COLUMN

第660回 ふと、また大塚さん

 とある編集会社より、大塚康生さんに関する寄稿の依頼があり、近々描く予定。「描く」としてるだけで内容は知れようってもんですが、ちょっとしたイラスト(らくがき)的なものになるはず。ま、この連載で幾度となく話題にさせていただいたアニメ界の巨匠・大塚康生さん。自分にとっては二十歳からほぼ7年間、毎日スタジオ(テレコム・アニメーションフィルム)で顔を合わせていた、当時は空気のように俺の日常にあった存在、そしてアニメファンなら皆さんご存知のアニメ界の最重鎮。今回の寄稿では描ききれないくらい色々なお話をしてくださいました。今回改めてふと思い出した分を箇条書き(?)っぽく書き出してみます。過去回との重複(被り)はご容赦ください。なんせ660回ですから(汗)。

小田部ちゃんから「板垣くんをよろしく」と言われたよ

 これは入社して間もなくでした。学生時代の恩師である小田部羊一・奥山玲子両先生より「ウチ(東京デザイナー学院)の教え子が大塚さんとこ行くからよろしく」的な電話(奥山先生は電話が苦手らしく手紙)で報告があったらしく、その際、気さくに声をかけていただき、奥山さんからの超絶達筆な手紙も見せてくださいました。ただその時感じたニュアンスでは、大塚さんにとって「小田部さん」とは小田部さんと奥山さんお二人合わせてみたいだってこと。別件で「小田部先生が」と板垣が切り出した時も、間髪入れず「どっちの?」と返されてましたから。

ああ、ちばてつやね〜

 俺が動画時代、自宅で夜中に描いた原画の習作で、意識的にあえて大塚さんの持ちキャラであるルパン三世や未来少年コナンなどではなく『おれは鉄兵』(ちばてつや原作で1977年にアニメ化された際、大塚さんはレイアウトを担当)を描いて持っていくと、こう返されて個人的に嬉しかった一言。板垣はちばてつや先生大好き人間なので、ご自身が参加された作品として『おれは鉄兵』を憶えていらっしゃった! と。

『未来少年コナン』の時、地下住民たちの存在・描き方について、僕は宮崎に「人間を階級で分けるのは良くないよ」と言ったら、宮崎はルーケっていう賢い地下住民を出したでしょ

 テレコム社内で、ベテランアニメーター・田中敦子さんの発起により、ちょくちょく開催された「大塚さん講演会」でのお話。その当時(1998年頃?)ですでに「今をときめく」宮崎駿監督を宮崎と呼び捨てにできる大塚さん、作品のオリジナリティは宮崎監督であっても、アニメーターとしてキャラクターの描き方には一言言わせてもらうよ的な職人気質な大塚さんがカッコよく思えました。あちこちの本でも大塚さんが語っているとおり「アニメーターは役者(演技者)である」ゆえ、内面から納得できない人物は演じられないのです。

パクさん(高畑勳監督)は「小田部(羊一)さんは笠智衆で、大塚さんは植木等だ」って言ってね〜

 同じく講演会にて。芝居の描き方(アニメート)の個性が話題に上り、小田部先生は芝居を意識させないくらい自然に描くのに対して、大塚さんが描くと「芝居ですよ」と分かりやすい動きになる、という内容でした。

僕が『ルパン(三世)』描いてて面白かったのは——

 で、すみません。また時間です(汗)。