COLUMN

アニメ様の『タイトル未定』
255 アニメ様日記 2020年4月12日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。

2020年4月12日(日)
ラジオ体操と午前中の散歩以外はデスクワーク。フキダシの中に文字が入ったバージョンで「パンスト今石洋之マンガ全集」を最初から最後まで目を通した。相当な濃さだ。 NHKの「もういちど、日本」の「池袋の老舗映画館」を観る。新文芸坐がとりあげられた回だ。冒頭の「昭和の匂いを残す街」として新文芸坐と周辺を撮ったカットは、画面を暗めにしているせいか本当に昭和っぽい。新文芸坐の内外を撮ったカットではアニメスタイルオールナイトの掲示が映っていた。15歳から45年間、2日に一度の頻度で新文芸坐で通ってきた若井信二という方が登場。若井信二さんは新文芸坐チラシの作品解説を書いている模様。
『メジャーセカンド』を21話まで観た。実は第2シリーズを観るつもりで、間違って第1シリーズを観始めてしまったのだけど、面白い。
マンガ「めんつゆひとり飯」2巻を読んだ。デブ目線で保ヶ辺勉の人間関係を見ると、面堂露は気さくだし、太っていることを気にしていないし、適度にツッコミを入れてくれるし、話題もあうし、理想の女友達なのではないか。白田舞は保ヶ辺が太っていても痩せていても好きだというところがファンタジー強めだけど、実際に付き合ったら破綻するような気もする。いや、マンガだからファンタジー強めでいいんだけど。1巻を読んで、いやいや面堂露はちゃんと料理しているよ、と思っていたら、2巻で本当に料理をしない彼女の姉が同じことを劇中でコメントしていて納得。

2020年4月13日(月)
引き続き「今石洋之アニメ画集」「今石洋之アニメ資料集[コンテ・原画編]」「パンスト 今石洋之マンガ全集」の編集作業が同時進行中。色校正紙が出て、デザインチェックがあり、入稿作業もあり。ついでに線画のセル塗りの追加作業も(塗っているのは僕ではないです)。
『メジャーセカンド』第2シリーズの1話まで視聴。Netflixが第1シリーズ最終回の次に第2シリーズ1話の自動再生を始めたので、あまりの飛躍に驚いた。
配信で次に何を観るかでちょっと悩む。『未来少年コナン』と『宇宙戦艦ヤマト』も観返したいと思っているけれど、次の再見は「ながら観」でないかたちで観たい。そもそも『宇宙戦艦ヤマト』は配信にない。旧作の『あしたのジョー』から『あしたのジョー2』の流れは、今だとちょっと重たい。なんて思いながら『宇宙よりも遠い場所』の1話を観てから『けいおん!』の1話から最終回までを観る。さらに『けいおん!』の番外編を観る。改めて観ると(観なくても分かっていたことだけど)『けいおん!』1話の平沢唯と真鍋和の個性と関係性、『宇宙よりも遠い場所』1話の玉木マリと高橋めぐみの個性と関係性はよく似ている。唯もキマリもやりたいことが見つからず、和とめぐみはそれに対して的確なアドバイスをする。唯は律たちに出会ったので軽音部に入ったし、キマリは報瀬に出会ったので南極を目指す。キマリも出会った相手が別人ならバンドをやっていたかもしれない。しかし、1話の印象が近しいとはいえ、和とめぐみのキャラクターはまるで違っていて、物語が進めば進むほど、めぐみは『けいおん!』ではありえない方向に掘り下げられていく。
『けいおん!』本編の配信はいまだに画面の左右がカットされたスタンダード(4:3)だった。つまり、TBS地上波本放送版。dアニメストアでもU-NEXTでも番外編の「冬の日!」は4:3で、「ライブハウス!」は16:9。「冬の日!」は情緒がメインの話で当時からお気に入り。
『けいおん!』についてもう少し。本放送時に「面白い」と思った部分が今ではそれほどでもなかったり、「あれ?」と思った部分について違和感がなくなったり。これは『けいおん!』的な価値感が当たり前になったということなのだろう。他にも思ったことがあるけれど、まだ整理がついていない。

