COLUMN

第648回 版権とレイアウト

 前回キービジュアルの話題が出たとこで思い出したのですが、版権もののレイアウトを学んだのもやっぱりテレコム・アニメーションフィルムでした。板垣が入社した年、1994年は大塚康生さんもまだ社員として我々の研修・指導をやりつつ普通の現役アニメーター仕事もされてて、当時水張りしたパネルに『パンダコパンダ』のレーザーディスクのジャケットを鉛筆+水彩で描いておられました。


 と見せていただいた時は、初めて見る「製品になる前の生の画」(しかも描きかけ)に興奮を憶えたものです! テレコム時代、他にも田中敦子さんの『名探偵ホームズ』のレーザーディスクのジャケットや、友永和秀師匠の『姿三四郎』DVDパッケージなどの作業を間近で見ることができたのは未だに自分にとっての財産。なぜなら現在に至ってもキービジュアルやパッケージイラストのレイアウトを描く際の大きな指針になっていますから。
 つまり当時巷に溢れていた美麗なキャラのアップやカッコいい立ちポーズではなく「崩れたポーズのルパン三世が好き」な大塚さんが作ってたテレコムの空気が、板垣のレイアウトやポージングの基礎にあるということ。四角いフレーム内にキャラ(ポーズ)を三角形に配置し、左右非対称の表情(ポーズ)を心掛ける——画を描くことが「全て感性・感覚だ!」と思ってた若造の俺に「レイアウトの半分以上はロジックである」と教えてくれたのが大塚さんとテレコムの先輩方でした。
 そのおかげで、フリーになり監督をやるようになってからも、ティザービジュアルからキービジュアルまで、宣伝・広報プロデューサーの要望に応えるべく数種類の案を出し、たいがいの修正要請にも速攻でお応えできるようになれたんです。だから案ひとつ出すのに何日もかかった挙げ句、さらに委員会からの「もう少し元気な感じに」などの指示にいちいちプンスカ抵抗してる人とか見ると「イヤなら俺が描こうか?」と思ってしまうんです。「案を出す」こともある程度ルーチン・ワークでこなせないようじゃプロじゃない! と。ちなみに画描きのルーチン・ワークは手抜きって意味ではありませんから。