COLUMN

第657回 初監督と藤原さん

 自分の初監督作『BLACK CAT』(2005〜2006)のスヴェン=ボルフィード役・藤原啓治さんが4月12日にお亡くなりになられました。『BLACK CAT』は板垣が初監督なだけではなく、原作の矢吹健太朗先生も初アニメ化で、秋山由樹子さんもキャラクターデザイン・総作監は初、近藤隆さんも初の主役、福圓美里さんもメインキャラは初めて。当時、自分がちょうど30歳になったばかりで、矢吹先生も秋山さん、近藤さん、福圓さんも20代前半で、今思えば若い現場。そのアフレコ現場で藤原さんは、若い役者さんらをリードしてくださったムードメーカーでした。画の状態が芳しくない中、アドリブもたくさんいただきました。休憩中気さくにおしゃべりしてくださったり、イベントなども楽しく盛り上げていただきました。「また是非ご一緒させてください」の約束は果たすことができずじまい。
 過去の作品はあまり振り返らない性格ゆえ、この機会に思い返してみたのですが、当時の自分は「先が予想できない画面作り・カット割り」にこだわっていたので、脚本・演出・作画だけでなく、藤原さんらキャストの皆さまをも大変迷わせてしまったように思います(まぁ未だにそうかもしれませんが)。「とにかく変なこと、そして『BLACK CAT』でしか味わえないカッコよさ」をとコンテを好き勝手切り(描き)まくって、キャストの方々に楽しく演じてもらおう! 藤原さんからも俺の画作りの特徴について「面白い!」とアフレコ時褒めていただいたことがあります。

若さに任せて作った無法地帯な現場で、スタッフもキャストも全員主人公となって遊びまくった作品、それが『BLACK CAT』! 藤原啓治さん、紳士で優しく面白く、そしてカッコいいスヴェンを本当にありがとうございました! 謹んでご冥福をお祈り申し上げます。