2020年4月14日(火)
散歩以外はデスクワーク。引き続き「今石洋之アニメ画集」「今石洋之アニメ資料集[コンテ・原画編]」「パンスト 今石洋之マンガ全集」の編集作業が同時進行。用事があって池袋の西口に行ったら、ドン・キホーテのレジの脇でマスクが売られていた。お得な価格ではないけれど、販売制限などはなし。東口のカバンを売っている店では手作りのマスクを売っていた(1年後にはなんのことだか分からなくなっているかもしれないが、手に入らなくなっていたマスクを店で見かけるようになったということだ)。
配信で『ふしぎの海のナディア』を第1回から第10回まで観た。誰かが指摘していると思うけど、ネモ船長のナディアに対する不器用さと碇ゲンドウのシンジに対する不器用さは通じるものがある(少なくとも両作品の序盤では)。ゲンドウとリツコ(とレイ)の関係と、ネモとエレクトラ(とナディア)の関係も意外と似ている。
『ナディア』第2回を超オタク男子のジャンが、自分の得意分野で非オタク女子であるナディアの気を惹こうする話と見ることもできる。当然、男子のオタク自慢で、非オタクの女子が心から感心することはない。

2020年4月15日(水)
引き続き「今石洋之アニメ画集」「今石洋之アニメ資料集[コンテ・原画編]」「パンスト 今石洋之マンガ全集」の編集作業が同時進行。「今石洋之アニメ画集」は大詰め。
朝はワイフと散歩。ワイフはコロナを気にして、このところ、外出をしていなかった。飛鳥山公園まで歩いて、缶コーヒーを飲んで、東池袋に歩いて戻る。飛鳥山公園で水筒とデザートを持参し、ベンチで日なたぼっこをしつつ、4コママンガ誌を読んでいる男性がいて、いかにもその雑誌を楽しんでいる感じが印象に残った。午後は編集以外の作業。
『ふしぎの海のナディア』の第11回から第20回を観る。第12回 「グランディスの初恋 」は水着回。演出・絵コンテが窪岡俊之さんで、作画監督が鈴木俊二さん。本田雄さんの原画も素晴らしい。水谷優子さんの名アドリブ「スットコドッコイ」もこの回。いかにもアドリブで入れた感じのタイミングで入る。 第13回「走れ!マリー」は摩砂雪さんのコンテに亜細亜堂の作画がマッチ。本放映時にも思ったけれど、OVAのような仕上がり。第11回、第12回、第13回はキャラクターの魅力も増し、作画的にも見どころたっぷり。本放送時にも高揚感があった。第16回「消えた大陸の秘密」はパロディ満載なんだけれど、知らなければカッコいいセリフとシチュエーションがいっぱいのエピソードに見える。第17回「ジャンの新発明」は綺麗な話。テーマやモチーフは全然違うんだけど、僕の中では『新世紀エヴァンゲリオン』の第七話「人の造りしもの」に印象が近い。第19回「ネモの親友」。イリオンの声は高木均さん。新旧ムーミンパパ対決になっているのは、ロマンアルバムでも触れたはず。『ふしぎの海のナディア』という作品のベーシックなイメージはこのあたり(第11回から第20回)ではないかと。遊びもあるけれど、抑制を効かせて作っている。とはいえ、僕は第21回以降のほうが好きだ。

2020年4月16日(木)
午前中の散歩以外はデスクワーク。「今石洋之アニメ画集」の編集作業はほぼ終了。「今石洋之アニメ資料集[コンテ・原画編]」「パンスト 今石洋之マンガ全集」の編集作業は大詰め。午後は編集とは別の作業も。
『ふしぎの海のナディア』は21話から33話まで観る。やっぱり「島編」で面白いのは第24回、第25回、第26回。特に第25回、第26回のセンスとネタの詰め込み方が素晴らしい。第27回で「ルアーブルのレイちゃん」として、この時点では『ふしぎの海のナディア』にはまるで関係のない佐久間レイさんの名前が出てくるのは知っていても驚く。なお、佐久間レイさんは、後にCD「Good Luck Nadia ~Bye Bye Blue Water PART2」のドラマパートで、ちょっと驚く役名で登場する。

