「人間機関車」を観ることができた。一番インパクトがあったのが、芝山努さんコンテの「あべこべの星」だった(これもセレクトとコメントは山田俊秀プロデューサー)。メインキャラの性別や性格が入れ替わってしまう話で、かなりの怪作。渡辺歩作品としてセレクトされたわけではないけれど、彼が絵コンテを担当した「あの窓にさようなら」「45年後…未来のぼくがやってきた~」がよかった。今になって観ると、彼の成熟した仕事だ。

以下はこの日の放送分だけでなく、「祝!ドラえもん 歴代アニメ100時間完全保存版スペシャル」全体の感想。面白かったのは、同じ原作のエピソードを何度もやったところだ。例えば「ぞうとおじさん」は1980年版、2007年版、2017年版を放送し、「白ゆりのような女の子」は1979年版、2005年を放送したはず(年度が間違っていたら申しわけない)。そんなふうに有名エピソードを見比べることができる構成だった。それも含めてアニメ『ドラえもん』の変化や作品の幅を確認できた。

さらに余談。アニメ『ドラえもん』を大山のぶ代時代と水田わさび時代に分けると、デザインが変わったとか、映像の縦横比率が変わっただけでなく、視聴者とキャラクターの距離感が違うのではないかと思った。大山のぶ代時代のほうが近い。そして、必ずしも近いほうが優れているというわけではない。これについてはいつかちゃんと文章にしたい。

2020年8月21日(金)
この日の「祝!ドラえもん 歴代アニメ100時間完全保存版スペシャル」は「スタッフセレクション <映画編>」をメインにしたプログラム(20日(木)に続いて、テレビシリーズのスタッフセレクションも放送した)。『のび太のパラレル西遊記』から『のび太とふしぎ風使い』の画作りの変化が凄まじい。目眩がするくらいだ。『ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~ 』は浅野直之作画監督の手描き感が素晴らしい。

2020年8月22日(土)
無観客のトークイベント「アニメスタイルTALK アニメをもっと楽しむための撮影講座2020」の開催日。ゲストは言うまでもなく、泉津井陽一さん。今までの泉津井さんの撮影についてのトークの中でも、具体的で網羅的なものだったのではないか。