藤原啓治さんが亡くなったことをネットで知る。藤原さんは名優であり、人柄も素晴らしかった。原恵一監督のイベントで、何度かご一緒させていただいた。新文芸坐のオールナイトに原監督が酔っ払って現れたことがあり、藤原さんもそれに付き合ってステージ上で飲みながらトークを進めた。それがあまりにも楽しかったので、半年後にトークイベント「原恵一監督、藤原啓治さんとお酒を飲む会」を開催させていただいた。藤原さんは、どのイベントの企画についても「原監督のためになるなら」と言って、二つ返事で引き受けてくださった。
楽屋でも飲み屋でも、藤原さんの軽妙さ、味わいのある語りは変わらなかった。何度も会っているのに僕は藤原さんに取材したことはなかった。どんな質問をしても答えてくれるに違いないが、微妙なところで躱されてしまうのではないかと思っていたのだ。もう少しご一緒させていただいて、切り込んでいくきっかけをつかめたところで「この人に話を聞きたい」で取材を申し込みたいと思っていた。心よりご冥福をお祈り致します。

2020年4月17日(金)
午前中の散歩以外はデスクワーク。「今石洋之アニメ画集」「今石洋之アニメ資料集[コンテ・原画編]」が校了。「パンスト 今石洋之マンガ全集」の作業が続く。
『ふしぎの海のナディア』は第34回から最終回まで観る。「第34回 いとしのナディア※」(※はハートマーク)は歌の回。今観ても凝り凝りの編集がいい。この段階でサンソンにとって大事な人はグランディスだけど、愛しい人はマリーだと,編集で示しているのも凄い。「ABC」の部分はパンチがありすぎ。
『ふしぎの海のナディア』には物語の大筋で語られるテーマと、キャラクターや表現で語られるテーマがある。当然、前者と後者で重複している部分はある。前者は理屈で語ることはできるけれど、視聴者にはいまひとつ届いていないかもしれない。後者のほうが視聴者は届いているはずだ。『新世紀エヴァンゲリオン』TVシリーズも普通に作っていたらそうなっていたかもしれない。
『ふしぎの海のナディア』からの流れで『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』を視聴。BGMと高雄コウジ(大塚明夫)のおかげで、冒頭は『ナディア』テイスト強し。衝撃を受けたところで「なんだいなんだい」というセリフが聞こえそうだ。
話は変わるが『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』はやっぱり特別な「気分」の映画だ。『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』が完成したら、違った見え方をするのだろうか。

2020年4月18日(土)
「パンスト 今石洋之マンガ全集」の作業。それから電卓を叩く、じゃなくて、表計算ソフトに数字を打ち込む。日テレの『時をかける少女』を観る。色がちょっと濃い気がするけど、高画質。近所の料理屋がテイクアウトの弁当を始めていて、それを買って食べる。
CD「Bye Bye Blue Water」「Good Luck NADIA~Bye Bye Blue Water PART2」を聴いた。「Bye Bye Blue Water」は、『ふしぎの海のナディア』本編視聴からの流れで聴くと染みる。
ドラマ「捨ててよ、安達さん。」1話を観る。これはヤバイ。ドラマとしてはまるでヤバくないのだけど、安達祐実さんがヤバイ。ひょっとしたら僕だけがヤバイと思っているだけかもしれないけれど、安達祐実さんの写真集を買いたくなるくらいにヤバイ。
この日記の2020年4月8日(水)でも書いたように、コミックマーケット98の中止が決まる前から、中止になった時のために「今石洋之アニメ画集 スペシャルセット」の販売会用に都内に広い会場を借りていたのだが、それはNGになった。それと別の販売計画も進めていたのだが、それもNGになりそうだ。